【米国糖尿病学会2023】経口セマグルチドの試験で2型糖尿病と肥満症の管理で肯定的な結果 より血糖値を下げ体重減少を促進

2023.07.06
第83回米国糖尿病学会(ADA)年次学術集会

 1日1回投与の経口GLP-1受容体作動薬であるセマグルチド50mgにより、68週間後に15.1%の体重減少を達成したという、OASIS1研究の結果が発表された。

 25mgと50mgという高用量の経口セマグルチドの投与は、より血糖値を下げ、体重減少を促進する効果があることも報告された。研究成果はともに、「Lancet」に掲載された。

経口セマグルチド50mgの1日1回投与により体重減少の優越性

 OASISは、肥満患者を対象とした、経口GLP-1受容体作動薬「セマグルチド」の25mgおよび50mgの1日1回投与による第3相臨床開発プログラム。

 経口セマグルチドは、米国では2型糖尿病治療薬として利用されており、最大用量は14mgだが、OASIS1研究では、肥満症の治療およびより高い用量である50mgの両方について検討された。

 肥満または体重に関連した合併症を1つ以上有する過体重の成人を対象とした、体重管理のための経口GLP-1受容体作動薬「セマグルチド50mg」の1日1回投与とプラセボ投与の有効性および安全性を比較した68週間の試験で、いずれの投与群でも、生活習慣の介入を並行して行った。

 この二重盲検無作為化比較第3相試験には、アジア、ヨーロッパ、北米の50の外来診療所から合計667人の参加者が登録された。参加者は、体重関連の合併症および/または併存疾患をともない、BMIは30以上または27以上だったが、2型糖尿病の診断は受けていない。

 研究の共同主要評価項目は、経口セマグルチド50mg投与による、プラセボと比較した場合の68週目の体重変化率と5%以上の体重減少の達成。

 その結果、同試験の主要評価項目である体重減少について、経口セマグルチド50mgの1日1回投与により、プラセボ投与と比較し統計的に有意な減少(優越性)が示された。研究結果は、「Lancet」に掲載された。

 治療方針estimandに対する解析では、経口セマグルチド50mgの投与群では15.1%の体重減少を達成し(プラセボ投与群では2.4%)、マイナス12.7パーセントポイントの有意な推定治療差が示された[95%CI -14.2〜-11.3、p<0.0001]。*
* 治験薬estimand(すべての被験者が治療を遵守した場合の治療効果)にもとづく。

 さらに、経口セマグルチド50mgにより68週間後に5%以上の体重減少を達成した割合は、プラセボと比較して85%対26%となり、10%以上の体重減少は69%対12%、20%以上の体重減少は34%対3%になった。

 「皮下注射が可能な薬剤の処方に加えて、経口投与が可能なセマグルチドが選択肢に加わった。食事療法と運動療法だけで十分な治療成果をえられない患者に対し、患者にもっとも適した方法を選べるようなったのは大きい。肥満者の減量は身体機能の改善と、日常でのQOLの向上につながる」と、コペンハーゲン大学ゲントフテ病院のFilip K Knop教授は述べている。

高用量の経口セマグルチドはより効果的な血糖管理と体重減少に関連

 より高用量の経口セマグルチドの投与は、血糖管理と体重減少に関連することが、ノースカロライナ大学医学部などの研究で示された。1日1回服用の経口セマグルチドの25mgと50mgの投与は、最低用量の14mgと比較し、より血糖値を下げ、体重減少を促進する効果があるとしている。*
* 日本では、経口セマグルチドは2型糖尿病を効能・効果とし、3mg、7mg、14mgの3つの用量が承認されている。

 「低用量のGLP-1受容体作動薬は、HbA1cを低下させるのに非常に強力だが、その一方で、体重減少の効果が高いのは高用量の方だ。経口セマグルチド50mgの投与により、患者は平均して8kgの減量を達成し、これは最低用量による減量のほぼ2倍に相当する」と、同大学臨床科学研究所の共同所長であるJohn Buse氏は言う。

 今回の研究では、肥満症の治療法として経口GLP-1受容体作動薬の使用を推進している他の研究と一致した結果が示されたとしている。研究結果は、「Lancet」に掲載された。

 研究では、計1,606人(平均年齢58.2歳、男性58.3%)を無作為に3群に分け、1日1回投与の経口セマグルチドを用量をそれぞれ14mg、25mg、50mgに設定し、52週間投与した。ベースラインでは、平均HbA1c値は9.0%、平均体重は96.4kgだった。

 その結果、52週目のHbA1cの平均変化量は、経口セマグルチド14mgではマイナス1.5パーセントポイント(SE0.05)、25mgではマイナス1.8パーセントポイント(同0.06)だった[推定治療差[ETD] -0.27、95%CI-0.42~-0.12、p=0.0006]。さらに、経口セマグルチド50mgではマイナス2.0パーセントポイント(同0.06)だった[ETD-0.53、-0.68~-0.38、p=0001]。

 セマグルチドは食欲を抑制することで体重減少ももたらす。52週目の体重減少は、経口セマグルチド14mgではマイナス4.54kg、25mgでは6.71kg、50mgでは7.94kgとなり、高用量の50mgでより効果が高いことが示された。

 有害事象は、経口セマグルチド14mg群で76%、25mg群で79%、50mg群で80%で、それぞれ報告された。ほとんどは軽度から中等度の胃腸障害(胃の膨満感、吐き気、嘔吐、下痢、および/または便秘)で、経口セマグルチド25mgおよび50mgの方が、14mgよりも高い頻度で発生した。

第83回米国糖尿病学会(ADA)年次学術集会
Late Breaking Weight Loss Innovations: New Drug Therapies Shown to Offer Positive Outcomes for Obesity and Type 2 Diabetes Management (米国糖尿病学会 2023年6月25日)
Oral semaglutide 50 mg taken once per day in adults with overweight or obesity (OASIS 1): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial (Lancet 2023年6月25日)
Higher Doses of Oral Semaglutide Improves Blood Sugar Control and Weight Loss (ノースカロライナ大学医学部 2023年6月26日)
Efficacy and safety of once-daily oral semaglutide 25 mg and 50 mg compared with 14 mg in adults with type 2 diabetes (PIONEER PLUS): a multicentre, randomised, phase 3b trial (Lancet 2023年6月25日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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