1型糖尿病患者さんの「飲み会」事情 インスリンとの歩き方
1型糖尿病患者の遠藤伸司さんによる連載「インスリンとの歩き方」は、第13回「お酒と血糖値と現実と」を公開しました。連載「インスリンとの歩き方」へ ▶
執筆者の遠藤さんは、中学生の頃に1型糖尿病を発症。以来、約30年間の療養生活の中で、留学や進学、就職、そして転職、プライベートまで幅広い経験を積み、なにかと無理をすることもあったようです。
連載では、そんな遠藤さんの半生を、糖尿病と上手につきあうためのコツやノウハウを中心に、実体験のエピソードを交えて語っていただきます。1型糖尿病患者さんをはじめ、2型糖尿病患者さん、糖尿病医療に携わる方々は、ぜひご一読ください。
第13回 お酒と血糖値と現実と(本文より)
20代半ばになったころ、お酒を飲む機会がとても多くなった。歓迎会や送別会などの会社の行事で、上司や同僚と飲むお酒だったり、たまにお客さんから誘われて飲むこともあった。1型糖尿病とは言え、避けて通れないのが酒の席だった。
もちろん、お酒は、仕事を円滑に進めるためのコミュニケーションツールでもある。1型糖尿病を理由にお酒を控えるのは、病気のせいで、窮屈な生活を強いられている、あわれな自分を見るようで嫌だった。だから、少し意地もあって、お酒の席に誘われれば、ほとんど断らなかった。 お客さんと酒を飲みに行ける関係になることは、車を売る意味でも、お客さんの貴重な経験を聞く意味でも、有意義なことだった。
ただ、お酒を飲む上で、気をつけなければいけない点は、経験上、いくつか知っていた。
つまみに始まり、酒を飲み、また、つまみを食べては、酒を飲む。
牛丼だとか、ラーメンだとか、チャーハンだとか、ハンバーガーとか、社会人になってジャンキーな食生活ではあるけれど、とにかく主食のある食事が、僕の1型糖尿病食の基本形だった。運ばれてきた食事を見て、カロリーを考え、食べる前にインスリンを打って、できるだけ早く食事を済ませるのが僕のスタイルだった。