2型糖尿病患者への肥満手術でインスリンが不要に 肥満手術の術後早期の血糖上昇抑制のメカニズムを解明 徳島大

2019.02.22
 日本でも肥満症に対する減量手術が保険適応となり、症例数が増えている。徳島大学の研究グループは、術後早期にGLP-1分泌が増え血糖上昇が抑制されるメカニズムの解明に取り組んでいる。

肥満症に対する減量手術が保険適応 報告は増えている

 日本でもBMI35以上の病的肥満患者が増加している。従来はそうした患者に対し内科的治療が行われていたが、不成功に終わることが少なくない。近年では病的肥満に対する減量手術が国内外で積極的に行われるようになってきた。

 日本でも病的肥満症に対する減量手術、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(LSG)が保険適応となり、その効果が多数報告されている。

 症例数の増加にともない、内科的に治療抵抗性であった2型糖尿病患者にLSGを施行すると、これまで大量のインスリン投与が必要であった方が術後早期(術後2日目以内)よりインスリンが不要となる症例が報告されている。
 減量手術は、胃を小さくする胃縮小術とバイパスなどの消化管流路変更を加え消化吸収を抑制する消化吸収抑制術に大別される。特に消化吸収抑制術には肥満の改善だけでなく、2型糖尿病や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などの肥満関連疾患に対する効果も報告されている。

 このメカニズムとしては、回腸より分泌されるインスリン分泌促進作用をもつグルカゴン様ペプチド−1(GLP-1)の関与が報告されている。しかし、これまでの基礎・臨床での検討では術後4週目以降の報告のみであり、術後早期での血糖上昇抑制効果の詳細なメカニズムについては報告されていない。

 そこで徳島大学大学院医歯薬学研究部消化器・移植外科学特任助教の柏原秀也氏らの研究グループは、「肥満症」に対する外科治療は、回腸での胆汁酸吸収増加によりGLP-1分泌細胞であるL細胞の増加をきたすことを解明した。

 GLP-1分泌を増加させることで、2型糖尿病やNASHが改善することを、ラット減量手術モデルであるDuodenal-jejunal bypass(DJB)を用いて解明した。

 さらにNASH抑制効果については、GLP-1アナログ製剤であるリラグルチドを投与した内科的治療を凌駕していた(JGH 2015)。また、DJBの腸内細菌叢Gut microbiotaは他の群と比較し、顕著に変化しており、この変化が一連の効果に関わっていることが示唆された(Surgery today 2017)。

 研究グループは「今後は減量手術における術後早期血糖上昇抑制効果に関するメカニズムについての検討を行っていきたい」と述べている。
徳島大学大学院医歯薬学研究部消化器・移植外科学

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