メタボのリスク要因を⾮肥満者と肥満者で⽐較 加齢・男性・飲酒量・体重増加が⾼リスク要因 4.7万⼈の特定健診データを分析
肥満でない人も⽣活習慣改善は必要 4.7万⼈の特定健診データを分析
メタボリックシンドローム(MetS)は、⼼疾患や脳⾎管疾患などの循環器疾患を発症させる危険因⼦が重複した病態をさし、その定義は国や機関によって異なる。
⽇本では、内臓脂肪の蓄積を重視する観点から腹部肥満を判定の必須条件とし、加えて⾼⾎圧、⾼⾎糖、脂質異常のいずれかを複数保有する状態をMetSと定義している。そして、40~74歳を対象に特定健康診査を⾏い、体格指数(BMI)と腹囲で肥満者を判定し、肥満者がMetS構成因⼦を複数保有する場合には、⽣活習慣の改善を積極的に⽀援する特定保健指導を実施している。しかし、⾮肥満者は対象外となっている。
⼀⽅で、指導の対象外である⾮肥満者でも、MetS構成因⼦を複数保有していると、循環器疾患の死亡率や発症率が⾼いことが多くの研究で報告されている。
⾮肥満者についても、MetS構成因⼦を複数保有する状態の改善や予防対策が必要とされているが、⾮肥満者がMetS構成因⼦を複数保有することに関係する要因については、⼗分に明らかにされていない。
そこで筑波大学の研究グループは、⽇本⼈の特定健康診査データ(4万7,172⼈、40~64歳)を⽤いて、⾮肥満者と肥満者それぞれについて、MetS構成因⼦を複数保有するリスク要因を検討した。
その結果、⾮肥満者および肥満者いずれも、▼加齢、▼性別(男性)、▼20歳時から10kg以上の体重増加、▼喫煙、▼歩⾏速度が遅いこと、▼⾷べる速さが速いこと、▼1⽇あたりの飲酒量が多いことが、MetS構成因⼦の複数保有に関わるリスク要因であることが示された。
また、⾮肥満者は肥満者に⽐べ、▼加齢、▼男性、▼1⽇あたりの飲酒量が多いこと、▼20歳時から10kg以上の体重増加が、⾼リスク要因であることが⽰唆された。
⾮肥満者と肥満者を比較
加齢・男性・飲酒量・体重増加が⾮肥満者の⾼リスク要因 運動不足は関連なし
研究は、筑波⼤学体育系の武⽥⽂教授らによるもの。研究グループは、⽇本の製造業5社の健康保険組合の特定健康診査のデータを⾮肥満者と肥満者に分けて解析し、それぞれの群についてMetS構成因⼦を複数保有することに関係する要因は何かを分析した。
20歳時から10kg以上の体重増加および⽣活習慣に関するデータに⽋損のない4万7,172⼈分(40歳以上64歳以下)を分析対象とし、肥満およびMetS構成因⼦(⾼⾎圧、⾼⾎糖、脂質異常)については、「標準的な健診・保健指導プログラム」(厚⽣労働省)にもとづき判定した。
「⾮肥満者」(2万8,720⼈)、「肥満者」(1万8,452⼈)の群ごとにMetS構成因⼦の複数保有(MetS≦1:0、MetS≧2:1)と属性、20歳時から10kg以上の体重増加、⽣活習慣との関係を多重ロジスティック回帰分析(強制投⼊法)により分析した
その結果、両群ともにMetS構成因⼦の複数保有は、性別(男性)、年齢、20歳時から10kg以上の体重増加、喫煙、歩⾏速度の遅さ、⾷べる速さ、1⽇あたりの飲酒量の多さと正の関係を、⼣⾷後の間⾷や飲酒の頻度と負の関係が認められた。
リスク要因のオッズ⽐(OR)は⾮肥満者が肥満者より⾼い傾向にあり、とくに50代(⾮肥満OR 3.09、肥満OR 1.88)、および60~64歳(⾮肥満OR 5.93、肥満OR 2.81)、男性(⾮肥満OR 2.67、肥満OR 1.91)、1⽇あたりの飲酒量「2~3合未満」(⾮肥満OR 1.81、肥満OR 1.44)、および「3合以上」(⾮肥満OR 2.50、肥満OR1.52)、20歳時から10kg以上の体重増加(⾮肥満OR 1.67、肥満OR 1.45)で、⽐較的⾼いオッズ⽐がみられた。
⼀⽅、定期的な運動の⽋如は、「肥満者」群のみでMetS構成因⼦の複数保有と正の関係が認められた。
多量飲酒と20歳時からの体重増加に注意が必要
「⾮肥満者でのMetS構成因⼦の複数保有のリスク要因は、加齢、性別(男性)、20歳時から10kg以上の体重増加、喫煙、歩⾏速度が遅いこと、⾷べる速度が速いこと、1⽇あたりの飲酒量が多いことであり、これらの要因はいずれも肥満者と共通することが明らかとなりました。また、⾮肥満者は肥満者よりも、加齢、男性、1⽇あたりの飲酒量が多いこと、20歳時から10kg以上の体重増加が、⾼リスク要因であることが⽰唆されました」と、研究グループでは述べている。
⾮肥満者のMetS構成因⼦の複数保有のリスク要因は、肥満者と共通していることが明らかになった。ただし、⾮肥満者は肥満者に⽐べて、加齢および男性であることのリスクが⾼いことに注意が必要で、1⽇あたり多量の飲酒と若年期からの⼤幅な体重増加を回避することが重要だと考えられる。
「今後、⽣涯を通じた健康づくりと⽣活習慣病の予防に向けて、肥満の有無にかかわらずMetS構成因⼦を複数保有する者への保健指導、ならびに40歳未満の若年層を対象に痩せ体型の男性の体重管理や適切な飲酒量に関する健康教育を実施していくことが望まれます」としている。
筑波⼤学体育系 武⽥⽂教授研究室
Risk factors for multiple metabolic syndrome components in obese and non-obese Japanese individuals(Preventive Medicine 2021年10⽉20⽇)