超速効型インスリンで食後高血糖を制御 グルリジンは効果発現が速い

2013.06.12
 「食後血糖コントロールの意義~最新の治療ガイドラインと超速効型インスリンの有用性について~」をテーマに、5月に都内でセミナーが開催された(サノフィ株式会社開催)。演者である浜松医科大学第2内科の釣谷大輔氏は、「糖尿病治療は、量から質へ転換している」と期待を述べた。

グルリジンは作用発現が速く、作用消失が速い

 現在、超速効型インスリンは3種類が発売されている。グルリジンは他の超速効型インスリンに比べ、作用の発現が速く、作用消失が速い特性があるとされる。釣谷氏は、超速効型インスリンアナログ製剤「インスリン グルリジン」(商品名:アピドラ)と他の超速効型インスリンとの間で、食後血糖・血糖日内変動に差があるかを検討した2件の臨床試験について講演した。

 試験1は、グルリジン以外の超速効型インスリンを1日3回使用し、入院から1週間以上経過し血糖コントロールが十分安定したと判断された2型糖尿病25名を対象に行われた。1日目はグルリジンに変更し、2日目はグルリジンをもとの超速効型インスリンに戻した。

 グルリジンに変更し、朝食前、朝食後(30分、60分、120分、180分、240分)、昼食後、夕食前、夕食後、23時の計10回の採血を行い、PGとCPRの測定を行った。

 PGの平均値は朝食前(他の超速効型インスリン 124.8mg/dL vs グルリジン 121.2mg/dL)、朝食後30分(同170.9mg/dL vs 同156.5mg/dL)、60分(同181.3mg/dL vs 同168.3mg/dL)、120分(同171.4mg/dL vs 同171.8mg/dL)、180分(同150.3mg/dL vs 同157.8mg/dL)、240分(同127.3mg/dL vs 同138.0mg/dL)となり、朝食後60分までの平均値はグルリジン投与時で低く、朝食後120分でほぼ同一となり、その後はグルリジン投与時で高値を示した。

 内因性インスリン分泌の指標であるCPRを比較したところ、各測定時の平均値は朝食前(他の超速効型インスリン 1.86ng/mL vs グルリジン 1.65ng/mL)、朝食後30分(同2.83ng/mL vs 同2.55ng/mL)、60分(同3.28ng/mL vs 同2.77ng/mL)、120分(同3.55ng/mL vs 同3.08ng/mL)、180分(同3.07ng/mL vs 同3.03ng/mL)、240分(同2.63ng/mL vs 同2.81ng/mL)sulとなり、朝食後240分を除いてグルリジン投与時で低値を示した。朝食前から240分のCPRの総和であるσP-CPRは、グルリジン投与時で14.3ng/mLだったのに対し、他の超速効型インスリンでは15.7ng/mLで、グルリジン投与時の方が低値だった。

 釣谷氏は、「グルリジンは食後30~60分の血糖値改善を促し、内因性インスリン分泌を低下させ、膵β細胞を保護する可能を示唆された」とし、「他の超速効型インスリン製剤使用時に食後低血糖をきたしやすい症例にも有用であり、低血糖を減らすことで、よりさらなるタイトレーションを可能にする」との考えを示した。

 試験2は、強化インスリン療法もしくは追加インスリン3回投与におけるグルリジンの有用性を検討した現在も継続中の多施設共同研究。血糖コントロールが不十分な1型糖尿病ならびに2型糖尿病患者(計60症例)を対象に、速効型インスリンあるいは他の超速効型インスリンから、グルリジンへの切り換え試験を実施した。グルリジンへのほぼ同単位の切り替えで、3ヵ月後のHbA1cは有意に改善した。

 HbA1cの推移は、1型糖尿病(n=22)では処方変更時の8.42%から1ヵ月に8.15%、2ヵ月後に8.16%、3ヵ月後に8.01%に、2型糖尿病(n=38)では同7.76%、同7.52%、同7.55%、同7.48%と有意に低下した。処方変更時から3ヵ月後の変化量は1型糖尿病-0.41%、2型糖尿病-0.29%だった。

 釣谷氏は、「低血糖を認めない、あるいは少なくなったことも確認された症例では、グルリジンの増量によるタイトレーションが今後必要となる」との考えを示した。

 グルリジンの使用が勧められるのは、▽血糖コントロールが不十分(HbA1c7.5%、食後血糖値160mg/dL以上)、▽追加インスリン量が多い(毎食10単位以上投与)、▽1型糖尿病、▽低血糖を起こしている、▽食後打ちが必要な患者などを挙げている。

食後血糖のピークである1時間高血糖を是正する治療が必要

 国際糖尿病連合が2007年に作成した「食後血糖値の管理に関するガイドライン」では、食後血糖値と脳梗塞やCHDの死亡率との関連について解明したDECODE研究などのデータが提示された。欧州で行われた13のコホート研究のメタアナリシスであるDECODE研究では、食後血糖値が高いほど脳梗塞、およびCHDの死亡率が高く、OGTT2時間血糖値が200mg/dL以上であれば140mg/dLより死亡率が2倍以上になると報告された。

 「食後血糖値の管理に関するガイドライン」2011年度改訂版では、血管合併症抑制のためには、食後1~2時間の血糖を測定し、食後血糖値を160mg/d以下に維持することと改訂された。実際、食後2時間値よりも1時間値の方が高いとする報告が国内外でされている。

 ガイドラインでは「食後血糖値を標的とするためには、薬物療法を考慮すべきである」と推奨されており、より早期に確実に作用を示す薬剤の使用が求められている。また、食後血糖の管理と合わせて、できるかぎり低血糖を避けることが推奨されていることから、低血糖のリスクを回避でき、食後血糖のピークである1時間高血糖を是正する治療薬の使用が推奨されている。

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