GLP-1受容体作動薬の漸減の効果 リバウンドしない良好な体重管理 副作用も減少 欧州肥満学会で発表

2024.05.29
 減量プログラムに参加している患者にGLP-1受容体作動薬(セマグルチド)を投与し、食事や運動などの生活スタイルの改善にも重点を置き、症状が改善したら投与量を徐々に減らす治療により、目標体重を達成するのは可能という研究が、欧州肥満学会(ECO)の年次学術集会で発表された。

 「患者にGLP-1受容体作動薬の投与に並行して、食事と運動の指導を行い、食事に関連するメンタルサポートを提供することで、減らした体重のリバウンドの可能性を低下できることが示された。GLP-1受容体作動薬をゆっくりと減量するのは効果がある」と、研究者は指摘している。

症状が改善したらGLP-1受容体作動薬の投与量を徐々に減らす治療を実施

 減量プログラムに参加している患者にGLP-1受容体作動薬(セマグルチド)を投与し、食事や運動などの生活スタイルの改善にも重点を置き、症状が改善したら投与量を徐々に減らす治療により、目標体重を達成するのは可能という研究が、5月にイタリアのベネチアで開催された欧州肥満学会(ECO)の年次学術集会で発表された。

 GLP-1受容体作動薬が低用量であっても高用量であっても、同様の効果を得られ、ゆっくりと減量することで、減らした体重のリバウンドを抑制できるという。

 研究は、デンマークのコペンハーゲン大学およびコペンハーゲンとロンドンを拠点に医師による減量プログラムを提供しているEmbraクリニックのHenrik Gudbergsen氏らによるもの。

 GLP-1受容体作動薬は、主に肥満症やインスリン抵抗性を主徴とする2型糖尿病に対して用いられており、血糖改善効果に加え、減量効果、食欲と空腹感の軽減、胃からの食物の排出を遅らせ食後の満腹感を高める作用が知られており、糖尿病関連腎臓病(DKD)や心血管疾患に対する付加的なベネフィットも報告されている。

 一方、同剤は下痢、吐き気、嘔吐、めまい、頭痛などの副作用を引き起こす可能性もあり、薬の服用を中止する患者は少なくなく、それによる体重のリバウンドは課題になっている。

 「患者にGLP-1受容体作動薬の投与に並行して、食事と運動の指導を行い、食事に関連するメンタルサポートを提供することで、減らした体重のリバウンドの可能性を低下できることが示された。GLP-1受容体作動薬をゆっくりと減量するのは効果がある」と、Gudbergsen氏は指摘している。

 「より低用量の使用は、患者にとって安価な治療になり、副作用が少なくなり、GLP-1受容体作動薬の在庫逼迫の解消にも役立つ」としている。

 研究グループは今回、デンマークおよび英国の肥満症のある2,246人の患者(女性 79%、年齢中央値 49歳、BMI中央値 33.2、体重中央値 97kg)を対象に、体重管理プログラムを提供した。26週間後、64週間後、76週間後に参加していた患者の数は、それぞれ1,392人、359人、185人だった。

 標準的な投与スケジュールでは、セマグルチドの低用量投与(初回は週に1回0.25mg)から開始し、4週間ごとに16週間増量し、オゼンピックでは2mg、ウィゴビーでは2.4mgの最大用量まで増量した。さらに治療が終了するまで、副作用を最小限に抑えるために個々の患者に合わせて投与量を調整した。

 最低用量を投与することを優先し、減量の進行が止まった場合に増量を考慮した。毎週の体重の0.5%超の減量を維持し、管理可能なレベルの副作用や空腹感を経験した場合は、既存の用量を継続した。セマグルチドの平均最大用量は0.77mgだった。

 その結果、体重減少の平均は64週目で14.8%(14.8kg)、76週目で14.9%(14.9kg)だった。プログラム中、患者は標準的な治療スケジュールで使用されるセマグルチドの約3分の1の量の(64週目で推奨累積用量の36.1%、76週目で34.3%)を使用した。

 さらに、治療開始時のBMIや使用したセマグルチドの用量に関係なく、患者の体重減少は同様であることも示された。副作用には吐き気、嘔吐、腹痛など、軽度で一時的なものだった。

 なおプログラムは、健康的な食事や運動量の増加を支援する保健指導、減量に対する心理的障壁の克服に関する栄養士からのアドバイス、アプリを通じた医師・看護師・心理士によるサポート、セマグルチド(OzempicあるいはWegovy)の投与などが含まれていた。

GLP-1受容体作動薬の投与量を漸減しながら生活スタイル改善を促すと空腹感や満腹感を管理しやすくなる

 「今回の結果は、初期のBMIや使用したGLP-1受容体作動薬の投与量に関係なく、減量は達成可能であることを示している」と、Gudbergsen氏は述べている。

 「GLP-1受容体作動薬を漸減した患者は、最初の26週間は安定した体重を維持した。生活スタイルの改善と減量に関するサポートを組み合わせることで、患者はGLP-1受容体作動薬をやめた後の体重のリバウンドを回避できることが示された」としている。

 2,246人の患者のうち353人(83%が女性、年齢中央値49歳、BMI中央値31.5、平均体重92kg)が、目標体重に達した後に、セマグルチドの減量を開始した。9週間の減量期間中の体重の平均減少は2.1%だった。

 うち240人がセマグルチドの投与量がゼロになるまで漸減した。85人の参加者については、ゼロまで漸減してから26週間後のデータを取得し、断薬後の体重の平均減少は1.5%で、体重はリバウンドすることなく安定していた。

 さらに46人がセマグルチドの投与を中止後に再開した。薬の中止から再開までの体重の平均増加は1.3%だった。

 「GLP-1受容体作動薬の投与をやめると、患者の食欲は戻り、とくに投与を突然やめると、食欲を抑えるのが難しくなる可能性がある。しかし、投与量をゆっくりと減らしながら、健康的な生活スタイル行動や食習慣に対する意識と理解を高めていけば、空腹感や満腹感をより管理しやすくなり、健康的な体重を維持することが容易になると考えられる」と、Gudbergsen氏は指摘している。

 「最大用量を減らし、減量プログラム全体を通じてサポートを提供することで、患者は生活スタイル改善に心から取り組む必要性が高まり、減量と体重維持に役立つと考えられる」としている。

Is Coming Off Semaglutide Slowly The Key To Preventing Weight Regain? (欧州肥満学会 2024年5月11日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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