世界の1型糖尿病患者数は2040年までに2倍に増加 低所得国で新規診断が増えると予測

2022.10.20
2040年までに世界の1型糖尿病患者数は倍増する

 2021年から2040年にかけて、世界の1型糖尿病患者数は倍増し、とくに国民所得の低い国での新規診断が増加して疾病負担が大きくなるとする予測が発表された。シドニー大学(オーストラリア)のGabriel A. Gregory氏らの研究の結果であり、詳細は「The Lancet Diabetes & Endocrinology」に9月13日掲載された。

 2型糖尿病の患者数や疾病負担に関しては、国際糖尿病連合(International Diabetes Federation;IDF)が毎年のようにデータを公表し、各国・地域の公衆衛生政策に生かされている。一方、1型糖尿病の有病率や罹患率、平均余命、死亡率なども公衆衛生政策の立案に重要な情報であるが、それらの正確なデータは2型糖尿病に比べて非常に少ない。これを背景としてA. Gregory氏らは、現在入手可能なデータにもとづいて、2021年時点の世界201ヵ国・地域の有病率などを算出し、さらに2040年時点の予測値を推計した。

 この推計の基礎データとして、1型糖尿病の罹患率については97ヵ国、死亡率については37ヵ国から数値を入手可能だった。ランダムフォレスト回帰分析という手法で死亡率をモデル化し、生命表を使用して平均余命を計算。算出された数値は、15ヵ国の観察研究にもとづく有病率などのデータと対照し検証した。

 その結果、2021年時点の世界の1型糖尿病患者数は約840万人(95%不確定区間810~880万)であり、そのうち20歳未満が150万人(18%)、20~59歳が540万人(64%)、60歳以上が160万人(19%)と考えられた。また2021年の1年間で50万人の患者が新たに診断され、発症年齢は中央値29歳であり、3万5,000人の患者は未診断のまま発症から12ヵ月以内に死亡したと推計された。

 国民所得別にみると、患者の5人に1人(180万人)は低所得国または低中所得国の国民だった。2021年に診断された10歳児の平均余命は、低所得国では平均13年、高所得国では平均65年と計算され、大きな格差が認められた。

 2040年時点の予測値については、患者数が1350万~1,740万人と見積もられた。これは2021年比で60~107%増と、ほぼ倍増することを意味する。とくに低所得国および低中所得国で顕著な増加が予測された。

 これらの結果から、現時点において、1型糖尿病の治療リソースが限られている国では患者の早期死亡リスクが高いと解釈され、救命と延命のための施策の必要性があると考えられる。著者らは、「われわれの研究結果は、今後、世界の1型糖尿病患者数の増加が社会と医療制度に重大な影響を及ぼすことを示唆している。各国ごとに、インスリンや治療に必要なその他の資材への確実なアクセスを可能にすることを含めた、治療水準の向上が求められる。また、1型糖尿病の兆候に関する社会的認識を高め、発症後に100%診断が可能な体制を築くことが、今後数十年間で数百万人もの命を救うことにつながる」と語っている。

[HealthDay News 2022年9月27日]

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