嗜好食品を減らし健康的な食品に代える方法が食事療法を成功に導く
2016.09.23
加糖飲料や菓子類などの嗜好食品を、より健康的な食品に代えるだけで、カロリー摂取量を減らすことができ、糖分や塩分の摂取量も低下できることが、オーストラリアのポピュレーション・ベースの調査で判明した。9月にミュンヘンで開催された欧州糖尿病学会(EASD)年次学術集会で発表された。
第52回欧州糖尿病学会(EASD)
肥満や糖尿病を改善するために最初に減らしたい食品
欧米人は一般的に、加糖飲料や菓子類などの嗜好食品を多く食べており、オーストラリアでは1日のエネルギー摂取量の3分の1以上を嗜好食品から摂っている。 嗜好食品を、野菜、フルーツ、乳製品、全粒粉、低脂肪の肉類に代えるだけで、エネルギー摂取量を減らすことができ、栄養摂取状況も改善することが、サウスオーストラリア大学保健科学部のトム ウィッチャリー氏らの研究で明らかになった。 2型糖尿病など肥満と関連した病気を改善するために、嗜好食品を減らすか、より栄養価の高い食品に置き換える方法は、簡単に取り組めて、食べ過ぎを抑える効果的な手段になるという。 食事療法を効果的に改善する方法として次の3つがある――▽嗜好食品の摂取量を減らすこと、▽低エネルギー甘味料を使い、嗜好食品の糖質を減らすこと、▽嗜好食品の塩分量を減らすこと。嗜好食品を減らし、より健康な食品に置き代える
ウィッチャリー氏らは、2011~2013年に行われた「オーストラリア健康調査」の対象となった1万2,153人のデータを解析。食事内容と肥満や2型糖尿病などの生活習慣病の発症リスクの関連について検討した。 嗜好食品を減らすと健康状態にどのような影響をもたらすかを、大規模調査の結果をデータモデリングし明らかにすることを目的に調査した。対象者の4.7%は糖尿病だった(自己回答)。 その結果、次のことが明らかになった―― ・ 嗜好食品の量を25%減らした場合、減らさない場合に比べ、1日のエネルギー摂取量は9.0%(184kcal)減少する。また、嗜好食品をより健康的な食品に置き換える場合は、置き換えない場合に比べ、健康的な食品が8.3%増加する。エネルギー摂取量は3.6%(74kcal)減少し、タンパク質摂取量は2.1(2.3%)増加、糖分は10.8g(20.6%)減少、ナトリウム(塩分)は220mg(3.9%)減少する。 ・ ビスケット、ケーキ、マフィン、スコーン、ケーキタイプのデザートなど、糖質の多い嗜好食品を25%減らすと、1日のエネルギー摂取量を1%減らせる。 ・ 加糖飲料(SSB)に含まれる糖質を低エネルギー甘味料に置き換えると、エネルギー摂取量を60kcal(2.9%)減らせる。 ・ 糖尿病有病者を対象としたサブ解析では、嗜好食品の摂取量は735kcal(総エネルギー摂取量の35.8%)だが、嗜好食品を減らすと604kcal(同32.4%)まで減少できることが判明した。取り組みやすく、長続きしやすい食事療法
「今後は介入試験を行い、より詳しく調べる必要がありますが、食事指導における課題は見えてきました。嗜好食品を食べる習慣を少し改めるだけでも、大きな変化を得られる可能性があります」と、ウィッチャリー氏は指摘している。 2型糖尿病患者はほとんどが食べ過ぎており、嗜好食品を無意識に食べてしまう人も多い。糖尿病患者からは、「指示されたエネルギー量では空腹になり我慢できない」「どうしても嗜好食品をやめられない」といった声が多く聞かれる。 また、食習慣は長年にわたり身についたものなので、代えるのが難しいという人も少なくない。 嗜好食品を食べる量を減らせば、食事全体のエネルギー摂取量を減らせ、肥満の改善に、糖尿病患者の場合は血糖コントロールの改善につながりる。しかし、これは容易なことではない。食事の量を減らすと空腹感を感じ、もっと多く食べたくなり、長続きしないからだ。 「嗜好食品の一部をより健康的な食品に代えることから始めると、取り組みやすく、長続きしやすくなります」と、ウィッチャリー氏は説明する。 食事の質を高めて、少ない量でも満足感を得られように工夫することも大切だ。もっとも簡単に取り込めるのは、高エネルギーのジュースやコーラなどの加糖飲料を、水や低エネルギー甘味料を使ったお茶などの飲料に置き換えることだ。 「飲料では満腹感を得られません。高エネルギー飲料を飲むのが習慣となるとエネルギーを容易に摂り過ぎてしまうので、特に注意が必要です」と、アドバイスしている。 Study analyses reducing consumption of discretionary (unhealthy) foods and replacing them with core foods(Diabetologia 2016年9月12日)[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]