『血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012』発表。GA20%を推奨
2013.04.10
日本透析医学会は、『血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012』を発表した。血糖管理の指標としてグリコアルブミン20.0%未満と随時血糖180~200mg/dLを推奨し、HbA1cは「血糖状態を正しく反映しないために参考程度に用いる」とするほか、透析前後の低血糖への対応、動脈硬化などの合併症対策などについて、ステートメントとその解説をまとめている。
近年、透析患者に占める糖尿病性腎症の割合が増加し(2011年末で36.6%)、透析医療従事者による血糖管理の重要性が増している。また、維持血液透析では週に約3回、患者が受診することから、透析医療の従事者は1カ月に十数回、同一患者と接することになり、血糖管理に介入可能な機会は糖尿病医療者以上に多いと考えられる。このような状況から、透析医療の現場に則した血糖管理に関する診療指針が求められていた。 同ガイドラインは『日本透析医学会雑誌』(日本透析医学会発行)の46巻3号に発表された。主なポイントは以下のとおり。
血糖コントロール指標はグリコアルブミン(GA)と随時血糖
糖尿病の血糖コントロール指標として一般的にはHbA1cが用いられる。しかし維持透析下では、赤血球寿命の短縮、透析による失血、腎性貧血治療のためのESA製剤(赤血球造血刺激因子製剤)投与等の影響により幼若赤血球の割合が増えることで、HbA1cが実際の血糖コントロール状態より低値となる。このためガイドラインでは「HbA1cは参考程度に用いる」としている。
一方、グリコアルブミン(GA)は透析下でも血糖コントロール状態を正しく反映するため、ガイドラインはGAを指標とすることを推奨、GA20.0%未満を管理目標とした。ただし、心血管イベントの既往歴があり低血糖傾向のある患者では、GA24.0%未満を暫的目標値とし、今後のエビデンスの蓄積を待ち確定値を設定するとしている。
また血糖値に関しては、透析医療では空腹時血糖はあまり測定する機会がなく、透析開始前(食後であることが多い)に血糖を測定するため、随時血糖(透析前血糖)を用いることとし、180~200mg/dLを目標値とした。
なお、血糖管理指標の測定頻度として、インスリン使用中であれば透析開始前と透析後の随時血糖の測定を推奨、経口薬使用中であれば透析前血糖値を週1回、GAを月1回測定することが望ましいとし、非糖尿病患者でも最低1年に1回のGA測定を推奨している。
透析前後の血糖管理について
透析開始時500mg/dl以上の高血糖の場合は、2~4単位の超速効型インスリンの皮下注射を検討、2時間後に再度血糖値を測定して透析中は100~249mg/dLを目標とするとし、過度の血糖低下(100mg/dL未満)を起こさないように注意を促している。
透析開始時60mg/dL未満、または明らかな低血糖症状がある場合は緊急処置の後、30分~1時間おきに血糖測定し、血糖の上昇を確認後に透析回路を離脱するとしている。また、このような処置がしばしばみられる場合は「糖尿病治療の根本的な見直しが必要」と述べている。
動脈硬化対策や足の触診の必要性も盛り込む
これらのほかに、合併しやすい動脈硬化の対策としてIMTやPWVを利用し動脈硬化進展度を把握すること、PAD(末梢動脈疾患)による足病変の有無や足背動脈の触診を最低6カ月に1回は行う必要性などについて言及している。
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[dm-rg.net / 日本医療・健康情報研究所]