「いつ起こるかわからない低血糖」 1型糖尿病患者さんの対策は?
1型糖尿病患者の遠藤伸司さんによる連載「インスリンとの歩き方」は、第15回「低血糖との戦い」を公開しました。連載「インスリンとの歩き方」へ ▶
執筆者の遠藤さんは、中学生の頃に1型糖尿病を発症。以来、約30年間の療養生活の中で、留学や進学、就職、そして転職、プライベートまで幅広い経験を積み、なにかと無理をすることもあったようです。
連載では、そんな遠藤さんの半生を、糖尿病と上手につきあうためのコツやノウハウを中心に、実体験のエピソードを交えて語っていただきます。1型糖尿病患者さんをはじめ、2型糖尿病患者さん、糖尿病医療に携わる方々は、ぜひご一読ください。
第15回 低血糖との戦い(本文より)
僕が100万円以下で買った左ハンドルのマニュアル車には、いつも炭酸入りの清涼飲料水が積んである。僕のずさんな性格からすれば、清涼飲料水は積んであるというよりも、ごちゃごちゃした愛車のどこかに転がっているというのが正しい。
その飲み物は、もちろん喉の渇きを満たすためのものではない。運転中に、冷や汗や手の震え、はたまた意識が集中できない、いわゆる低血糖の自覚症状が出たとき用の低血糖対策である。この緊急避難用の飲料は、長いこと車に載せっぱなしになっているので、いざ飲むときにはずいぶん古くなっている。だから、炭酸は抜けているし、味も少々変わってきていて、とてもまずくなっていた。とはいえ、炭酸が抜けているので、緊急の際には、一気に飲めるというメリットはあるわけだ。
ある事件
さて、僕は自動車のセールスをしているので、顧客の自宅や、これからお客さんになって欲しいと目論んでいる人の家や、売れた車の登録などのために、とにかく毎日車に乗る。だいたい3万kmを1年間で走行する。多い年には、5万km走り、赤道を一周したこともあった。まあ、1日あたり、100kmは固い。