糖尿病黄斑浮腫に対する「ベオビュ」の第3相試験2年目の結果 1年目と一致する視力改善 多数が滲出液の消失

2022.02.10
 ノバルティスは、第3相KESTREL試験の2年目(100週目)のトップライン結果を発表した。同試験では、糖尿病黄斑浮腫(DME)による視力障害を有する患者を対象に「ベオビュ」(一般名:ブロルシズマブ)6mgの安全性および有効性を評価した。

 2年目の結果では、DME患者の負担となっている頻回治療に対処しながらも、1年目で示された視力改善、滲出液減少の所見および安全性プロファイルが確認された。

糖尿病黄斑浮腫による視力障害を有する患者に対するベネフィットを検証

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 糖尿病黄斑浮腫(DME)は、糖尿病患者によくみられる微小血管合併症。先進国における成人の失明原因の第1位であり、1型糖尿病患者の12%、2型糖尿病患者の28%が罹患しているという報告がある。

 糖尿病にともなう高血糖は、眼のなかの細い血管を傷つけることで滲出液の原因になる。この損傷により、血管内皮増殖因子(VEGF)が過剰に産生される。DME患者のVEGF濃度が上昇すると、VEGFは異常な漏出性の血管の増殖を刺激する。その結果、黄斑部に滲出液(浮腫)がたまり、視力障害や失明の原因になる。黄斑は網膜のなかで鮮明な中心視力をになう部位であり、DMEの初期症状には中心視力のかすみ、視覚の歪み、色覚異常などがあらわれるが、早期段階では無症状で進行することもある。

 一方、「ベオビュ」(一般名:ブロルシズマブ)6mgは、滲出型加齢黄斑変性(AMD)の治療薬として、米国・EU・英国・日本・カナダ・オーストラリアを含む70ヵ国以上で承認されている。さらに、滲出型AMD、糖尿病黄斑浮腫(DME)および増殖糖尿病網膜症(PDR)を有する患者を対象としてブロルシズマブの有効性を検討する臨床試験が現在実施されている。

 KESTREL試験およびKITE試験は、DMEによる視力障害を有する患者を対象とした「ベオビュ」とアフリベルセプトの安全性および有効性を比較検討する2年間の国際共同無作為化二重盲検第3相臨床試験。

 両試験には、36ヵ国から926名の患者が参加した。両試験の導入期では、「ベオビュ」群の患者に6週間ごとに計5回投与した。アフリベルセプト群は添付文書の記載にしたがい、試験開始時に4週間隔で計5回投与された。導入期投与後、「ベオビュ」群の患者は引き続き12週間間隔投与を受け、疾患活動性を示した患者は試験の残りの期間、8週間ごとの投与に移行した。KITE試験では72週目に、12週毎に投与されていた「ベオビュ」患者は16週毎の投与まで延長することができ、8週毎に投与された患者は12週毎まで延長することができた。

 KESTREL試験の2年目の結果は、最高矯正視力(BCVA)の維持および中心サブフィールド厚の持続的減少(CSFT)など、1年目の結果と一致していた。さらに、網膜内および/または網膜下の滲出液(IRF/SRF)を有した「ベオビュ」投与患者は、アフリベルセプト投与患者よりも数値的に低値を示した。CSFTは網膜内の滲出液の重要な指標であり、滲出液は疾患活動性の重要なマーカーとなる。

 同試験における眼内炎症(IOI)の発現率は、「ベオビュ」6mg群で4.2%、「ベオビュ」3mg群で5.3%、アフリベルセプト群で1.1%だった。網膜血管炎(RV)の発現率は、「ベオビュ」6mgで0.5%、「ベオビュ」3mgで1.6%、アフリベルセプトで0%だった。網膜血管閉塞(RO)の発現率は、「ベオビュ」6mgおよび3mgの両群で1.6%であったのに対し、アフリベルセプト群では0.5%だった。IOIの大部分は管理可能であり、臨床的な合併症を発症することなく消失した。2年目(52から100週目)に血管イベントは報告されなかった。KESTREL試験の2年目に新たなRVイベントは報告されなかった。2年目に報告された4件の新規ROのうち、いずれもIOIまたはRVと関連していなかった。

 「ベオビュ」投与患者の40%以上が12週間隔投与を維持し、導入期後の最初の12週間隔投与を完了した患者の70%が2年目まで12週間隔投与を継続したことから、同剤はアフリベルセプトと比較して、より多くのDME患者に対し少ない注射回数で滲出液に対処できる可能性が示された。

 「DMEと診断される患者の平均年齢は48歳で、DMEは主に労働年齢の成人に影響をおよぼします。つまり、複数の糖尿病の合併症に加えて、視力を管理しなければならないことが、生産性の低下および雇用の不安定さにつながる可能性があります。KESTREL試験の2年目に観察された長期投与および滲出液消失から、ベオビュの導入期後12週間隔投与が、患者にとって疾患をより効果的に管理するのに役立つ可能性があることを示唆しています」と、Retina Consultants of TexasTMのリサーチディレクターであるDavid M Brown氏は述べている。

 DMEにおける「ベオビュ」の第3相臨床試験であるKITE試験の結果とともに、KESTREL試験の2年目の結果の詳細は、医学学会で今後発表される予定としている。

Brolucizumab for the treatment of visual impairment due to diabetic macular edema: 52-week results from the KESTREL & KITE studies (Investigative Ophthalmology & Visual Science 2021年6月)

ブロルシズマブ(遺伝子組換え) 添付文書 インタビューフォーム (医薬品医療機器総合機構)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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