腎臓病の[尿アルブミン・クレアチニン比 (UACR)]測定の費用対効果は高い アルブミン尿の評価は腎臓病克服のために重要 日本腎臓病協会など
日本腎臓病協会とバイエル薬品は共同研究を行い、慢性腎臓病(CKD)の診断で、アルブミン・クレアチニン比(UACR)によるアルブミン尿の評価は、CKDの診断・重症度の判定に必須であり、UACRは糖尿病の合併有無にかかわらず、ほかの指標と比べ費用対効果が高いことを明らかにした。
「日本では、糖尿病で尿アルブミン定量測定が保険適用されているが、現在まだ保険適用されていない非糖尿病患者への費用対効果も良いことが明らかになった。腎臓病の克服のために、日本も諸外国と同じように、糖尿病の合併有無にかかわらず、尿アルブミン定量測定が保険適用されることが重要」と、研究者は述べている。
アルブミン・クレアチニン比(UACR)の費用対効果は高いことを確認
日本腎臓病協会(理事長:柏原直樹・川崎医科大学高齢者医療センター 病院長 特任教授)とバイエル薬品は共同研究を行い、慢性腎臓病(CKD)の診断で、アルブミン・クレアチニン比(UACR)によるアルブミン尿の評価は、CKDの診断・重症度の判定に必須であり、UACRは糖尿病の合併有無にかかわらず、ほかの指標と比べ費用対効果が高いことを明らかにした。
主な研究成果は次の通り――。
■ 2型糖尿病患者におけるUACRの医療経済評価 |
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2型糖尿病患者のUACRを定期的にチェックし、CKD患者の早期診断・治療介入を行うことは、尿検査をしない場合と比較して、費用対効果が高いことが示された。費用対効果の指標である増分費用効果比(ICER)は265万2,693円/質調整生存年(QALY)だった。 |
■ 非糖尿病患者におけるUACRの医療経済評価 |
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非糖尿病患者のUACRを定期的にチェックし、CKD患者の早期診断・治療介入を行うことは、尿検査をしない場合またはUPCRのチェックと比較して、費用対効果が高いことが示された。ICER(増分費用効果比)は196万6,433円/QALYだった。 |
※ICERは、医薬品や検査などの新たな医療技術により追加でかかる費用が、追加で得られる効果に見合っているかどうかを評価する指標。費用の増分を分子、治療効果の向上量を分母として計算し、ICERの値が小さいほど費用対効果が高いとみなされる。
日本の公的医療保険制度では、保険償還価格を設定する際のICER標準基準額が500万円/QALY以下に設定されていることから、研究結果は日本の医療環境下で費用対効果が高いと判断される。研究では、治療効果の指標については、QOL値の1つの指標であるQALYが使用された。
今回の研究について、川崎医科大学高齢者医療センター病院長 特任教授および日本腎臓病協会 理事長の柏原直樹氏は次のように述べている。
「日本では、糖尿病で尿アルブミン定量測定が保険適用されているが、現在まだ保険適用されていない非糖尿病患者への費用対効果も良いことが本研究により明らかになった。腎臓病の克服のために、日本も諸外国と同じように、糖尿病の合併有無にかかわらず、尿アルブミン定量測定が保険適用されることが重要だ」。
UACRをより適切に使用できるようにすることが望ましい
CKDの診断は、腎障害の指標、糸球体濾過量(GFR)低下のいずれか、または両方が3ヵ月を越えて持続することが要件となっている。腎障害の指標としてはとくに、尿タンパク・クレアチニン比(UPCR)が0.15g/gCr以上のタンパク尿、またはUACRが30mg/gCr以上のアルブミン尿の存在が重要となる。
また、CKDの重症度の判定でも、タンパク尿もしくはアルブミン尿の評価が必須であり、評価法としては尿アルブミン定量測定がゴールドスタンダードとされている。
日本の保険診療では、UACRを算出するために必要な尿アルブミン定量測定の保険請求が、糖尿病または糖尿病性早期腎症であり、微量アルブミン尿を疑う患者(糖尿病性腎症第1期または第2期)に対して行った場合に、3ヵ月に1回に限られている。
一方、諸外国ではCKD全般で尿アルブミン定量測定が行われている。CKDの定義や重症度分類も、国際的には尿アルブミン定量測定をもとに行わるが、日本では尿タンパク排泄量で代用せざるをえない状況となっている。
これを受けて、厚生労働省腎疾患政策研究事業「腎疾患対策検討会報告書に基づく対策の進捗管理および新たな対策の提言に資するエビデンス構築」研究班(代表:柏原直樹)は、「尿中アルブミン測定の診療報酬化」に取り組んだ。
日本腎臓病協会とバイエル薬品はこうした実態をふまえ、腎臓病対策の普及啓発に関する包括連携協定の一環として、CKDの診断にUACRがより適切に使用できるようにするため、2型糖尿病患者、非糖尿病患者それぞれを対象に、UACRの医療経済評価に関する研究を行った。
NPO法人 日本腎臓病協会
日本腎臓学会発作成の診療ガイドライン (一般社団法人 日本腎臓学会)
腎領域 (バイエルファーマナビ)
腎疾患対策検討会報告書に基づく対策の進捗管理および新たな対策の提言に資するエビデンス構築 (厚生労働科学研究成果データベース)