慢性疾患で処方期間が長期化 日本医師会が実態調査

2010.12.09
 日本医師会は12月8日、病院と診療所の医師を対象に、慢性疾患の患者に対する薬の処方期間に関する実態調査を実施し結果を公表した。もっとも多い処方期間が「5週以上」であるという医師が3割近くを占め、処方期間が長期化していることが示された。

 調査は今年9月~11月に、北海道、茨城、群馬、千葉、広島、福岡の6道県の医師会の協力を得て実施した。回答数は病院2,820人、診療所1,395人、計4,215人。施設数は、病院99施設(うち大学病院5施設)、診療所1,389施設、計1,488施設。

長期処方の理由は「患者さんの要望」や「通院負担軽減」が多い

 2002年の診療報酬改定で療担規則が見直され、薬剤投与期間に係る規制が原則撤廃されたのを受け、医療機関で処方期間が長期化する傾向がみられる。今回の調査でも、診療している患者でもっとも多い処方期間は、「5週間以上」が全体の27.3%を占めた。「4週間」が39.0%、「2~3週間」(16.0%)、「12週間以上」(11.9%)と続く。慢性疾患患者に限ると「5週間以上」が52.9%で、このうち高脂血症(HMG-CoA還元酵素阻害剤)と高血圧(ジヒドロピリジン系Ca拮抗剤)では8週間以上との回答が約8割に上った。

 5週以上の長期処方を行なっている理由は、病院医師では「病状が安定しているから」がもっとも多く約8割(80.3%)で、次いで「患者さんの通院負担軽減」(44.5%)となっている。「外来患者を少なくし、じっくり診療するため」も38.0%あった。診療所医師では「患者さんからの要望」(56.9%)がもっとも多く、次いで「病状が安定しているから」(46.5%)、「患者さんの通院負担軽減」(26.7%)となっている。

処方期間の長期化で「容態変化に気づきにくい」との声も

 処方期間の長期化に伴う問題事例も報告された。調査では、5週以上の長期の処方による過去1年に起きた問題事例として、医師の18.0%が「患者の容態の変化に気づくのが遅れたこと」、35.8%が「患者が服薬を忘れたり、中断したりしたため、病状が改善しなかった」、54.8%が「患者が次回再診予約時に、診察に来なかった」とそれぞれ回答した。高齢の患者で長期処方中に容態が変化しても、遠慮して次回診療時まで我慢してしまうという報告もあった。
比較的長期(5週以上)の処方の対象疾患および薬剤
2型糖尿病の治療薬(SU薬)では、5週以上処方している医師は4.4%と少なかった。
高脂血症HMG-CoA還元酵素阻害剤38.5%
高血圧症ジヒドロピリジン系Ca拮抗剤34.2%
高血圧症アンギオテンシンII受容体拮抗剤11.3%
甲状腺機能低下症甲状腺ホルモン9.7%
骨粗鬆症ビスホスホネート系骨吸収抑制剤7.8%
高血圧症選択的AT1受容体遮断剤7.5%
てんかん抗てんかん、躁病・躁状態治療剤5.7%
逆流性食道炎プロトンポンプインヒビター5.2%
糖尿病スルホニル尿素系血糖降下剤4.4%
前立腺肥大症α1-遮断剤3.6%
対象:外来診療を行なっている医師のうち、長期処方の対象疾患・薬剤名の回答があった医師2,902人(複数回答)、日本医師会調査(2010年)
 処方期間が長期化している傾向について、日本医師会では「処方期間が短いほうが、患者の容態の変化に気づきやすいことが示唆されている。治療中の疾病の病状が安定していても、長期処方によって、新たな疾病の発症や、併発している疾病の重症化に気づくことが遅れるおそれがある」、「医師の責務として適切な処方期間を確保するよう自ら努めるとともに、中医協(中央社会保険医療協議会)などで、あらためて処方期間のあり方を検討することを要望する」との見解を示している。

 また、病院医師では長期処方を行なう理由として「外来患者を少なくして、じっくり診療するため」という声が多かったのを受け、「病院の多忙さが長期処方を誘発しているおそれがあるので、この面からも、特に大病院と診療所のあり方(機能)について議論を深める必要がある」としている。

(社)日本医師会 定例記者会見
長期処方についてのアンケート調査報告((社)日本医師会、2010年12月8日)

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