遺伝学的モデルによる2型糖尿病の発症予測は有用ではない 英Whitehall Ⅱ試験

2010.02.05
 人によって並び方が異なる遺伝子の部位である一塩基多型(SNP)により、2型糖尿病の発症を予測する手法の確立をめざす研究が日本を含む世界中で行われている。これまでに多くの2型糖尿病の遺伝的なリスク要因が発見された。検査によりリスク要因を特定できれば、将来に2型糖尿病を発症する可能性を知ることができ、的確な予防対策を実施できるようになると考えられている。

 しかし、英ロンドン大学心血管遺伝学センターのSteve Humphries教授らによる前向きコホート研究「Whitehall II試験」では、遺伝子解析により発症リスクの高い人を見分けることは難しく、年齢、BMI、ウエスト周囲径、コレステロール値といった表現型の要因(phenotypic factors)を使った方が有利であることが示された。

 Whitehall II試験は、1985~1988年までに登録された35~55歳のロンドン市の公務員10,308人を対象に、約20年以上にわたり実施。今回の研究では、2型糖尿病の発症予測について関連するSNPを評価し、表現型に基づく非遺伝学的モデルにこれらの遺伝情報を付加することで、より正確に予測できるかを評価するために行った。2003~2004年の調査で、5535人からDNAを採取。うち302人が10年以上にわたる2型糖尿病を新規に発症していた。

 2つの非遺伝学的モデル(ケンブリッジとフラミンガムの2型糖尿病リスクスコア)と、SNPに基づく遺伝子型モデルを比較検討した。非遺伝学的モデルでは年齢、性別、家族歴、ウェスト周囲径、BMI、喫煙習慣、コレステロール値などを評価し、遺伝学的モデルでは2型糖尿病との関連が確認されている20のSNPが使用された。

 2型糖尿病の発症を、ケンブリッジモデルでは20%、フラミンガムモデルでは30%予測できた。これに遺伝子型モデルを加えたところ、ケンブリッジモデルでは約5%向上したが、フラミンガムモデルでは識別能は改善されず、どちらも糖尿病の発症予測は有意に向上しなかった。

 ロンドン大学のHumphries教授は「2型糖尿病の発症リスクに関わるSNPは20以上が特定されているが、発症リスク予測の有益性についての研究はまだ過程にある。将来的には遺伝子に関する研究が、疾病に対するより深い理解や予防、治療を進歩させる手掛かりとなるだろう」と話し、同Peter Weissberg教授は「遺伝子に関する研究が示す結果は、研究者にとって未知の部分が多い。肥満、喫煙、コレステロール、血糖値のといった従来から知られる危険因子によるリスク予測が有用だ」と述べている。

 この研究は英医学誌「British Medical Journal(BMJ)」1月23日号(オンライン版2010年1月14日号)に発表された。

Genetic testing no real help in predicting type 2 diabetes(ロンドン大学)
Utility of genetic and non-genetic risk factors in prediction of type 2 diabetes: Whitehall II prospective cohort study
British Medical Journal, 14 January 2010, doi:10.1136/bmj.b4838

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