日本動脈硬化学会が「スタチン不耐に関する診療指針2018」を公開 スタチンによる有害事象を6章・3CQで解説
2019.01.25
日本動脈硬化学会は「スタチン不耐に関する診療指針2018」の公開を開始した。同指針は、日本人におけるスタチン不耐について、その頻度と臨床像を明らかにするとともに、適切な血中LDLコレステロール(LDL-C)低下療法の実践を目的に作成されたもの。
治療対象患者に適した治療手段を選択するための道筋を示す
日本では高コレステロール血症および高LDL-C血症に対して6種類のスタチンが使用されている。 指針では「スタチン不耐」を、「スタチン服用に伴って見られる有害事象により、服用者の日常生活に許容困難な障害が生じ、その結果服薬中断や減量に至るもの」と定義。 クリニカルクエスチョン(CQ)とそれへの回答、スタチンによる有害事象の成因と対策、今後の課題など6章で構成されている。CQは次の3項目が設けられている。
CQ1:日本人におけるスタチン不耐(服用継続困難)の頻度は?
CQ1-2:スタチンの種類別にその頻度に差はあるか?
CQ1-3:日本人におけるスタチン不耐(服用継続困難)の理由とその頻度は?
CQ2:日本人におけるスタチン不耐(服用継続困難)は、動脈硬化性心血管病予防効果、さらには予後に影響を及ぼすか?
Q3:日本人におけるスタチン不耐(服用継続困難)への対策は?
スタチンによる有害事象として「筋障害」「肝障害」「中枢神経への影響」「耐糖能への影響」「腎機能障害との関連」を示し、腎機能障害における投与量の考え方を整理している。
筋障害:スタチンによる筋有害事象、スタチン関連筋症状(SAMS)、血清クレアチニンキナーゼ(CK)について、それぞれの病態や症状を解説。また、スタチンによる筋有害事象の評価を、SAMSの有無と血清CK値に基づき4つの区分(カテゴリーA、B、C、D)に分け、それぞれの推奨アプローチをフローチャート方式で表示している。
肝障害:スタチンによる治療中に軽度の肝障害を伴うことがあるが、多くの場合は一過性で用量を変更せずに治療を継続しても回復する。まれではあるが、肝不全や自己免疫性肝炎を発症することがあるため、ALTや総ビリルビンなどをみながら休薬や専門医へのコンサルトを考慮し、他剤への変更を検討することが推奨される。
認知機能への影響:スタチンに関連した認知機能障害が疑われる場合には、神経心理検査の実施、必要に応じのスタチンは漸減中止、水溶性スタチンへの切り替えなどを考慮する必要がある。
耐糖能への影響:スタチンが糖尿病の新規発症を増加させるという報告があり、スタチンによる糖尿病の新規発症の増加は用量依存性であり、高強度スタチンほど増加しやすいことが示唆されている。スタチンを投与する場合には糖尿病の新規発症や、耐糖能の悪化に注意して観察する必要がある。CQ1-2:スタチンの種類別にその頻度に差はあるか?
CQ1-3:日本人におけるスタチン不耐(服用継続困難)の理由とその頻度は?
CQ2:日本人におけるスタチン不耐(服用継続困難)は、動脈硬化性心血管病予防効果、さらには予後に影響を及ぼすか?
Q3:日本人におけるスタチン不耐(服用継続困難)への対策は?
ただし、そうした場合でもスタチンによる心血管イベント抑制効果が上回るため、投与を中止することは勧められない。投与量の減量、他のスタチンへの変更、他剤の併用などは考慮する余地がある。 腎機能への影響:スタチン投与に伴う有害事象は、腎機能低下に伴って増加することが知られている。腎障害患者に対するスタチン投与時に、最大用量のスタチン投与は推奨されない。CKD患者におけるスタチン使用は低用量にとどめ、減量に随時対応できるように定期的な腎機能検査の実施が推奨される。 なお、指針では今後の課題として、日本が超高齢社会を迎えていること、加齢は動脈硬化性心血管疾患の最大の危険因子でることを考慮し、新たなCQとして「高齢者におけるスタチン投与では、非高齢者と異なる対応が必要か」についても今後検討が望まれるとしている。 日本動脈硬化学会
スタチン不耐に関する診療指針2018
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]