ティーチバックによる療養指導で糖尿病患者の転帰改善

2020.12.17
 糖尿病患者への療養指導に「ティーチバック」という手法を用いることで、合併症のリスクや医療費も抑制可能であることが報告された。米フロリダ大学のYoung-Rock Hong氏らの研究結果であり、詳細は「Journal of the American Board of Family Medicine」11・12月号に掲載された。

 ティーチバックとは、治療に必要な情報をまず医療従事者が患者に伝え、次に患者に自分の言葉でそれを復唱してもらうという手法。患者が復唱できなかったり、内容が誤っていた場合には、別の言い方で説明をし直して、患者が理解したと確認できるまでこれを繰り返す。

 Hong氏らは、2011~2016年の医療費パネル調査(Medical Expenditure Panel Survey;MEPS)のデータを用い、ティーチバックの効果を解析する、後ろ向きコホート研究を実施。解析対象は18歳以上の1型および2型の糖尿病患者2,901人で、年齢中央値60歳(四分位範囲51~69歳)、女性52.6%、糖尿病診断からの経過年数は中央値7年(同3~14年)。

 解析対象者のうち、ティーチバックによる指導を受けたことがある患者は805人(27.7%)だった。ティーチバックによる指導を受けた群と受けていない対照群とで、ベースライン時点の糖尿病状態およびその他の健康関連指標に有意差はなかった。

 1年間の追跡で、16.8%の患者が何らかの合併症を発症した。合併症発症に影響し得る因子(年齢、性別、人種/民族、出身国、教育レベル、肥満の有無、喫煙習慣、併存疾患数、血糖管理状態など)で調整後、ティーチバックによる指導を受けた群の合併症発症リスクは、調整オッズ比(aOR)0.70(95%信頼区間0.52~0.96)だった。

 また、合併症関連の入院はaOR0.51(同0.29~0.88)と、ほぼ2分の1の頻度だった。さらに、1年目から2年目の総医療費の増加幅は、ティーチバックによる指導を受けた群1,920ドル、対照群3,639ドルであり、前者が有意に少なかった(P<0.001)。

 著者らは、「糖尿病のプライマリケアにおいて、ティーチバックはまだ十分に活用されていない療養指導法だ。現状では多くの臨床現場で、ケアの質を高める機会を逃してしまっているのではないだろうか」と述べている。

[HealthDay News 2020年12月4日]

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