糖尿病における創傷治癒遅延の分子メカニズムを解明 CCL2が創傷治癒を促進 和歌山医大

2019.08.21
 和歌山県立医科大学法医学講座の近藤稔和教授らの研究グループは、炎症細胞の遊走に関連するケモカインであるCCL2(単球走化性因子)に、糖尿病患者の創傷治癒を促進させる作用があることを明らかにした。糖尿病における創傷治癒遅延の新規治療法を開発できる可能性がある。

皮膚病変は糖尿病の重大な合併症

 高血糖状態が長期にわたり持続すると、免疫細胞の機能低下や血管や神経が障害され、傷の治りが悪くなり、最悪の場合、切断を余儀なくされることもある。したがって、糖尿病患者の創傷治癒を促進させる治療法が求められている。

 研究グループが健常マウスと糖尿病マウスの創傷治癒を比較したところ、健常マウスと比較して、糖尿病マウスでは損傷部局所でのCCL2の遺伝子発現が有意に減弱し、創傷治癒が遅延していた。

 ケモカインは、Gタンパク質共役受容体を介して作用発現をするサイトカインで、白血球などの遊走に関与している。

 CCL2はCCケモカインの一種で、単球、マクロファージ、線維芽細胞、ケラチノサイトなどで産生され、CCR2というレセプターを有する単球、NK細胞、T細胞、好塩基球、樹状細胞に作用する。

CCL2が創傷治癒を促進

 さらに、糖尿病マウスでは、受傷後の局所におけるマクロファージや血管内皮前駆細胞(EPC,endothelial progenitor cells)の浸潤、VEGFやTGF-βといった細胞増殖因子の産生が減弱していた。

次に損傷を作成後、CCL2を局所投与された糖尿病マウスでは、対照群(CCL2を投与されていない糖尿病マウス)と比較して、損傷部局所のマクロファージやEPC浸潤が増強して、その結果、創傷治癒が促進していた。

 さらに、EPCがCCL2の受容体CCR2を発現していたことから、CCL2のEPCに対する遊走活性を検討したところ、CCL2がEPCの強力な遊走因子の一つであることが判明した。

 以上のことから、CCL2はマクロファージおよびEPCを損傷部局所に動員することによって、創傷治癒を促進させることが判明した。
和歌山県立医科大学法医学講座
CCL2-mediated reversal of impaired skin wound healing in diabetic mice by normalization of neovascularization and collagen accumulation(Journal of Investigative Dermatology 2019年6月24日)

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