HbA1c国際標準化 JDS値からNGSP値に移行 日本糖尿病学会
2012.01.20
日本糖尿病学会は、広く糖尿病診療に用いられているHbA1cの値について、「2012年4月1日よりNGSP値を用い、当面の間はJDS値も併記する」との方針を発表した。
同学会は「HbA1c表記の問題の根本的な解決のため、日本での日常臨床を含めた糖尿病の診療・研究全般で、HbA1cの国際標準化を推進するための準備を進めてきたが、体制が整ったので2012年4月1日より日本でもNGSP値"HbA1c(NGSP)"の使用を開始する。なお、2012年度は特定健診などではJDS値を使用し、日常臨床でも両値の違いやHbA1cの意義などを浸透させていく移行期間にあてる」と述べている。 日本で現在使用されているHbA1c値であるJDS値「HbA1c(JDS)」は、世界の大部分の国で使用されているNGSP値「HbA1c(NGSP)」に比べ約0.4%低値となっている。この問題に対し同学会は「糖尿病関連検査の標準化に関する検討委員会」を立ち上げ、2010年7月より英文誌や国際学会における発表ではNGSP値に相当する値で表示することを基本方針としてきたが、日常臨床などでは検査値をめぐる混乱を避けるためにJDS値が継続して使われてきた。 HbA1c国際標準化がもたらす日常臨床での影響は大きい。HbA1cは血糖コントロールの指標としてのみならず、2010年度の糖尿病の診断基準の改訂以降、診断基準のひとつとしても活用されている。また、特定健診・保健指導で大量の電子データの書き換えやHbA1cを用いた層別化・判定システムの調整が必要となる。同学会ではJDS値からNGSP値に移行する時期について慎重に検討し、厚生労働省・日本医師会・保険者団体などとも協議を重ねてきた。 同学会は「HbA1c国際標準化の実施方法が確定した。患者治療上の不利益防止や医療現場での疑問・懸念の解消を図るため、患者・医療機関向けの説明資料を作成し、学会ホームベージなどに表示するなどして広く利用できるようにする」との方針も示した。
日常臨床及び特定健診・保健指導におけるHbA1c国際標準化の基本方針(抜粋)
(社)日本糖尿病学会
日常臨床
2012年4月1日よりHbA1cの値はNGSP値を用い、当面の間、JDS値も併記する。
なお、NGSP値とJDS値は、以下の式で相互に正式な換算が可能である。
NGSP値(%)=1.02×JDS値(%)+0.25%・・・(1)
JDS値(%)=0.980×NGSP値(%)-0.245%・・・(2)
(式(1)は、2011年10月1日付でJDS値とNGSP値との間の正式な換算式として確定したものであり、式(2)は式(1)から求められる)
あるいは、この換算式(1)を実際に計算すれば(小数点以下第三位まで計算し第二位を四捨五入)、
となる。式(2)では、
となる。
なお、NGSP値とJDS値は、以下の式で相互に正式な換算が可能である。
NGSP値(%)=1.02×JDS値(%)+0.25%・・・(1)
JDS値(%)=0.980×NGSP値(%)-0.245%・・・(2)
(式(1)は、2011年10月1日付でJDS値とNGSP値との間の正式な換算式として確定したものであり、式(2)は式(1)から求められる)
あるいは、この換算式(1)を実際に計算すれば(小数点以下第三位まで計算し第二位を四捨五入)、
JDS値で4.9%以下: | NGSP値(%)=JDS値(%)+0.3% |
JDS値で5.0~9.9%: | NGSP値(%)=JDS値(%)+0.4% |
JDS値で10.0~14.9%: | NGSP値(%)=JDS値(%)+0.5% |
NGSP値で5.2%以下: | JDS値(%)=NGSP値(%)-0.3% |
NGSP値で5.3~10.2%: | JDS値(%)=NGSP値(%)-0.4% |
NGSP値で10.3~15.2%: | JDS値(%)=NGSP値(%)-0.5% |
特定健診・保健指導
システム変更や保健指導上の問題を避けるため、2012年4月1日~2013年3月31日の期間は、受診者への結果通知及び保険者への結果報告のいずれも従来通りJDS値のみを用いる。2013年4月1日以降の取り扱いについては、関係者間で協議し検討する。
記述上の表現
NGSP値で表記されたHbA1cは、「HbA1c(NGSP)」と記述する。また、従来のJDS値表記のHbA1cは「HbA1c(JDS)」とする。これまでJDS値+0.4%で表されるNGSP相当値を国際標準値として論文などで用いてきたが、今後はNGSP値を用いる。ただし、上記の様に臨床的に問題となる多くの範囲においては両者に違いはない
表示・印字文字数に制約のある場合の検査項目名
検査項目名の表示・印字文字数が5文字以内となっている臨床検査システムでは、すでにHbA1c(JDS)に対して項目名「HbA1c」が付与されている。よってこれと区別するため、HbA1c(NGSP)についてのみ、その項目名を「A1C」(アルファベットは大文字)とする。
糖尿病の診断
2012年3月31日までは、従来のJDS値を用いて診断し、6.1%以上を糖尿病型とする。2012年4月1日以降は、NGSP値を用いて診断し、6.5%以上を糖尿病型とする。
HbA1cによる血糖コントロールの指標と評価
2012年3月31日までは、従来のJDS値で表された現行の指標と評価を用いる。2012年4月1日以降は、現行の血糖コントロールの指標と評価に用いられたJDS値をNGSP値に換諒した値を用いることとする。
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]