SGLT2阻害薬「フォシーガ」の心不全に関する国際開発プログラム
2018.08.31
アストラゼネカは、現在2型糖尿病治療薬として承認されているSGLT2阻害薬「フォシーガ」(一般名:ダパグリフロジン)の心不全に関する国際開発プログラムである「DELIVER」試験および「DAPA-HF」試験について発表した。
心不全患者を対象にダパグリフロジンの効果を検証
「DELIVER」(Dapagliflozin Evaluation to Improve the LIVEs of Patients with PReserved Ejection Fraction Heart Failure)試験は、二重盲検、無作為化、プラセボ対照国際第3相試験で、左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者を対象に、心血管死または心不全の悪化に対するダパグリフロジンの抑制効果を検証する。 「DELIVER」試験は、アストラゼネカが実施するDapaCare国際臨床開発プログラムに新たに加えられた最新のアウトカム試験で、心血管リスク因子、心血管疾患の既往歴およびさまざまなステージの腎疾患を有する、2型糖尿病合併および非合併の両患者において、ダパグリフロジンの心血管系および腎に対する影響を評価する。 「心不全による入院の約半数は、HFpEFによるものです。人口高齢化に伴い有病率は増加していますが、現在エビデンスに基づいて確立された治療法はありません。DELIVER試験では、大きなアンメットニーズが存在するこの患者集団の有病率および死亡率に対するダパグリフロジンのイベント抑制効果を検証します」と、ハーバード大学医学部およびブリガム・アンド・ウィメンズ病院の内科学教授のScott Solomon氏は言う。第3相試験「DAPA-HF」試験は患者登録を終了
「DELIVER」試験は、「DAPA-HF」試験の相補的試験として実施される。「DAPA-HF」(Dapagliflozin And Prevention of Adverse-outcomes in Heart Failure)試験は、心筋が効果的に収縮せず酸素を豊富に含む血液が体内に十分に送り出すことができない、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)の患者を対象に、心血管死または心不全の悪化に対するダパグリフロジンの効果を評価する二重盲検、無作為化、プラセボ対照国際第3相試験。 「DAPA-HF」試験は、2型糖尿病合併および非合併の両患者におけるSGLT2阻害剤の心血管ベネフィットを評価する最初の試験であり、患者登録は終了しており、2019年の試験完了に向けて順調に進行しているという。 「2型糖尿病とその合併症の治療薬としてのSGLT2阻害剤クラス全体のため、当社は、DECLARE試験およびDAPA-HF試験、DELIVER試験を通じて心不全に対する臨床研究を推し進め、サイエンスの限界に挑戦しています。ダパグリフロジンの科学的エビデンスは、終了済みの試験を含め、3万5,000例以上の患者さんを対象とした35件以上の第2b/3相試験からなる強固な臨床プログラムを含め、今後も引き続き蓄積されます。循環器、腎および代謝疾患という有病率が非常に高い疾患に対するダパグリフロジンでの治療を通じて臨床的な理解を深め、患者のアウトカムを改善することが使命です」と、アストラゼネカのElisabeth Bjork氏は言う。 心不全は、主要な4つの悪性腫瘍の合計と同程度に致死的で、患者数が多い重篤な状態だ。2016年には世界の心不全患者は6,360万人と推定されており、その半数の患者は診断されてから5年以内に死亡している。また、2016年に心不全が原因の身体障害を有する患者は約778万人年とされ、心不全の有病率やそれによる治療費、早期の死亡、生産性の損失は、医療制度や社会に大きな損失を与えている。[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]