「インスリン療法と医療費に関する2,650人調査」第3回追加データ公開

2013.09.30
 糖尿病ネットワークで今年3月に実施した「インスリン療法と医療費に関するアンケート」(委託者:日本イーライリリー株式会社)の第3回目の追加情報が公開された。今回は、主治医とのコミュニケーションと糖尿病治療に対する満足感を検証した。アンケートの詳細はこちら

 アンケート調査は、今年3月1~18日にかけてインスリン療法中の糖尿病患者を対象に行われたもの。全国から2,650名(1型患者949名、2型患者1,594名、妊娠糖尿病などその他の患者107名)の有効回答が得られ、現在受けているインスリン療法にかかる医療費の現状が明らかになっている。

参照:インスリン療法中の糖尿病患者2,650人の調査結果を発表(2013年06月19日)

患者の半数は治療に「満足」!

 今回の調査で現在受けている糖尿病治療についての満足感を聞いてみたところ、「とても満足している」7%、「満足している」43%と半数が「満足」と答え、残りは、「どちらとも言えない」37%、「あまり満足していない(不満がある)」11%、「全く満足していない(とても不満)」2%だった。純粋に"不満"と回答したのは13%で治療に対する満足感は全体的に高かったが、この満足感といくつかの質問をクロスし、満足度の高い人・低い人にはどのような違いがあるのかを探ってみた。

 まず、医療費(の負担額軽減等)について医師に相談したことがある人とない人とでは、満足感は変わるのか?まず相談経験をみてみると、49%が「相談したいと思ったこともなく、相談したこともない」、「相談してみたいと思ったことはあるが、相談したことはない」38%、「相談したことがある」11%と続き、87%が"相談したことがない"という状況で、全体の半数は「相談したいと思ったことはない」とのことだった。これは、医療費は医師に相談すべき案件ではないと考える人が多いことを示しているのではないだろうか。しかし、医療費の相談経験と満足感をクロスしたところ、糖尿病治療に「とても満足している」と回答した人は全体の中では少ないものの、医師に「相談したことがある」人が最も多く、納得しながら治療を受けている人は満足感が上がることがうかがえる。

医療費に関する医師への相談と治療満足度
医療費に関する医師への相談と治療満足度

選択肢を見せるだけで
満足感は変わる

 次に、使用するインスリン製剤をどのように決めたか?これによって、治療に対する満足度がどのように変わるのかを見てみた。

 まず、インスリン製剤の決め方は、「選択肢の提示はなく、主治医が勧める製剤に決まった」という人が68%、「選択肢が提示され、主治医に勧められた製剤に決まった」人が22%と、9割が主治医が勧めた製剤に決まっているという状況であった。主治医が患者個々に最適な薬剤として勧めているのだから、患者がそれを断る理由はないだろう。また、異論を唱えたところで患者自身で最適な薬剤を選ぶことは不可能だ。

 この製剤の決め方と満足度をクロスしてみたところ、"選択肢の提示があったうえで決めた人"は、満足度は有意に高かった。複数の選択肢の中から納得して選んだ薬剤であれば、治療への自信にもつながるのではと考えられる。

インスリン製剤の決め方と治療満足度
インスリン製剤の決め方と治療満足度

理解と納得で
負担の痛みは和らぐ?

 最後に、治療の満足度と医療費の負担感。やはり、負担感を大きく感じている人は、満足度は低いという結果だった。少数ではあるが、医療費を「まったく/あまり負担ではない」と感じている人は、治療満足度の高い人に多かった。それでも、治療に「とても満足している」と答えていても、8割は医療費を「負担」と感じていることに変わりはない。

治療満足度と医療費の負担感と治療満足度
治療満足度と医療費の負担感と治療満足度

 長期にわたる治療を余儀なくされるインスリン療法患者にとって、毎月のように支払わねばならない医療費はやはり負担だ。しかし、国で決められた診療報酬や薬剤費用は値切ることはできないから、医療機関へ相談したところで無意味だろうと多くの患者はあきらめるしかない。また、短い診察時間の中で主治医に追加の説明を求めたり、違う薬剤について相談を持ちかけることについても、主治医との関係性を考えるとやはり難しいもの。しかし今回の調査で、主治医と患者がお互いの思いを理解しあい、納得のうえで治療を継続していくことができれば、その負担感の意味合いは変わってくる可能性があることが見えてきた。

 限られた収入の中で医療費を支払い続けるのは、どんな患者にとっても大変なことである。何十年単位で支払っていけば大きな金額になるし、収入がなくなったらどうなるのか?といった不安を患者は常に抱えている。そんな患者を支える社会保障制度が早期に創設されることを願わずにはいられないが、医療者と患者双方の理解を深めていくことが今できる最善の一歩なのかもしれない。

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