DPP-4阻害薬の副作用「類天疱瘡」を解明 特定の白血球型をもつ患者で顕著 より副作⽤の少ない治療法で対処が可能
DPP-4阻害薬が関連する⽔疱性類天疱瘡は通常とは異なる特徴を有することを解明
類天疱瘡は、自らの免疫が皮膚のタンパク質を攻撃してしまう⾼齢者に多い自己免疫疾患で、⾼齢者に多く、表⽪と真⽪の境界部にある基底膜にある接着因⼦の構成タンパクであるBP180やBP230に対する⾃⼰抗体が産⽣されることにより⽣じるが、なぜ⾃⼰抗体ができるかはまだ分かっていない。
2型糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬を内服中の患者が、⽔疱性類天疱瘡の発症頻度が⾼いことが分かっているが、DPP-4阻害薬が関連する⽔疱性類天疱瘡と通常の⽔疱性類天疱瘡が、臨床的、病態的にどう異なるかもよく分かっていなかった。
北海道大学などはこれまでに、DPP-4阻害薬の服用によって生じた「非炎症型水疱性類天疱瘡」患者の8割以上が、特定の白血球型である「HLA-DQB1*03:01」というHLA遺伝子をもつことを明らかにしている。
DPP-4阻害薬の服用による水疱性類天疱瘡例では、紅斑が少ない「非炎症型」が70%と大半を占めた。DPP-4阻害薬の服用者に生じた水疱性類天疱瘡例の皮膚症状や自己抗体を調べ、HLA遺伝子(HLADQB1*03:01)の保有率を解析した結果、「非炎症型」のDPP-4阻害薬による水疱性類天疱瘡の患者では86%に上り、一般的な日本人の18%や、DPP-4阻害薬を服用している2型糖尿病患者の31%に対し高頻度であることを突き止めた。
今回の研究では、DPP-4阻害薬が関連する⽔疱性類天疱瘡では、紅斑の少ない⾮炎症型を⽰す例が多く、⾎中の⾃⼰抗体(抗BP180NC16a抗体)や好酸球数が少ないことを明らかにした。
また、標準的な治療法のひとつであるステロイド内服を必要とする例が少なく、ステロイド内服を要する例でも、通常の⽔疱性類天疱瘡と⽐較し、より早期に漸減することが可能だった。これらの特徴のうち、好酸球数やステロイド内服を必要とする割合の違いは、HLA-DQB1*03:01を有する群でより顕著になった。
さらに、通常の⽔疱性類天疱瘡では、⾎中の好酸球数が⽪膚の⽔疱/びらんや紅斑の重症度と正の相関関係を⽰した⼀⽅で、DPP-4阻害薬が関連する⽔疱性類天疱瘡では、⾎中の好酸球数と⽪膚の紅斑の重症度のみ正の相関を⽰し、⽔疱/びらんとは相関関係が⽰されなかった。興味深いことに、DPP-4阻害薬が関連する⽔疱性類天疱瘡でのみ、抗全⻑BP180抗体とびらん/⽔疱の重症度が正の相関関係を⽰したとしている。
研究グループは今回、北海道⼤学病院⽪膚科⽔疱症外来の患者のうち、⽔疱性類天疱瘡と診断された205人を対象に、⽔疱性類天疱瘡の診断時にDPP-4阻害薬を服⽤していた患者を「DPP-4阻害薬が関連する⽔疱性類天疱瘡」とし、DPP-4阻害薬を服⽤していない患者と臨床的特徴、検査結果、治療経過について⽐較検討した。
「今回の研究結果は、DPP-4阻害薬が関連する⽔疱性類天疱瘡と、通常の⽔疱性類天疱瘡は、発症機序や病態が異なる可能性があることを⽰しており、より副作⽤の少ない治療法での対処が可能な例が多いことが分かった。また、抗BP180NC16a抗体以外の抗体が病態に関与し、⽔疱/びらんの形成に好酸球の寄与が少ない可能性があることが⽰唆された。今後の病態の解明やより負担の少ない適切な治療の選択につながる⼀助となることを期待している」と、研究者は述べている。
研究は、北海道⼤学⼤学院医学研究院の⽒家韻欣客員研究員、⽒家英之教授らと、岐⾩⼤学⼤学院医学系研究科の岩⽥浩明教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Academy of Dermatology」にオンライン掲載された。
北海道⼤学⼤学院医学研究院
Clinical characteristics and outcomes of dipeptidyl peptidase-4 inhibitor-associated bullous pemphigoid patients: A retrospective study (Journal of the American Academy of Dermatology 2024年10月20日)
DPP-4阻害薬による類天疱瘡への適切な処置について (医薬品医療機器総合機構 2023年7月)