【新型コロナ】息を用いた検査法を開発 呼気オミックスによる呼気医療に期待 東北大と島津製作所

2020.10.22
 東北大学は、島津製作所との共同研究により、自然に吐く息(呼気)をサンプル(試料)とする「呼気オミックス」による、新型コロナウイルス検査法の開発に成功したと発表した。

呼気を用いた無侵襲呼気オミックス解析法による検査システム

 東北大学大学院医学系研究科および加齢医学研究所は、島津製作所との共同研究により、「新型コロナウイルス対策に向けた呼気オミックス解析システム」開発に取り組んでいる。

 呼気オミックスは、呼気の中に存在するウイルスや、生体由来のタンパク質、代謝物を解析する技術。呼気医療は今後、新型コロナ対策のみならず、個別化医療、遠隔・在宅健康診断、各種疾病の診断・治療・未病予防などへの応用が検討されている。

 新型コロナウイルスの迅速かつ高感度・高精度な診断、病期・病状の評価、重症化のリスク判定、予後・合併症の予測と診断などを下す検査法が必要とされており、呼気オミックスによる検査システムは期待されている。

 オミックスは、代謝物やタンパク質などの生体分子を網羅的に解析する技術で、鼻腔・咽頭ぬぐい液、唾液、血液、尿、糞便などのサンプル形態は限定されない。呼気オミックスでは、吐いた息を採取し、エアロゾル中のウイルスタンパク質・ゲノムと同時に被験者由来の炎症メディエータやエネルギー代謝物を効率良くかつ回収し解析を行う。

 東北大学などが開発したのは、従来の鼻や口(咽頭)からの試料採取・検査システムに替わる、自然に吐く息(呼気)を用いた無侵襲呼気オミックス解析法による検査システム。

 この解析法では、試料採取を簡便にするほか、多面的な解析結果が得られる。また、さまざまな感染症対策としても有効なほか、心血管・肺疾患、生活習慣病、動脈硬化、糖尿病などの代謝性疾患、がんなどの診断や健康管理、未病予防にも応用できるという。

 研究は、本年度文部科学省第1次補正予算による新型コロナ感染対策事業の支援を受けて実施された。また、東北大学が島津製作所と共同開発した基本技術の社会実装に向けて、内閣官房AIシミュレーション事業の予算による応用研究を行っている。

出典:東北大学、2020年

感染の有無だけでなく、病期・病状の評価、重症化のリスク判定も

 東北大学は5月に同大学医学部内に「呼気オミックス研究センター」を設置し、新型コロナウイルス診断法を開発してきた。呼気オミックスは、主として質量分析装置を用いたエアロゾルの精密分析の手法で行う。

 質量分析装置は、試料をイオンに変換し、質量でふるい分けることによって、試料に含まれる成分の同定と定量を行う。タンパク質をはじめとするさまざまな生体分子を分析でき、一度に多数の成分を分析できるのが特長だ。

 同大学が開発した高性能呼気エアロゾル回収装置を用いると、5分間の安静時呼吸で、1mL程度の呼気凝縮液を、被験者自身の操作により得られる。

 呼気凝縮液は、呼気を冷却凝縮し採取した液状サンプルで、ウイルスタンパク質・ゲノムRNA、生体由来の代謝物が含まれている。

 この手法は「被験者への無侵襲性」「得られる情報の豊富さ」が長所で、自宅で呼気を収集できるようになれば、感染拡大の主要因となる無症状感染者・軽症者の早期特定、発症と重症化の早期予測と予防に有用な検査体制の構築が可能になる。

 呼気オミックスでは、新型コロナウイルス感染の有無だけでなく、病期・病状の評価、重症化のリスク判定、予後・合併症の予測につながる情報も取得可能だという。

 新型コロナウイルス以外の新型ウイルスにも対応でき、複数ウイルスの同時測定も可能なため、コロナ収束後も感染症対策に役立つとしている。

呼気医療による個別化未来型医療の確立

出典:東北大学、2020年

東北大学大学院医学系研究科環境医学分野
東北大学産学連携機構

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