骨粗鬆症患者への骨吸収抑制薬投与が、骨からのリン放出を軽減し、腎機能を改善させる 大阪市大

2019.07.11
 大阪市立大学は、骨粗鬆症患者にデノスマブを投与すると、骨からのリン放出を低下させることで加齢にともなう腎機能低下を防止させ、さらには改善させる効果を得られることを明らかにした。

デノスマブ投与2年間で血清リン低下と腎機能改善を確認

 研究は、大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学の稲葉雅章教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Bone and Mineral Research」に掲載された。

 デノスマブは、骨吸収を亢進させる体内物質を阻害し骨粗鬆症患者による骨量低下などを改善する骨吸収抑制薬。骨はひびの入った古い骨を吸収して、その欠損部に新しい骨を形成して置き換える「リモデリング」により骨強度を保っている。

 骨粗鬆症は、女性ホルモン欠乏や身体活動性低下などの原因により、骨吸収の亢進が顕著となり骨の量が減ること、骨折を引き起こす疾患。骨吸収によって骨のカルシウムのみでなく、リンも血液中に放出される。リンは食品中の添加無機リンの過剰摂取と同じく、体へのリン負荷を増加させ、生体毒として働く。

 糖尿病患者は、骨芽細胞の分化・機能異常に伴う骨形成低下やAGEsの蓄積にともなう骨質劣化が著しく、高率に骨粗鬆症を合併し、骨折のリスクが高い。

 これまで骨粗鬆症患者に骨吸収抑制薬を投与すると、心血管障害の抑止効果があることが知られていたが、そのメカニズムについては不明だった。そこで研究グループは今回の研究で、骨吸収抑制薬投与がリン放出の低下、および腎機能の改善に効果的かどうかを検証した。

 その結果、骨粗鬆症にともなう骨吸収亢進によってリンが血液中に放出されることで、腎臓が障害されることが明らかになった。さらに、骨吸収抑制薬により骨からのリン放出を減少すると、腎機能の低下を抑止でき、さらには反転できることをはじめて示した。

 研究では、73名の骨粗鬆症患者にデノスマブを2年間にわたって半年ごとに3回投与。投与後2年間で、加齢にともなう概算糸球体濾過率(eGFR)の低下に逆らい、eGFRは+2.75±1.2mL/min/1.73m²上昇し、腎機能が有意に改善した。

 さらに、eGFRの上昇の程度とデノスマブ投与後半年間の血清リンの低下との間に有意な関連を認め、デノスマブによる骨吸収抑制が骨からのリン放出を軽減させた結果、血清リン濃度低下が生じ、腎機能を改善させる直接的な根拠をはじめて得ることに成功した。
 今回の検討から、骨吸収亢進を示す骨粗鬆症患者に対する骨吸収抑制薬による介入は、心血管保護効果のみならず、腎保護の面からも臨床的意義があることが示された。

 「女性では閉経前に比べ閉経後は高血圧症罹患率や心血管イベントの発生率の上昇が起こる。そのひとつの機序として、閉経にともなう骨吸収亢進、および骨からのリン放出の関与が示された。閉経後の骨粗鬆症に対して早期から骨吸収抑制薬で介入することで、閉経後女性における骨粗鬆症のみでなく、腎臓や血管系に関する健康障害全般の改善を期待できる」と、研究グループは述べている。

 研究グループはこれまでに、骨吸収亢進や骨量減少を示す血液透析患者での生命予後が悪いことや、骨粗鬆症患者に対するビスホスホネート投与が、動脈壁肥厚度および硬化度の進展を抑制すること、閉経後女性における骨代謝亢進が尿中アルブミン排泄量の有意な独立因子であることを報告しており、骨粗鬆症と心血管・腎障害との関連や生命予後悪化との関連を示してきた。

 今回の研究により、閉経後や、腎機能悪化にともなって骨吸収が亢進した慢性腎臓病患者においても、骨吸収抑制薬による介入で腎機能低下を抑制あるいは改善できることが示唆されている。

大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学・腎臓病態内科学
Denosumab improves glomerular filtration rate in osteoporotic patients with normal kidney function by lowering serum phosphorus(Journal of Bone and Mineral Research 2019年7月5日)

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