2型糖尿病は4つのサブタイプに分けられる CGMのデータをAIが解析 より的確な治療・予防が可能に
2型糖尿病の患者は、肥満との関連、発症年齢、その他の特徴により、4つのサブタイプに分けられるという。
その生理学的な4つサブタイプは、▼筋肉や肝臓のインスリン抵抗性、▼β細胞の減少(インスリン分泌能の低下)、▼インクレチン分泌能の低下や作用障害――により規定される。
「糖尿病治療での活用が増えているCGMのデータをAIで解析することで、患者への支援をより適切に行えるようになり、医療へのアクセスの向上も期待できる」と、研究者は述べている。
2型糖尿病は4つのサブタイプに分けられる 薬剤選択などに活用
2型糖尿病の患者は皆同じではなく、肥満との関連、発症年齢、その他の特徴により、4つのサブタイプに分けられると、米スタンフォード大学医学部が発表した。研究成果は、「Nature Biomedical Engineering」に掲載された。
研究グループは、持続血糖値モニター(CGM)のデータを使用し、2型糖尿病のサブタイプを自動的に判定する人工知能(AI)ベースのアルゴリズムも開発した。
その生理学的な4つサブタイプは、▼筋肉や肝臓のインスリン抵抗性、▼β細胞の減少(インスリン分泌能の低下)、▼インクレチン分泌能の低下や作用障害――により規定される。
このアルゴリズムは、たとえば2型糖尿病患者の薬物療法での薬剤選択に役立てたり、前糖尿病(prediabetes)では血糖値が警告レベルに達した場合、食事や運動などのライフスタイルの改善を支援するといった利用ができるという。
「米国の人口の13%に相当する約4,000万人が糖尿病と診断されており、9,800万人が前糖尿病という現状がある。2型糖尿病をCGMのデータによりAIが判別する技術の開発は、糖尿病治療に革命をもたらす可能性がある」と、同大学W.アッシャーマン遺伝学部のMichael Snyder教授は述べている。
「糖尿病全体の95%を占める2型糖尿病の病態は複雑であり、その生理学的特徴により細分化できる。個人の糖尿病の根本的な生理機能を特定することで、薬物療法を最適化し、心臓血管、腎臓、肝臓、眼などの合併症や、他の関連疾患のリスクをより深く理解することが可能になる」と、同大学内分泌学部のTracey McLaughlin教授は言う。
研究グループは、糖尿病の既往がなく、空腹時血糖値が126mg/dL未満の56人の成人を、正常血糖群(33人)と前糖尿病群(21人)に分け、米国糖尿病学会(ADA)の定めたHbA1cによる2型糖尿病の基準[HbA1c<5.7%、5.7~6.4%、≥6.5%]に登録した。
次に、機械学習のアプローチを用いて、同大学医学部の臨床トランスレーショナル リサーチ ユニット(CTRU)で検査されたOGTTのグルコース曲線の形状と、CGMを使用して被験者に自宅で測定してもらったデータにもとづき、代謝サブタイプを区別できるかを検討した。
その結果、開発したアルゴリズムで解析した、CGMのデータによる2型糖尿病のサブタイプの予測は、臨床データや代謝などのバイオマーカーと比較して精度は約90%に上り、従来の代謝検査よりも正確性が高いことが示された。
「糖尿病治療での活用が増えているCGMは、血糖変動をモニターすることができ、糖代謝についてより詳しく情報を得ることができる。そのデータをAIで解析することで、患者は適切に行動できるようになり、医療へのアクセスの向上も期待できる」と、研究者は述べている。
「たとえば、まだ2型糖尿病と診断されていない人が、実はインスリン抵抗性はあるという場合に、それを知ることで適切な生活改善を支援することなどが可能性になる。インスリン抵抗性のある前糖尿病の段階で、心臓病や脂肪肝疾患などさまざまな健康リスクが発生している」としている。
Researchers use AI to help predict and identify subtypes of Type 2 diabetes from simple glucose monitor (スタンフォード大学医学部 2025年1月7日)
Prediction of metabolic subphenotypes of type 2 diabetes via continuous glucose monitoring and machine learning (Nature Biomedical Engineering 2024年12月23日)