ロスバスタチンは糖尿病リスクが高い アトルバスタチンと比較 全死因死・心筋梗塞・脳卒中などは同等

2023.11.02
 広く使用されているスタチンであるロスバスタチンとアトルバスタチンを3年間使用し比較した試験で、全死因死、心筋梗塞、脳卒中、血行再建の複合転帰については同等の有効性が示された。

 ロスバスタチン群では、平均LDLコレステロール値はわずかに低かったが、血糖降下薬の開始のハザード比は1.39、白内障手術については1.66となり、ロスバスタチンは糖尿病リスクが高いことが示された。

ロスバスタチンとアトルバスタチンを3年間使用し比較

 ロスバスタチンはアトルバスタチンに比べ、3年間の使用で2型糖尿病の発症リスクを高めることと関連していることが、韓国の延世大学病院心臓病科のYong-Joon Lee氏などの研究で示された。詳細は「BMJ」に掲載された。

 広く使用されているスタチンであるロスバスタチンとアトルバスタチンは、ともに肝臓のコレステロール合成を阻害することで、血液中のコレステロールを低下させる作用があり、冠動脈疾患のある患者の心筋梗塞、脳卒中、死亡リスクを減少する効果が認められている。

 冠動脈疾患を有する成人でのロスバスタチンとアトルバスタチンの長期の使用による有効性と安全性を比較した試験はこれまでほとんどなかった。

 研究グループは、韓国の12の病院で実施された多施設試験「LODESTAR試験」の2016年9月~2019年11月のデータを解析。対象となったのは、冠動脈疾患のある成人4,400人(平均年齢65歳、女性28%)で、ロスバスタチン(n=2,204)、あるいはアトルバスタチン(n=2,196)の、いずれかを投与されるように無作為割り当てられた。98.7%(4,341人)が試験を終了した。

 主要アウトカムは、全死因死、心筋梗塞、脳卒中、または冠動脈血行再建術の3年間の複合で、副次的アウトカムは、糖尿病の新規発症、心不全による入院、深部静脈血栓症あるいは肺血栓塞栓症、末梢動脈疾患に対する血管内血管再生、白内障手術などだった。

 その結果、主要アウトカムは、ロスバスタチン群で8.7%、アトルバスタチン群で8.2%で発生した[ハザード比 1.06、95%信頼区間 0.86~1.30、P=0.58]。

 ロスバスタチン群とアトルバスタチン群の比較では、全死因死[2.6% 対 2.3%]、心筋梗塞[1.5% 対 1.2%]、脳卒中[1.1% 対 0.9%]、血行再建[5.3% 対 5.2%]などでは有意差はなく、期間中の平均LDLコレステロール値は、ロスバスタチン群の方がアトルバスタチン群よりもわずかに低かった[32mg/dL 対 34mg/dL]。

 副次的アウトカムでは、ロスバスタチン群では糖尿病の新規発症および血糖降下薬の開始[7.2% 対 5.3%、ハザード比 1.39、95%信頼区間 1.03~1.87、P=0.03]、白内障手術[2.5% 対 1.5%、同 1.66、同 1.07~2.58、P=0.02]の発生率がそれぞれ高かった。他の安全性エンドポイントは2つの群で差がなかった。

 「ロスバスタチンとアトルバスタチンは、冠動脈疾患のある患者で、3年以内の全死因死、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合ポイントで同等の有効性を示した」と、研究者は述べている。

 「ロスバスタチンは、LDLコレステロール値をより低下させたが、血糖降下薬の開始や白内障手術に関しては、新規発症リスクが比較的高いことと関連していた」としている。

 研究者は「今回の試験にはアジア人参加者のみが含まれており、2種類のスタチンの長期効果を調べるのに3年間の研究期間は比較的短い可能性がある」など、いくつかの限界があることを認めている。

 そのため、「結果は慎重に解釈されるべきであり、より長期にわたる追跡調査をともなう調査が必要」としている。

New study sheds light on long term effectiveness and safety of two widely used statins (BMJ 2023年10月18日)
Rosuvastatin versus atorvastatin treatment in adults with coronary artery disease: secondary analysis of the randomised LODESTAR trial (BMJ 2023年10月18日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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