【新型コロナウイルス感染症】 日本感染症学会・日本環境感染学会が「冷静な対応を」と呼びかけ
2020.01.31
新型コロナウイルスについて、メディアで連日報じられ世間に不安が広がる中、日本感染症学会と日本環境感染学会は1月29日、「新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症への対応について」という声明を公表した。
「信頼できる情報(国別の症例数、死亡数など)を参考に、ウイルスの感染性、病原性を考えた対応を指導」することが必要があり、「冷静な対応」が重要と呼びかけている。
「信頼できる情報(国別の症例数、死亡数など)を参考に、ウイルスの感染性、病原性を考えた対応を指導」することが必要があり、「冷静な対応」が重要と呼びかけている。
国内での感染伝播は限定的と考えられる
両学会は今回の声明で、新型コロナウイルスについて以下のような見解を示している。
コロナウイルスは、いわゆる風邪の原因となるウイルスの1つです。本ウイルスに関連して、より病原性の強い重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)や中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)が出現し問題となったことはご承知の通りです。細菌、ウイルスなどの病原体は、外来遺伝子の獲得や突然変異により常に強毒化する可能性が考えられます。今回の新型コロナウイルスは、遺伝学的にSARS-CoVに近縁であることが報告されています。新型コロナウイルスが従来のコロナウイルスに比べて突然変異を起こしやすいという情報はありません。また、今回のアウトブレイク中に変異を起こしてSARS-CoVに近づいているという証拠も現在のところ報告されていません。
中国以外での感染報告例のほとんどは中国(多くが武漢市)からの旅行者であり、輸入国における二次感染例の報告はほとんどない。日本人の感染例もほとんどが武漢滞在者であり、患者家族や患者をケアした看護師・医師への二次感染例も報告されておらず、国内での感染伝播は限定的と考えられるとしている。
さらに「これから数週間にわたり、検査される人数の増加と相まって新型コロナウイルス感染症患者は増加することが予想されます。このとき、感染源不明の二次感染例がどのくらいの頻度で検出されてくるのかは重要な情報となります」と指摘している。
死亡数だけを見てパニックになるのがもっとも危険
中国における重症例と死亡例は今後も増え続けると予測されるが、中国以外の国での死亡例はほとんど報告されていない。死亡例に高齢者が多いとの報告もあるが、基礎疾患や患者背景に関する情報は不足している。 両学会は新型コロナウイルスについて、「感染した人の正確な数が不明であることから、その致死率、重症化率を推定することは困難です」とした上で、「報告される死亡数だけをみて国民がパニックになることがもっとも危険です。だからといって気を緩めてもいけません。感染症の専門家としての知識と経験を総動員し、冷静に対応することが必要となります」と注意を呼びかけている。感染が疑われる場合はただちに保健所に報告
新型コロナウイルス感染症は、感染症法の「指定感染症」に指定され、同法の規定に応じた対策(医療費公費負担の下に隔離可能)がとられるようになった。「指定感染症」に指定された目的は感染症数の把握、制御を容易にするためであり、実際の施行は2月7日だ。 両学会は次の通りに説明している――。
指定感染症になったとしても、我々ができること、しなければいけないことに変わりはありません。上述した飛沫予防策、標準予防策、手洗い・手指衛生の徹底がもっとも重要です。武漢市などの中国からの訪問者で、臨床症状や検査から肺炎が疑われる場合には、直ちに行政機関に報告する必要があります。1月28日現在、国内すべての自治体の指定検査所(地方衛生研究所など)でウイルス検査が可能となっています。
正しいマスクの着脱、適切な手洗いが重要
新型コロナウイルスは原則として飛沫感染により伝播し、現時点では空気感染の可能性は極めて低いと考えられている。したがって、感染対策は標準予防策に加えて飛沫予防策・接触予防策の徹底が基本となる。 感染対策の基本中の基本である手指衛生の徹底、患者および医療スタッフが飛沫を直接浴びないように、サージカルマスクやガウンを着用して診療に当たることが重要だ。正しいマスクの着脱、適切な手洗いが重要であることは言うまでもない。基本的な感染症対策に努めることが重要
内閣官房ホームページでも、「新型コロナウイルス感染症対策」を公開。「過剰に心配することなく季節性インフルエンザと同様に咳エチケットや手洗いなどの基本的な感染症対策に努めていただくようお願いいたします」と注意を呼びかけている。1人ひとりができる新型コロナウイルス感染症対策は?
(首相官邸ホームページより) ■新型コロナウイルスに感染しないようにするために 過剰に心配することなく、「手洗い」や「マスクの着用」を含む「咳エチケット」などの通常の感染症対策が重要です。 (1)手洗いドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。外出先からの帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗います。
ふだんから、十分な睡眠とバランスのよい食事を心がけ、免疫力を高めておきます。 (3)適度な湿度を保つ
空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下します。乾燥しやすい室内では加湿器などを使って、適切な湿度(50~60%)を保ちます。 ※マスクの効果は?
マスクは、咳やくしゃみによる飛沫及びそれらに含まれるウイルス等病原体の飛散を防ぐ効果が高いとされています。咳やくしゃみ等の症状のある人は積極的にマスクをつけましょう。
一方で、予防⽤にマスクを着⽤することは、混み合った場所、特に屋内や乗り物など換気が不十分な場所では一つの感染予防策と考えられますが、屋外などでは、相当混み合っていない限り、マスクを着⽤することによる効果はあまり認められていません。
咳や発熱などの症状のある人に近づかない、人混みの多い場所に行かない、手指を清潔に保つといった感染予防策を優先して行いましょう。 ■ ほかの人にうつさないために
<咳エチケット>
くしゃみや咳が出るときは、飛沫にウイルスを含んでいるかもしれませんので、次のような咳エチケットを心がけましょう。
・マスクを着用します。
・ティッシュなどで鼻と口を覆います。
・とっさの時は袖や上着の内側でおおいます。
・周囲の人からなるべく離れます。
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]