厳格な血糖コントロールと自動車事故の関連

2009.12.21
 血糖値を厳格にコントロールしている糖尿病患者は低血糖による交通事故リスクが高い傾向があると、カナダの研究グループが報告した。研究者らは、「インスリンや血糖降下薬を使用する人は低血糖エピソードの徴候に注意し、特に運転前など頻回の血糖測定を行う方がよい」と述べている。この研究は医学誌「PLoS Medicine」オンライン版に12月8日掲載された。
 トロント大学医学部教授のDonald A.Redelmeier氏らは、2005年から2006年にオンタリオ省交通・医療諮問委員会に報告された、糖尿病患者の関わる交通事故について調査した。その結果、車を運転する糖尿病患者795人の中、14人に1人にあたる57人が交通事故の経験があり、過去8~12週間の平均血糖値を反映するHbA1cが低い傾向があることがあきらかにされた。
 事故を起こした群と対照群のHbA1cの平均はそれぞれ7.4%と7.9%(p=0.019)と差があり、インスリン療法および経口血糖降下薬による治療実施率はそれぞれ82%と80%、37%と27%だった。さらに、応急処置が必要な重篤な低血糖の既往のある人では交通事故リスクが4倍になり、糖尿病診断の時期の遅い人では1.3倍になることが分かった。
 糖尿病合併症を長期にわたり予防するために良好な血糖コントロールが求められる。一方で、米国、カナダ、英国、オランダ、ドイツなどでは、糖尿病患者が運転免許を維持するに、血糖コントロールが良好であることを証明することが求められる。研究者らは「糖尿病患者の血糖コントロール(HbA1c)と交通事故のリスクは関連がある」とした上で、「HbA1c値では患者の運転に対する適応度を判定するのに十分でない可能性がある」と示唆し、「こうした法律は不公平であり、効果の点でも適切ではない」と指摘している。
 Redelmeier氏は、「基礎的には糖尿病の治療を受けている成人患者の運転に対する適応の判断は慎重を要する」と述べ、今回の研究が運転に関する各国の交通法に疑問を呈するものだと付け加えている。

血糖コントロールと自動車事故の関連

Motor Vehicle Crashes in Diabetic Patients with Tight Glycemic Control: A Population-based Case Control Analysis(PLoS Medicine, 2009 Volume 6 Issue 12, e1000192.)
トロント大学リリース

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