インドネシア原産の「メリンジョ」の種子抽出物が肥満・2型糖尿病を改善 アディポネクチンを活性化

2020.03.12
 熊本大学の研究グループが、インドネシア原産の樹木である「メリンジョ」の種子の抽出物が、ヒトおよびマウスでアディポネクチンを活性化し、肥満・2型糖尿病の病態を改善することも明らかにした。「DsbA-L」という遺伝子の型の違いが関与しているという。

メリンジョ種子抽出物がDsbA-Lの働きを高める

 熊本大学の研究グループが、インドネシア原産の樹木である「メリンジョ」の種子の抽出物が、生体内でDsbA-L(Disulfide-bond-A oxidoreductase-like protein)遺伝子を誘導し、アディポネクチンの活性化を促進するメカニズムを解明した。

 研究は、熊本大学大学院生命科学研究部(薬学系)薬物治療学研究室の鬼木健太郎助教および遺伝子機能応用学研究室の首藤剛准教授らによるもの。詳細は「Scientific Reports」に掲載された。

 メリンジョは、インドネシアなどで古くから食されている安全性の高い天然物であり、その種子に含まれるポリフェノール類「レスベラトロール」の一種である「グネチンC」という成分が注目されている。

 一方、アディポネクチンは脂肪細胞から分泌される生理活性物質の一種で、その健康増進作用が注目され、とくに肥満や2型糖尿病を防ぐ作用があることが知られている。

 メリンジョの実には高い抗酸化作用・抗菌作用があり、レスベラトロールなどのポリフェノール類が多く含まれている。レスベラトロールはアディポネクチンを誘導することが報告されている。また、グネチンCは一般的なレスベラトロールよりも高い抗酸化作用があり、体内滞留性を有することが知られている。

 鬼木助教らは、これまでのヒトの遺伝子解析研究により、「DsbA-L(Disulfide-bond-A oxidoreductase-like protein)」遺伝子の型の違いがアディポネクチンの活性化に影響を与えることを見出し、DsbA-Lの誘導がアディポネクチンの活性化を促し、メタボリックシンドロームなどを改善する作用を有する可能性を示してきた。

DsbA-Lの誘導がアディポネクチンの活性化を促す

 今回の研究で、ヒトや動物においてメリンジョ種子抽出物が、(1)DsbA-Lの働きを高めるか、(2)アディポネクチンの活性化を促進するか、(3)肥満・糖尿病治療効果を発揮するかに着目し研究を行った。

 まず、健康成人男性42名を対象に、メリンジョ種子抽出物を14日間服用する二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験を実施した。その結果、メリンジョ種子抽出物を1日300mg服用することで、生体内のアディポネクチンが活性化されることが示された。

 さらに、その効果は各個人が持つDsbA-L遺伝子の型の違い(G/G、G/T、T/T)によって異なり、遺伝子の発現量が低いとされるG/TまたはT/T遺伝子型保有者で、効果が大きいことが判明した。

 このヒト臨床試験の結果を受け、首藤准教授らは、メリンジョ種子抽出物を高脂肪食負荷マウス(肥満誘導性糖尿病モデルマウス)に投与し、各組織におけるDsbA-Lの発現や血中アディポネクチン量などに与える影響を検討した。

 その結果、メリンジョ種子抽出物の連日経口投与(4週間)は、生体内のDsbA-Lの発現や活性化アディポネクチンの量を増加させ、主に筋肉組織における糖尿病病態を改善することで、蓄積脂肪量や空腹時血糖値の上昇などの糖尿病症状を有意に改善することを明らかにした。

活性化アディポネクチンの量が増加 肥満や糖尿病の症状を改善

 以上の検討から、メリンジョ種子抽出物は、生体内のDsbA-Lの発現を促進し、活性化アディポネクチンの量を増加させ、とくにマウスにおいては肥満や糖尿病の症状の改善作用を有することが明らかになった。

 現在、熊本大学大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センターでは、文部科学省「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム事業」のひとつ「有用植物×創薬システムインテグレーション拠点推進事業(UpRod)」を推進し、世界各地の有用植物や天然物の成分単離・同定と薬理活性評価を行っている。

 今回の研究はその成果の1つで、今後はメリンジョ種子抽出物を介したDsbA-L遺伝子の誘導促進作用に着目し、健康増進や肥満・糖尿病治療へ応用することが期待される。

熊本大学大学院生命科学研究部(薬学系)薬物治療学研究室
Melinjo seed extract increases adiponectin multimerization in physiological and pathological conditions(Scientific Reports 2020年3月9日)

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