FMDは動脈硬化危険因子の集積を鋭敏に反映 CAVI・ABIとの比較
2014.06.19
糖尿病における動脈硬化を早期に把握するための検査指標として、CAVIやABIに比し、血流依存性血管拡張反応「FMD」の有用性がより高い可能性が報告された。第57回日本糖尿病学会年次学術集会(5月22~24日・大阪)において、常盤台外科病院内科の渡辺英綱氏らが発表した。
血管内皮機能の低下は動脈硬化の初期変化であり、臨床的には血流依存性血管拡張反応「FMD」(Flow Mediated Dilation)の異常として把握される。FMD以外の動脈硬化関連指標として、脈波伝播速度から計算式により血圧の影響を除いた値「CAVI」(Cardio Ankle Vascular Index)や、足首上腕血圧比「ABI」(Ankle Brachial pressure Index)があるが、渡辺氏らの研究は、糖尿病患者におけるこれらの指標を、年齢層や併発症の有無別に比較検討したもの。 対象は、平成25年1月から4月までの4カ月間に同院の外来を受診した糖尿病患者のうち、前記3項目を同機会に測定し得た40歳以上の58名。FMDは前腕を5分間駆血し、駆血開放後の上腕動脈最大血管径を駆血前値と比較した値(%FMD)を用いた。またCAVIは筋性動脈の影響が少ないknee-CAVI(k-CAVI)を用いた。
加齢によりFMDは低下、CAVIは上昇
まず、各指標を年代別にみると、FMDは40歳代が7.1%、50代5.2%、60代5.9%、70代5.9%、80代3.6%で、50歳代で既に有意に低下し(p<0.05. vs 40歳代)、80歳代ではさらに低下しており(p<0.01)、加齢に伴う血管内皮機能の低下が示された。またCAVIは同順に6.9、8.8、8.8、9.8、10.5と、60歳代での有意な上昇と(p<0.05. vs 40歳代)、80歳代でのさらなる上昇(p<0.01)がみられ、加齢による血管弾性の低下が示された。一方、ABIについては年代間の差はみられなかった。
各指標を従属変数として重回帰分析を行うと、FMDの説明変数としては総コレステロールのみが、CAVIの説明変数としては年齢、BMI、ABIが、ABIの説明変数としてBMIとTGが採択された。
糖尿病+他の動脈硬化危険因子の集積で、FMDは有意に低下
次に、糖尿病以外の動脈硬化危険因子である高血圧や脂質異常症を併発した場合の各指標の変化を検討。するとFMDは、糖尿病のみでは5.6%、糖尿病+高血圧では4.8%、糖尿病+高血圧+脂質異常症では4.1%と群間に有意差がみられ(p<0.05)、疾患が集積するほど血管内皮機能がより低下することが示された。
CAVIについては同順に、8.7、9.8、8.6で、高血圧を併発した場合にのみ上昇し、ABIは1.22、1.22、1.19と有意な差がみられなかった。
糖尿病に高血圧や脂質異常症が併発した場合に、CAVIやABIに変化が認められなくてもFMDが有意に低下するということから、糖尿病患者における動脈硬化の初期変化を捉える検査として、FMDの有用性が示唆される。◇FMD関連情報:
- FMDは動脈硬化危険因子の集積を鋭敏に反映 CAVI・ABIとの比較
- 食後脂質異常が、食後高血糖よりも血管内皮機能低下に強く影響
- 肥満でEDの中年男性は生活習慣病未発症でも内皮機能が有意に低下
- ACS後の心リハによる運動耐容能向上は血管内皮機能の改善と相関
- DPP-4I追加と併用OHA別にみた内皮機能改善効果 FMDでの検討
- CADでは非糖尿病でも微量アルブミン尿出現率が高く、FMD低下と関連
- 上腕動脈IMT・FMDの同時計測で、冠動脈疾患リスクの層別化が可能
- DPP-4阻害薬の食後高脂血症改善を介した血管内皮保護作用
- 禁煙により酸化ストレスが低下し、血管内皮機能が有意に改善
- 糖尿病細小血管障害とFMD値が相関。短期加療による改善も評価可能
- 血管内皮機能は体温日内変動と相関するが、糖尿病ではその関係が破綻
- 心不全患者の心リハ。急性期のADL改善にも血管内皮機能が関与
- 糖尿病患者の冠疾患スクリーニングにFMDが有用
- 食事由来コレステロールよりはTGとアポB48が血管内皮機能に影響
- 直接レニン阻害薬の多面的効果 透析患者での血管内皮機能を改善
- DPP-4阻害薬の変更による血管内皮機能改善の上乗せ効果
- 塩分の多い食事は、食直後から血管内皮機能(FMD)を低下させる
- 血管内皮機能は血糖変動と逆相関し鋭敏に変化する
- 大豆イソフラボンがTGを低下させ、FMDを改善
- 「血管内皮機能検査」が診療報酬改定で新設される(厚生労働省)
- ミグリトールは冠動脈疾患併発糖尿病患者の血管内皮機能を改善する
- FMD低値は糖尿病発症の予測因子。ドックなどでは精密検査を
- 肥満2型糖尿病では、精神的ストレス軽減が血管内皮機能改善につながる
- 網膜症のある女性糖尿病患者は血管内皮機能(FMD)低下ハイリスク
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- 仮面高血圧合併2型糖尿病では血管障害(FMDやPWV)が高度に進展
- DPP-4阻害薬は血管内皮機能(FMD)を改善する
- 脳や心臓の血管が詰まる前に。血管の若返りがわかる検査指標「FMD」
- 動脈硬化が早期にわかるFMD検査装置
- 血管内皮機能、FMD検査のユネクス
- 一般向けサイト 動脈硬化の進展を知る「FMD検査.JP」
[dm-rg.net / 日本医療・健康情報研究所]