【東北地方太平洋沖地震】 被災地で医薬品が不足 解消へ本腰

2011.03.23
 東北地方太平洋沖で発生した東日本大震災は、岩手県沖から茨城県沖にかけて震源域約500kmに及び、東日本に甚大な被害をもたらした。被災地で深刻化する医薬品不足の解消に向けた対策が行われている。

 電力や水道などライフラインの復旧が進み、医療機関が通常の診療を再開する動きが出ているが、食料、医薬品、燃料などの不足は続き、被災地での不自由な生活の先はまだ見えない。

 被災地では医薬品不足が大きな問題になっている。卸の物流センターから医療機関へ医薬品を配達する運搬車のガソリンが不足しているからだ。その対策として、厚生労働省は医薬品運搬車両への制限なし給油を可能にしたほか、空路と海路を活用した輸送も開始した。

厚労省、医療機関間の医薬品などの融通を容認 被災地で不足

 東日本大震災の被災地で医薬品・医療機器が不足しているのを受け、厚生労働省医薬食品局総務課と監視指導・麻薬対策課は3月18日付で、全国の医療機関間で医薬品・医療機器の融通することを容認する事務連絡を都道府県などに示した。

 薬事法では、医療機関の間で許可なく医薬品・医療機器の販売、授与を行うことはできないことと定めている。しかし、今回の大規模な災害では、通常の供給ルートが遮断され、需給が逼迫している。医療関係者からは、被災地の病院・診療所に対し別の医療機関からの間での融通することが薬事法に抵触するのではないかとの懸念の声が出ていた。

 厚労省医薬食品局総務課では「今般のような、大規模な災害で通常の医薬品・医療機器の供給ルートが遮断され、需給が逼迫している中で、病院・診療所の間で医薬品・医療機器を融通することは、薬事法違反とはならない」としている。

東北地方太平洋沖地震における病院又は診療所の間での医薬品及び医療機器の融通について(厚生労働省)

過度な処方せん発注の自粛を要請 日本薬剤師会

 日本薬剤師会は3月18日付で、東日本大震災での処方せん医薬品の取扱いについて、医薬品卸への医薬品発注について、通常の注文量を大きく超える注文を控えることなどを会員に周知するよう求めた文書を都道府県薬剤師会会長宛てに送付した。

 日本医薬品卸業連合会から15日付で日薬に出された「東北地方太平洋沖地震に伴う医薬品受注に関する緊急のお願い」と題する文書を受けての措置で、東日本大震災の発生に伴う医療機関や薬局への医薬品の安定供給を確保することを目的としている。文書では、ガソリン消費抑制のため納品回数の削減に協力することも要請している。

 また、被災地の患者に対する処方せん医薬品の取扱いについては、厚生労働省医薬食品局総務課が3月12日付けで「医師等の受診が困難な場合、又は医師等からの処方せんの交付が困難な場合において、患者に対し、必要な処方せん医薬品を販売又は授与することが可能」と示した事務連絡に関し、「可能な限り医師等により薬局等への販売指示に基づき行う必要がある」と留意している。

 その他、日本薬剤師会では、被災地の県薬剤師会との連携に基づいて被災地外からの救援活動ボランティアの調整を行っている。支援要請があった時にすぐ対応できるように準備を進めており、日本医師会災害医療チーム(JMAT)にも薬剤師の参加を要請した。兵庫県薬剤師会、兵庫県病院薬剤師会、東京都薬剤師会などは13日に、大阪府薬剤師会は14日に、それぞれ対策本部を設置した。

日本薬剤師会 災害対策本部

医薬品の長期処方の自粛と分割調剤を要請 日本医師会

 日本医師会は3月17日付で各都道府県医師会社会保険担当理事に宛てて文書を送り、「医薬品の長期処方の自粛と分割調剤の考慮」を要請した。

 東日本大震災では製薬会社の医療用医薬品の生産設備なども被害を受けたところがあり、一部医薬品は生産が中止されたものがある。そのため、医薬品の長期処方、またはそれによる調剤が行われると、被災地域に必要な医薬品が供給できなくなる懸念がある。

