「食事記録アプリ」と「食品摂取頻度質問票」を比較 どちらもエネルギー摂取量を過小評価 互換性はないという結果に 藤田医科大学
食事記録アプリと食物摂取頻度質問票は管理栄養士のいない施設でも行える
ただし両者で得られる結果には互換性はないことに注意する必要が
研究は、藤田医科大学医学部臨床栄養学の飯塚勝美教授と医療科学部臨床病態解析学分野の成瀬寛之教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載された。
食事調査法として、「食事記録法」「食事思い出し法」「食物摂取頻度法」などがあるが、これまで広く使用されてきた食事記録法は、管理栄養士の技量によるところが大きく、経済的、時間的に負担の大きい調査法といえる。
一方、食物摂取頻度法は、一定数の食品名、食品の摂取頻度(毎日1回、週に1~2回、月に1~2回など)、おおよその1回量(重量や容量、大きさ)を尋ねる方法。食事記録アプリは、食べたものの写真や名前を入力し、アプリで解析する方法。
食事記録アプリと2つの食物摂取頻度質問票は、被験者自身で結果を入力するため、管理栄養士のいない施設でも行える利点がある。医療のデジタル化が進められている日本では、食事記録アプリとWebで入力・解析する食物摂取頻度質問票にもとづいた栄養指導が、一般の診療所で普及すると予想されている。
研究グループは今回、食事記録アプリとWebで入力・解析する食物摂取頻度質問票にもとづいた栄養指導について、それぞれの特性を比較した。
59人の参加者に、2つの食物摂取頻度調査(FFQg、BDHQ)を行ったのち、1ヵ月のうち7日以上食事記録アプリ(asken)で食べているものを3食とも(おやつ含め)入力してもらった。参加者の平均年齢は35.6±9.6歳、BMIは20.7±1.5で正常範囲、アプリの使用期間は16.8±9.5日だった。
その結果、2つの食品摂取頻度調査、食事記録アプリで計測したエネルギーや栄養素については、いずれの検査法で総エネルギーをみても1,600kcal程度と過小評価されていたが、両者に相関がみられた。
次に、両者の互換性をブランド-アルトマン分析法で比較したところ、いろいろな栄養素のパーセント誤差が40%以上であり、互換性はないことが示された。
食事記録アプリの記録を7日間以上解析することで、ビタミンB12やビタミンDのような長期に貯蔵できるビタミンは、日により摂取量が大きく違うことも判明。
食事記録アプリと食物摂取頻度質問票のそれぞれの長所を生かした使用を推奨
食事記録アプリは、従来の記録紙法でできなかった長期間の食事内容、毎食の食事内容を解析できるが、毎回食事を入力する手間がかかり、保存するデータ量は多くなる。
一方、食物摂取頻度質問票は、1回の解答入力(20分程度)で済み、データ量は少ない利点があるものの、個人の記憶に依存する欠点がある。
「日本でよく使われている食事記録アプリと2種類の食物摂取頻度質問票を直接比較したところ、摂取エネルギーや栄養素に相関はみられるが、互換性はみられなかった。両者で測定した結果を混同してはいけないことが示された」と、研究者は述べている。
「食事記録アプリと2つの食物摂取頻度質問票のどちらも、実際の栄養摂取量より過小に見積もられることを意識して結果を解釈するとともに、前後の体重の変化など他の指標も参考にして評価する必要がある」としている。
「重要なのは、食事調査法に完璧なものはないということを十分に認識したうえで使用すれば、どちらも長所を生かした使用法が可能となること。また、栄養摂取に関して患者のフォローアップをする際には、どちらの方法を用いるかあらかじめ決めたうえで、経時的な変化量を捉える必要がある」と、研究者は指摘している。
藤田医科大学 医学部 臨床栄養学講座
A Study on the Compatibility of a Food-Recording Application with Questionnaire-Based Methods in Healthy Japanese Individuals (Nutrients 2024年6月2日)