患者と医療者の"相性"は治療経過に影響する アンケート調査より

2013.07.17
 良好な人間関係を築くことの必要性は、治療においても言えるのかもしれません。とくに治療が長期間に及ぶ糖尿病の患者さんにとって、通院先の主治医や医療スタッフとは"長いお付き合い"になります。また、医療者側は限られた時間のなかで、多くの患者さん一人ひとりの思いをくみ取りながら関係を築いていく必要があります。
 患者さんと医師・医療スタッフ、そこには"相性"はあるのでしょうか。そして、"良い関係づくり"には何が必要なのか。糖尿病ネットワークでは、メルマガ会員に定期的に行うアンケートで「糖尿病患者さんと医療スタッフの"相性"」をテーマに調査を実施しました(有効回答数は、医療スタッフ173名、糖尿病患者さん502名)。

"相性"という側面から見えてきたお互いの思い

 どのような病気であっても、通院先の医師や医療スタッフとの良好な信頼関係があれば、安心して治療に臨むことができるものです。とくに慢性疾患の場合、定期的に通院するなかでコミュニケーションをとり合いながら、お互いの理解を深めていくことが必要になります。しかし時に、通院を重ねてもお互いの理解が深まらず、しっくりいかないことがあります。自分が選んだ病院はきちんとした所だし、先生も良い人だけれど、なぜか自分とはフィーリングが合わない・・。不安や悩みを聞いてもらいたいけれど、忙しそうだから・・。怒られるのが怖いから余計なことは言わないようにしよう・・等々、悶々とした思いを持っている人は案外多いのかもしれません。我慢が続けば治療へのモチベーションは下がり、通院への足取りも自然と重くなるもの。"信頼関係に恵まれない患者さんは不幸だ"と表現されることもありますが、信頼できる主治医と巡り会うことは、患者さんにとっては一大事とも言えます。

 一方で医療者も、どのような患者さんとも良好な関係を築けるよう、日々努力されています。しかし、医療者も人間ですから、患者さんと接するなかには、何となく苦手な方や、自分たちの思いがなかなか伝わらないことも多いのではないでしょうか。

 早速、お互いの思いを見てみましょう。

相性や気持ちのすれ違いが
転院理由になることも

 まずは、お互いの"相性"について聞いてみました。患者さんは56%が「良い」との回答。「あまり良くない」と回答した人のうち77%は「仕方ないと諦め我慢している」が最も多く、残りの37%が「転院を考えている」、15%が「転院した」とのこと。

 一方、医療者側では、多数の患者さんと接するなかで、相性が合わないと感じる患者さんが「少数」「けっこういる」含め87%に上りました。とはいえその際は、「我慢して付き合う」、「患者さんと話し合う」といった前向きな対応で臨んでいる方が大半。一方で、相性が悪くて患者さんが転院の道を選ぶことが「ある」と答えた方は約3割おり、相性や気持ちのすれ違いが転院の理由になる可能性があることがわかりました。

8割の医療スタッフが
コミュニケーションの良し悪しは治療経過に影響すると実感

 次に、医療スタッフへの問いとして、コミュニケーションの良し悪しと患者さんの血糖コントロールや治療経過は相関があるか?を聞いてみたところ、81%の方から「あると思う」との回答が返ってきました。長く治療を続けていくうえで、良好な関係づくりがお互いのモチベーションに影響を与えると実感しているようです。そして良好な関係づくりのために、71%の医療スタッフが「患者さんと積極的に会話している」と答えています。そして、会話したいけれど「あまり会話ができていない」という方の6割は、「話をする時間がない」という現状も浮き彫りに。なお、患者さんの顔と名前を覚えているか?の問いには、「通院歴の長い人、印象の強い人のみ」が最も高く55%、「ほぼ全員を覚えている」人は28%でした。


Q. 患者さんとのコミュニケーションの良し悪しと治療経過の相関(n=173)

  • あると思う  65%
  • 非常にあると思う  16%
  • あまり関係ないと思う  13%
  • わからない  5%
  • 全く関係ないと思う  1%
  • その他  1%


Q. 言われたことや態度などで、治療への意欲が下がることは?(n=502)

  • ない 65%
  • 時々ある  27%
  • よくある 5%
  • その他 3%

 そして患者さんには、主治医や医療スタッフからの声がけや態度などで治療への意欲が下がるか?を聞いてみました。すると、65%が「ない」、32%は「ある」との結果で、モチベーションにはあまり影響していないように見受けられました。しかし、そこにはデリケートな思いが隠されているようで、主治医や医療スタッフにかけられた印象的な言葉(傷ついた言葉、嬉しかった言葉)として、多くの悲喜交々の思いが寄せられました。  本調査の「嬉しかった言葉・傷ついた言葉」、両者の「自由記述コメント」については、当サイト「患者さんのほんね・医療スタッフのホンネ」コーナーに詳しく紹介していますのでご一読ください。


Q. 主治医や医療スタッフにかけられた傷ついた言葉、嬉しかった言葉(一部抜粋)

■嬉しかった言葉

  • 「よくがんばってるね」だけで救われます。
  • 「この程度で、がっかりする必要ありませんよ」とポンと肩を叩かれた。
  • 「一緒にがんばりましょう」
  • 「あなたなら大丈夫」と太鼓判を押してくれた。
  • 「あなたはうちの病院でファーストクラスの患者ですよ」
  • 「自分のペースで少しずつ良くなれば大丈夫ですよ」
  • 「あれこれ言われて調整するより、自分で考えて調整する方がうまくいってるじゃない?」
  • (HbA1cが下がらずモチベーションが下がってしまった時)「通院を続けているだけでも違いますよ」

■傷ついた言葉

  • 「とにかく、痩せろ!痩せないなら、食事をするな!」
  • 「注射しなければ、死ぬだけだよ」
  • 「糖尿病の人はいずれ目が見えなくなるから・・・」
  • 「糖尿病にだけは、なりたくないわ」
  • 「あなたは糖尿病の顔をしている」
  • (医療費が厳しいと相談したら)「食べてるからHbA1cが高いんだろ。食べる分で毎月通えるだろ」
  • (発症5日目の1型患者に)「あなた食いすぎだよ」
  • 「がんばりが足りないんじゃないの?」
  • 「あなたの病気は人より寿命が短くなるから」

アンケートの詳細はこちら

アンケート調査結果(糖尿病情報Box&Net.No37.より)

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