経口インスリンで1型糖尿病を予防 第48回EASD

2012.10.03
第48回欧州糖尿病学会(EASD)
 長期にわたり経口インスリンを服用することで、1型糖尿病を発症する危険性の高い人が、糖尿病の発症を予防したり、発症の時期を遅らせることができるかもしれない。1型糖尿病の親族をもつ人などを対象に、1型糖尿病の予防法の開発をめざす国際的な研究「トライアルネット研究」がスウェーデンなどで行われている。

 1型糖尿病は自己免疫型の糖尿病であり、インスリンを産生するβ細胞が患者自身の免疫系により破壊されることで発症する。「インスリン自己抗体をもつ人は、年齢に関係なく、5年以内に1型糖尿病を発症するリスクが50%にもなる」とスウェーデンのルンド大学のAke Lernmark教授は話す。

 Lernmark教授はトライアルネット研究を主導している。「インスリンに対する自己抗体をもっており1型糖尿病を発症する危険のある人に、経口インスリンを投与することで、発症を防いだり遅らせることができる可能性がある」と述べている。

 アメリカとカナダの研究者らはトライアルネット研究で、1994年から2003年までに無作為抽出プラセボ比較試験を行った。対象は、親族に1型糖尿病患者をもちインスリン自己抗体をもつ者とし、経口インスリンまたはプラセボ(偽薬)を摂取してもらった。

 研究では、経口インスリンの服用により、1型糖尿病の発症に対し長期にわたり介入効果があるのかを検討し、経口インスリンの服用を中止する前と後で、1型糖尿病の発症率が変化するかどうかを評価した。

 その結果、追跡調査で異なる結果が示された。試験開始時にインスリン自己抗体が高レベルであった人でも、インスリン摂取群では1型糖尿病の発症がコントロール群に比べ4年半も延び、インスリンを摂取している間は発症の遅延効果は続いていた。

 経口インスリンが1型糖尿病の発症をどのように予防するかはまだわかっていない。しかしながら、「低用量インスリンを消化管を通じて毎日摂取することで、免疫系が順応していく可能性がある」とLernmark教授は考えている。

 インスリンは免疫系により拒絶される異物とは認識されなくなるというのだ。そのメカニズムは、アレルギーの減感作療法に似ている。アレルギーの原因物質を段階的に増やしながら服用することでアレルギー反応を抑えていくことと同じだ。

 この経口インスリン研究は、今後数年間は続けられる予定であり、対象年齢を3歳から45歳までに拡げる予定だ。

第48回欧州糖尿病学会(EASD)
Stop diabetes with insulin tablets(ルンド大学 2012年9月19日)

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