 厚生労働省保険局医療課の事務連絡にもとづき、被災地域への医薬品供給を優先し、被災した患者が必要な医療を受けられるよう、被災地域以外の医療機関では当面、医薬品の長期処方の自粛あるいは分割調剤を考慮し、必要最小限の最適な処方・調剤に努めるよう協力を求めている。

平成23年東北地方太平洋沖地震及び長野県北部の地震の被災に伴う医薬品の長期処方の自粛及び分割調剤の考慮について(厚生労働省保険局医療課)
東北地方太平洋沖地震に伴う医薬品受注に関する緊急のお願い(日本医薬品卸業連合会)

被災地に医薬品供給 日本医師会と製薬協が連携

 東日本大震災にともなう災害救援活動としての医薬品供給として、日本医師会は日本製薬工業協会との連携により19日、宮城県・岩手県へ医薬品を送った。

 震災被災地の避難所で医薬品不足が問題になっていることを受け供給したもの。医薬品の内容は糖尿病治療薬や高脂血症治療薬、高尿酸血症治療薬、抗菌薬、消化性潰瘍薬、気管支拡張剤、抗不安薬、解熱鎮痛剤、消毒薬など約10トン。米軍機により仙台空港、花巻空港へ輸送した。

 製薬協は震災発生後の14日に「災害対策本部」を設置。厚生労働省から要請があった場合、会員企業の協力を得て必要な医薬品を被災地に供給できる態勢を整えていた。

 日医は18日に医薬品供給について製薬協に協力を要請。厚労省からも協力要請があり、製薬協は被災地で必要な医薬品リストに掲載された医薬品を持つ会員企業に依頼内容を伝達。10数社より医薬品が届けられた。

東北地方太平洋沖地震に伴う医薬品供給について(日本製薬工業協会)

東北地方太平洋沖地震 製薬各社の支援活動

武田薬品工業(3月14日)
日本赤十字社を通じて、災害義援金として3億円を寄付

アステラス製薬(3月14日)
義援金1億円を日本赤十字社に寄付

第一三共(3月14日)
日本赤十字社を通じて、1億円の義援金拠出および義援金マッチングギフト制度を実施

グラクソ・スミスクライン(3月15日)
義援金として2億円を日本赤十字社を通じて寄贈、一般用医薬品等の被災地への提供に呼応しかぜ薬ならびにハミガキ、歯ブラシ製品約8000万円分を寄贈

小野薬品工業(3月15日)
日本赤十字社を通じて義援金1億円を寄付

味の素(3月15日)
特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォームを通じて災害義捐金として2億円を寄付

日本イーライリリー(3月16日)
日本赤十字社を含むいくつかの災害支援団体に義援金として総額で1億円を寄付

Merck & Co.(MSD)(3月16日)
災害義援金として125万ドルを寄付、75万ドルはセーブ・ザ・チルドレン、50万ドルは日本赤十字社に提供

バイエル薬品(3月16日)
バイエルグループは88万ユーロ(約1億円)を日本赤十字社に寄付、12万ユーロ(約1370万円)相当の被災地で供給要請のある医薬品・生活用品等の物資を提供

キッセイ薬品工業(3月16日)
日本赤十字社を通じて5000万円の義援金を拠出 長野県北部を震源として発生した「栄村震災」に義援金500万円を拠出

アボット ジャパン(3月17日)
アボット・ラボラトリーズが日本赤十字社とアメリケアーズに300万ドル(約2億4500万円)の義援金を寄付

テルモ(3月17日)
義援金および自社製品が1億円超 寄贈製品は圧迫ストッキング、栄養補助食品、血圧計をはじめとした医療物

大日本住友製薬(3月17日)
日本赤十字社を通じて1億円の義援金の寄付 医薬品の提供などの支援

ノボ ノルディスク ファーマ(3月18日)
義援金1億円を日本赤十字社を通じて寄付

ノバルティス ファーマ(3月18日)
300万ドルを超える支援を行うと発表 赤十字社などに対する義援金のほか、鎮痛剤などの医薬品

サノフィ・アベンティス(3月22日)
日本赤十字社の活動支援の義援金として総額で100万ユーロを寄付

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