AIで糖尿病の経口血糖降下薬の処方を最適化 どの薬が最適かをAIが提示 札幌医科大学ら

2019.02.15
 札幌医科大学と富士通、富士通北陸システムズは、糖尿病治療における経口血糖降下薬の処方を最適化する、AIによる学習モデルの構築に2019年2月より着手すると発表した。

AIによる学習モデル構築の共同研究開発に着手

 札幌医科大学と富士通、富士通北陸システムズは、臨床情報データのAI活用に向けた共同研究を開始する。AIで糖尿病患者への投薬効果を予測し診療を支援することを目的としている。研究は、同大学医療情報部長の大西浩文教授らの研究グループによるもの。

 糖尿病の治療は長期にわたり、合併症の併発など病態が複雑だ。また、さまざまな経口血糖降下薬がある中、治療薬の選定、組合せ、順序、副作用などを考慮し、経口血糖降下薬を決定するのは困難になっている。治療の効率化や予防を促すために、糖尿病のような慢性疾患へのAI技術活用の早期実現が望まれている。

 研究では、札幌医科大学附属病院を受診している糖尿病患者約5,000人の診療記録、検査結果、処方情報などが格納された診療DWHやビジネス・インテリジェンス(BI)ツールから、個人情報を削除した形式で抽出したデータセットを入力情報として機械学習を行い、治療の効果を予測する学習モデルの作成を行う。

 電子カルテシステムや、診療データウェアハウス(DWH)などに蓄積された患者の検査値、経口血糖降下薬の処方情報について機械学習を用いることで、合併症予防の目標値であるHbA1c値7.0%未満となるよう、治療効果を予測する。

 札幌医科大学附属病院における臨床医、人工知能エンジニアを中心とした研究グループにおける臨床知見、データセットの成型技術、AI技術をもとに、札幌医科大学附属病院、富士通、富士通北陸システムズの三者が、電子カルテシステムや診療DWHなどに蓄積された膨大な臨床情報データから入力用データセットを作成し、オープンソースソフトウェア(OSS)を中心としたAIによる学習モデルの構築を行う。

 これら学習モデルの評価項目として、性能を表す曲線下面積(AUC)値、正解率(Accuracy)、再現率などを評価し、経口血糖降下薬の処方の最適化をはかる。

 研究により、近い将来、患者個人の特性をもとに、どの糖尿病治療薬を選択すると安全かつその後の血糖コントロールが良好になりやすいかの確率を、AI技術により提示できるようになり、臨床医が患者個人に適した治療薬を選択できるようになるという。
札幌医科大学附属病院医療情報部

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