糖尿病・肥満症の治療薬のGLP-1受容体作動薬がアルコール摂取量を減らすのに有用 アルコール使用障害(AUD)による入院も減少

2024.12.03
 英国のノッティンガム大学が主導した研究により、糖尿病・肥満症の治療に使われるGLP-1受容体作動薬が、アルコール摂取量を減らす効果がある可能性が示された。

 東フィンランド大学とスウェーデンのカロリンスカ研究所による別の共同研究でも、GLP-1受容体作動薬の使用が、アルコール使用障害(AUD)患者の入院を減らすことに関連していることが示された。

 「GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病や肥満症以外にも将来的に、過度のアルコール摂取に対する潜在的な治療選択肢となる可能性がある。今後のランダム化比較試験でさらに検証する必要がある」と、研究者はコメントしている。

GLP-1受容体作動薬はアルコール摂取量を減らす可能性が29%高い
ノッティンガム大学

 英国のノッティンガム大学が主導した研究により、糖尿病・肥満症の治療に使われるGLP-1受容体作動薬が、アルコール摂取量を減らす効果がある可能性が示された。

 研究は、同大学医学部NIHRノッティンガム生物医学研究センターの消化器科の臨床助教授であるMohsen Subhani氏らによるもの。研究成果は、「eClinicalMedicine」に掲載された。

 研究グループは、GLP-1受容体作動薬が、アルコール摂取、アルコール健康障害、通院、アルコール刺激に対する脳の反応にどのように影響を及ぼすかどうかを調べた、2024年8月までに公開された2件のランダム化比較試験を含む6件の論文を検討した。対象となった患者は、8万8,190人(平均年齢 49.6歳、SD=10.5)で、うち3万8,740人(43.9%)はGLP-1受容体作動薬が投与された。

 286人を対象としたランダム化比較試験では、GLP-1受容体作動薬(エキセナチド)による24週間の治療後の30日間、プラセボと比較してアルコール摂取量は大幅に減少しなかった[大量飲酒日数 6.0(対照群の方が多い)、95%CI -7.4~19.4、p=0.37]。

 一方で、サブグループ解析では、肥満(BMI>30)の患者では肯定的な結果が示され、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)による、脳報酬中枢のキュー反応が有意に減少した。試験の二次解析では、デュラグルチド群ではプラセボ群と比較して、アルコール摂取量を減らす可能性が29%高かった[相対効果量 0.71、95%CI 0.52~0.97、p= 0.04]。

 観察研究では、DPP-4阻害薬の投与、無治療、および/またはベースラインでのアルコール摂取との比較では、GLP-1受容体作動薬ではアルコール関連の健康障害イベントが少なく、アルコール使用量が大幅に減少したことが示された。

 「GLP-1受容体作動薬が、とくにBMIが30を超える肥満者で、脳の報酬中枢を標的にすることで、アルコール摂取量を減らす効果が期待できることが示された。さらなる研究が必要となるが、GLP-1受容体作動薬が将来的に、過度のアルコール摂取に対する潜在的な治療選択肢となり、結果としてアルコール関連の死亡者数の減少につながる可能性がある」と、Subhani氏は指摘している。

アルコール使用障害(AUD)などの患者の入院を減少
東フィンランド大学、カロリンスカ研究所

 東フィンランド大学とスウェーデンのカロリンスカ研究所による別の共同研究でも、GLP-1受容体作動薬(セマグルチド、リラグルチド)の使用が、アルコール使用障害(AUD)患者の入院を減らすことに関連していることが示された。

 入院が減ったのは、アルコール関連、物質使用関連、身体疾患によるものだった。自殺未遂による入院との関連は示されなかった。

 研究は、東フィンランド大学精神医学科およびニウバニエミ病院のMarkku Lähteenvuo氏らによるもの。研究成果は、「JAMA Psychiatry」に掲載された。

 研究グループは、スウェーデン医療データに2006年1月~2023年12月に登録された、アルコール使用障害(AUD)あるいは物質使用障害(SUD)と診断された22万7,866人を対象に調査した。計13万3,210人(58.5%)がAUDによる入院を経験した。

 対象者のうち4,321人はセマグルチドが投与され、2,509人はリラグルチドが投与された。平均年齢(SD)は40.0(15.7)歳、男性が63.5%、追跡期間の中央値(IQR)は8.8年(4.0~13.3年)だった。

 その結果、セマグルチド群はAUDとSUDの両方の入院のリスクが低く、AUDの調整ハザード比(aHR)は0.64[95%CI 0.50~0.83]、SUDのaHRは0.68[同 0.54~0.85]だった。

 リラグルチド群でも入院リスクは低下し、AUDのaHRは0.72[同 0.57-0.92]、SUDのaHRは0.78[同 0.64-0.97]だった。

 また、両剤とも身体疾患による入院リスクの低下と関連しており、セマグルチドのaHRは0.78[同 0.68~0.90]、リラグルチドのaHRは0.79[同 0.69~0.91]となったが、自殺企図とは関連しておらず、セマグルチドのaHRは0.55[同 0.23~1.30]、リラグルチドのaHRは1.08[同 0.55~2.15]となった。

 「今回の研究のアイデアは、GLP-1受容体作動薬の投与を開始してからアルコール摂取量が減ったという過去の観察研究の結果から生まれたものだが、GLP-1受容体作動薬を使用した場合の入院リスクは、AUDに対してすでに承認されているオピオイド拮抗薬であるナルトレキソンを使用した場合よりも低かった」と、Lähteenvuo氏は指摘する。

 「GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病や肥満症以外にも、AUDやSUDの治療にも役立つ可能性がある。これらの知見は、今後のランダム化比較試験でさらに検証される必要がある」としている。

Diabetes medication may be effective in helping people drink less alcohol (ノッティンガム大学 2024年11月14日)
Association between glucagon-like peptide-1 receptor agonists use and change in alcohol consumption: a systematic review (EClinicalMedicine 2024年11月14日)
Obesity-fighting drugs may reduce alcohol consumption in individuals with alcohol use disorder (東フィンランド大学 2024年11月13日)
Repurposing Semaglutide and Liraglutide for Alcohol Use Disorder (JAMA Psychiatry 2024年11月13日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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