尿糖自己測定(SMUG):血糖自己測定(SMBG)と同等の治療効果

2011.06.09
 インスリン療法を行っていない2型糖尿病患者の治療において、血糖コントロールを改善するために、「尿糖自己測定(SMUG)」には、「血糖自己測定(SMBG)」と同等の効果があるとする研究が発表された。尿糖自己測定により、患者のコンプライアンスは改善し、低血糖の出現やQOLの向上においても、安全性が高いことが確かめられた。

尿糖自己測定による血糖コントロール改善効果

 インスリン療法を行っている1型糖尿病および2型糖尿病の患者において、血糖自己測定が効果的な治療ツールとなることを示した研究は多いが、インスリン療法を行っていない2型糖尿病患者での治療効果を検討した知見は少ない。

 江蘇省南京市の東南大学医学部付属Zhongda病院糖尿病研究所のJ. Lu氏らによるこの研究は、国際糖尿病連合(IDF)が発行する医学誌「Diabetes Research and Clinical Practice」に発表された。

 生活習慣介入や薬物療法に加え、患者が自身で行う血糖自己測定(SMBG)と尿糖自己測定(SMUG)は、良好な血糖コントロールを得るために効果が高いことが、これまでも多くの研究で指摘されている。

 SMBGでは、糖尿病患者が穿刺器や測定器の扱いなどのスキルを学習し、測定値を記録し適正に理解する能力があることが求められる。患者にとっては測定毎事の穿刺による採血が負担になる場合があり、また、ある程度トレーニングされた医療スタッフが患者を指導し管理する必要がある。

 SMUGは、SMBGより簡便に行え、非侵襲であり、多くの場合で経済的な負担はより少ない。患者指導も比較的、簡便に行える。一方、IDFのガイドラインでは尿糖排泄閾値をおよそ180mg/dL(10.0mmol/L)としながらも、年齢・個人差があり、また、尿糖測定では低血糖の状態を知ることができない点などを指摘している。

 Lu氏ら研究チームは、インスリン療法を行っていない2型糖尿病患者における、尿糖定量測定および血糖測定の血糖コントロールに対する有効性および利便性、安全性を評価する目的で、糖尿病の治療を受けている成人2型糖尿病患者を対象に6ヵ月間の試験を行った。対象者を無作為に、「A群:尿糖自己測定を行う」(n=38)、「B群:血糖自己測定を行う)(n=35)、「C群:対照群、自己測定を行わない)(n=35)の3群に分けた。

 尿糖自己測定を行う被験者には携帯型デジタル尿糖計「タニタ UG-201」を提供し、空腹時尿糖値と朝食後2時間尿糖値を毎日測定してもらった。3群全てで食事と運動の変動を毎日記録してもらい、A群とB群では測定した血糖値と尿糖値も記録してもらった。

 「タニタ UG-201」は、マイクロ・バイオセンサーにより尿糖を高精度に測定する検査器機で、0~2000mg/dLの広範囲の測定が可能。センサーでは尿中のアスコルビン酸やアセトアミノフェンなどの影響成分を最小限に抑え、センサーカートリッジを繰り返し使用できる。非侵襲であり、小型なので家庭や携帯で使用でき、使い方も簡便で尿糖計の先端にあるセンサー部分に尿をかけるだけで測定が完了する。

 その結果、ベースラインのHbA1c値はA群8.8±1.4%、B群8.5±1.1%、C群8.5±1.7%であったが、6ヵ月後のHbA1c値は各群で低下した。低下値はA群とB群で有意に高かった(p<0.05)。95%信頼区間でA群-1.9%(-2.5 to -1.3%)、B群-1.5%(-1.9 to -1.1%)、C群-1.0%(-1.9 to -0.2%)となった。またHbA1c6.5%未満を達成した患者の割合は、それぞれ38.9%、35.3%、20.0%で、A群とB群では有意差がみられなかった。測定頻度の平均はA群で顕著に高く、低血糖の頻度とQOLスコアは全群で同等だった。

 研究者らは「尿糖自己測定により、血糖コントロールにおいて比較可能な効果が得られ、より良好にコンプライアンスを促進し、低血糖によるQOL低下リスクに影響を及ぼさないことが示唆された」と述べている。

Comparable efficacy of self-monitoring of quantitative urine glucose with self-monitoring of blood glucose on glycaemic control in non-insulin-treated type 2 diabetes
Diabetes Research and Clinical Practice, In Press, Corrected Proof, Available online 12 May 2011

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