SGLT2阻害薬「ジャディアンス」が心血管リスクを低下 複合腎イベントのリスクも低下

2018.02.27
 日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、「ジャディアンス」(一般名:エンパグリフロジン)による「EMPA-REG OUTCOME」試験の腎アウトカムでのアジア人サブグループ解析の結果が、国際腎臓学会シンポジウムである「Frontiers Meeting 2018」で公表されたと発表した。

複合心血管イベントならびに心血管死を有意に減少

 アジア・太平洋地域における糖尿病患者の増加は深刻で、2014年は1億5,300万人と全世界の糖尿病患者の約3分の1がこの地域に集中している。

 2015年には糖尿病によって全世界で500万人が死亡し、心血管疾患が主要な原因だった。全世界の2型糖尿病患者の死亡のうち約50%は心血管疾患が原因となっている。

 「EMPA-REG OUTCOME」試験では、心血管イベントの発症リスクが高い2型糖尿病患者で、標準治療に「ジャディアンス」を上乗せ投与した結果、プラセボ群と比較して、主要評価項目である複合心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)のリスクは14%有意に減少した。また、心血管死のリスクは38%減少した。

 「ジャディアンス」は、事前に規定された心血管アウトカムに特化した単一試験で、糖尿病治療薬としてはじめて、複合心血管イベントならびに心血管死を有意に減少させたSGLT2阻害薬となる。

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複合腎イベントのリスクを36%減少

 2型糖尿病の有病率、とくに腎イベントリスクには人種差があることが報告されており、「EMPA-REG OUTCOME」試験では、約20%含まれていたアジア人集団における腎アウトカムの解析を実施した。

 解析対象は、同試験に参加した心血管イベントリスクが高く血糖コントロール不良のアジア人2型糖尿病患者1,517名。

 その結果、アジア人集団における腎症の悪化もしくは初回発現の複合腎イベント(顕性アルブミン尿への進展 (UACR>300mg/g)、eGFR(MDRDにもとづく)の45mL/min/1.73m²以下への低下を伴う血清クレアチニン値の倍加、腎代替療法の開始、腎疾患による死亡)に関して、ジャディアンス群は、プラセボ群に比べ、複合腎イベントのリスクを36%減少させた(ハザード比0.64、95%信頼区間0.49-0.83)。

 また、ジャディアンス群は、プラセボ群に比べ、顕性アルブミン尿への進展のリスクを36%(ハザード比0.64、95%信頼区間0.49-0.85)減少させた。これらの結果は、同試験全体集団の結果と一貫していた。

eGFRの低下も緩やかに

 ジャディアンス群では、プラセボ群に比べ、ベースライン時のアルブミン尿の有無・程度にかかわらずUACR値は低値を示した。

 これらの結果は「EMPA-REG OUTCOME」全体集団の結果と同様だった。推定糸球体濾過量(eGFR)は、ジャディアンス群では、投与開始後早期4週の時点で一旦低下したのち、慢性期にはeGFRの低下がプラセボ群に比べ緩やかだった。一方、プラセボ群では試験期間を通じて進行性にeGFRが低下した。これらの結果も「EMPA-REG OUTCOME」全体集団の結果と同様だった。

 なお、日本での「ジャディアンス」の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントおよび腎イベントのリスク減少に関連する効能・効果の適応は取得していない。

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