NAFLDが2型糖尿病患者の重症低血糖リスクを高める BMI18.5未満ではリスクは1.71倍に

2022.03.17
NAFLDは重症低血糖リスクを高める

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が2型糖尿病患者の重症低血糖リスクを高めることを示すデータが報告された。延世大学校医科大学(韓国)のJi-Yeon Lee氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に2月23日掲載された。

 これまでの研究から、肝硬変が低血糖リスクに影響を与える可能性が示唆されている。ただし、肝硬変に至っていないNAFLDを有する2型糖尿病患者の低血糖リスクについては、十分明らかになっていない。これを背景としてLee氏らは、韓国の国民健康保険制度に基づく健診データ、および医療費請求データを用いた後方視的コホート研究を実施。NAFLDと2型糖尿病患者の重症低血糖との関連を検討した。

 解析対象は、2009~2012年に健診を受けた20歳以上の成人のうち、2型糖尿病と診断されている194万6,581人(男性57.8%)。NAFLDは脂肪肝指数(FLI)で判定し、重症低血糖は救急外来受診または入院を要する低血糖と定義した。

 2015年末までの追跡で〔追跡期間中央値5.2年(四分位範囲4.1~6.1年)〕、4万5,135人(2.3%)に、少なくとも1回の重症低血糖イベントが記録されていた。重症低血糖を来した患者はそうでない患者に比較して、高齢(67.9±9.9対57.2±12.3歳)で、BMIは低値(24.2±3.43対25.1±3.4)だった(いずれもP<0.001)。

 低血糖リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、喫煙・飲酒・身体活動習慣、過去3年以内の重症低血糖、インスリン・SU薬・グリニドの使用、高血圧・慢性腎臓病・心血管疾患の既往)で調整後、FLI60以上の患者は同30未満の患者に比較して以下のように、肥満の有無にかかわらず重症低血糖リスクが高いことが明らかになった。BMI18.5未満でハザード比(aHR)1.71(95%信頼区間1.02~2.88)、BMI18.5~23はaHR1.31(同1.18~1.45)、BMI23~25はaHR1.20(同1.12~1.29)、BMI25以上はaHR1.06(同1.01~1.12)。

 調整因子にBMIを含めた解析により、FLIと重症低血糖リスクとの間には、J字型の関連が認められた。例えばFLI第5十分位群の重症低血糖リスクは、第1十分位群に対してaHR0.86(同0.83~0.90)と有意に低い一方で、第10十分位群はaHR1.29(同1.22~1.37)であり、有意にハイリスクだった。サブグループ解析からは、前述のように低体重者でリスクが高いことのほかに、男性〔aHR1.17(同1.12~1.23)〕より女性〔aHR1.29(同1.23~1.36)〕で、リスクがより高いことも明らかになった(交互作用P<0.001)。

 著者らは、「2型糖尿病患者の低血糖リスクの評価に際しては、NAFLDの存在を考慮する必要がある」と述べている。

[HealthDay News 2021年3月7日]

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