血液検査に関係する46の新しい遺伝子を一度に発見 東京大学など
2010.02.10
理化学研究所と東京大学の研究チームが約1万4700人分の遺伝子データを解析し、血液検査に関係する遺伝子が一度に46種類もみつかった。より的確な病気の診断や、原因の究明、早期発見やオーダーメイド医療の実現につながる大きな発見だ。
病気のなりやすさには個人差があることはよく知られており、経験的に「遺伝的な要因」として説明されることが多かったが、遺伝子研究が急速に発達し、この差異は遺伝子が情報伝達の暗号文字としてもっている4種類の塩基について、その並び方がひとつでも違う「一塩基多型(SNP)」があると起こることが分かってきた。
薬の効果や副作用に関わる遺伝子や、病気のなりやすさに関わる遺伝子、病気の早期発見につながるマーカーなどが確立すれば、個々の患者に合わせてもっとも効果的な治療や投薬を行う「オーダーメイド医療」が実現できると考えられている。
そこで東京大学と理化学研究所は共同研究を行い、約1万4700人分の、1人当たり50万ヵ所の遺伝的多型を高速コンピュータで解析した。その結果、20項目の血液検査と関連する重要な46個の新しい遺伝子を一度に発見した。解析に用いた遺伝子データは、1cmに3文字を書いて並べると地球1周以上にもなる膨大な量だった。
発見したのは赤血球、肝機能、腎機能、尿酸、心筋梗塞など18項目の血液検査に関連する新規の遺伝子。例えば、赤血球数やヘモグロビン濃度(血液の濃さ)に関連する遺伝子では、病気の予防や治療に役立つ可能性が示された。 肝機能では、肝臓障害などの指標となるALP(アルカリホスファターゼ)値は遺伝子の違いにより最大99の個人差があり、γ-GTP値などは酒に強い遺伝子をもつ人で高い傾向があった。また、筋肉障害や心筋梗塞の指標となるCK(クレアチンキナーゼ)は13の個人差があり、それ以外にも痛風に関係する尿酸値など、遺伝子により検査値がかなり違うことが分かった。
今回の研究は、2003年にスタートした文部科学省リーディングプロジェクト「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」で、これまで約20万人の患者の協力を得て収集した臨床情報と血液・DNAサンプルをもとにしている。これらのサンプルは東京大学医科学研究所内で保管・管理され、研究に利用されている。
理化学研究所ゲノム医科学研究センターの鎌谷直之副センター長と東京大学医科学研究所の松田浩一准教授らは、「お酒をあまり飲まないのにγ-GTP値が高い人など、遺伝子をみることでより多くのことが分かる。遺伝子情報をもとに個人ごとの検査値の基準値を設定する"オーダーメイド臨床検査"の実現に向け大きく前進した」と話している。
今回の研究は医学誌「Nature Genetics」オンライン版に2月8日に発表された。
記者会見「高速コンピュータを用いた大規模解析により、臨床血液検査に関係する46の新しい遺伝子を一度に発見」 (東京大学)
Genome-wide association study of multiple hematological and biochemical traits in a Japanese population(Nature Genetics) Nature Genetics, doi:10.1038/ng.531
Genome-wide association study of multiple hematological and biochemical traits in a Japanese population(Nature Genetics) Nature Genetics, doi:10.1038/ng.531
[dm-rg.net / 日本医療・健康情報研究所]