DPP-4阻害薬による非炎症型「水疱性類天疱瘡」の86%が特定のHLA遺伝子を保有 糖尿病治療薬によるリスク因子を調査
2017.12.11
DPP-4阻害薬の服用によって生じた「非炎症型水疱性類天疱瘡」患者の86%が、特定の白血球型「HLA-DQB1*03:01」をもつことが、北海道大学や理化学研究所統合生命医科学研究センターの研究で明らかになった。
この遺伝子を、DPP-4 阻害薬服用中の水疱性類天疱瘡の発症リスクを予測する疾患バイオマーカーとして、また将来的には、発症予防法の確立へ活用されることが期待される。
この遺伝子を、DPP-4 阻害薬服用中の水疱性類天疱瘡の発症リスクを予測する疾患バイオマーカーとして、また将来的には、発症予防法の確立へ活用されることが期待される。
DPP-4阻害薬を服用中の患者の水疱性類天疱瘡を調査
DPP-4阻害薬は2型糖尿病の治療薬として広く用いられているが、服用した患者の一部に「水疱性類天疱瘡」が生じている。水疱性類天疱瘡は、全身の皮膚や粘膜に水疱やびらん、紅斑(赤い発疹)が生じる自己免疫疾患。難治性のことが多く、中等症以上は厚生労働省の指定難病となっている。 水疱性類天疱瘡は、皮膚にある「17型コラーゲン(BP180タンパク)」や「BP230タンパク」に対する自己抗体によって生じる。高齢者に生じることが多く、重症となることもあるので、発症予防が望まれるが、これまでDPP-4阻害薬による水疱性類天疱瘡が生じるリスク因子は解明されていなかった。 水疱性類天疱瘡は、症状によって「非炎症型」と「炎症型」の2種類に分類される。これまでの研究でDPP-4阻害薬の服用による水疱性類天疱瘡は「非炎症型」が多いことが分かっている。 今回の研究では、DPP-4阻害薬の服用者に生じた水疱性類天疱瘡30例の皮膚症状や自己抗体を調べ、それらを「非炎症型」と「炎症型」に分類し、「HLA」(ヒト白血球型抗原:Human Leukocyte Antigen)遺伝子を解析した。 また、DPP-4阻害薬の服用とは関係のない通常の水疱性類天疱瘡72例と、DPP-4阻害薬服用中の糖尿病患者61例のHLAも解析し、一般的な日本人873例のHLAデータと比較した。「非炎症型」が一般的な日本人やDPP-4阻害薬服用者と比較して高頻度に
その結果、DPP-4阻害薬の服用による水疱性類天疱瘡30例では、紅斑が少ない「非炎症型」が21例(70%)と大半を占めていることが判明。 「非炎症型」水疱性類天疱瘡の発症時に服用していたDPP-4阻害薬の内訳は、ビルダグリプチン7件、アログリプチン4件、テネリグリプチン4件、リナグリプチン4件、アナグリプチン1件、シタグリプチン1件だった。 HLAを解析した結果、「非炎症型」のDPP-4阻害薬による水疱性類天疱瘡の患者の86%がHLA遺伝子「HLA-DQB1*03:01」を保有しており、一般的な日本人の保有率18%やDPP-4阻害薬を服用している2型糖尿病患者の保有率31%と比較して、統計的に高頻度であることが明らかになった(オッズ比はそれぞれ27.6、13.3)。一方、通常の水疱性類天疱瘡では、同じHLAの保有率は26%で、一般的な日本人と比較して統計的には差がなかったという。 今回の研究により、HLA-DQB1*03:01は通常の水疱性類天疱瘡や2型糖尿病とは関連せず、DPP-4阻害薬服用者の水疱性類天疱瘡の発症に密接に関連することが明らかになった。研究グループは、HLA-DQB1*03:01を保有する人がDPP-4阻害薬の服用中に水疱性類天疱瘡を発症する確率は明らかとなっていないため、今後多数例での研究が必要としている。 この研究は、北海道大学病院の氏家英之講師らと理化学研究所統合生命医科学研究センターの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Investigative Dermatology」に掲載された。 北海道大学理化学研究所統合生命医科学研究センター
HLA-DQB1*03:01 as a biomarker for genetic susceptibility to bullous pemphigoid induced by DPP-4 inhibitors(Journal of Investigative Dermatology 2017年12月6日)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]