糖尿病患者の冠疾患スクリーニングにFMDが有用

2012.10.09
 糖尿病患者の冠動脈疾患スクリーニングに、FMD検査が有用である可能性が示された。第60回日本心臓病学会学術集会(9月14日~16日・金沢)での、新古賀病院心臓血管センター・後藤義崇氏らの発表。
FMDが冠動脈狭窄の存在を予測し得るかを検討
 糖尿病患者は冠動脈疾患を好発することに加え、神経障害の影響等により無症候のまま重篤化しやすいことから、そのスクリーニングが重要とされる。しかし、CTなどの侵襲的検査をどのような患者に施行すべきかについては、まだ明確になっていない。

 後藤氏らは、動脈硬化の最初期の変化である血管内皮機能低下は、血流依存性血管拡張反応「FMD(Flow Mediated Dilation)」が非侵襲的に評価可能であることから、FMDが糖尿病患者の冠動脈疾患スクリーニングの手段となり得る可能性を検討した。研究の対象は、同院にてFMDを測定した糖尿病患者のうち、スクリーニング目的での心臓CTを施行された連続35例。冠動脈疾患の侵襲的治療の既往がある患者は除外した。

有意狭窄あり群はFMDが有意に低値
 心臓CTにより、1枝以上の冠動脈に50%以上の狭窄を認めた群(25例)と、認めなかった群(10例)の2群に分類し、患者背景とFMDほかの各種検査所見を比較。また、FMDは、5分間の前腕駆血後の上腕動脈径の変化率で評価した。

 その結果、単変量解析で有意差のある項目として、BMI、中性脂肪(TG)、ABI(足首上腕血圧比)とともにFMDが挙がった(表)。これら以外の、年齢、性、糖尿病罹病期間、HbA1c、空腹時血糖値、LDL-C、血圧、心拍数、石灰化スコアなどは、いずれも有意な群間差がみられなかった。また、処方薬の使用状況にも有意な差はなかった。

冠動脈疾患のある群とない群での患者背景・検査所見の比較(単変量解析)

TG高値、FMD低値が有意狭窄の予測因子
 続いてステップワイズ回帰分析を行うと、群間に有意差のある因子としてTGとFMDの2項目が抽出された(TG;p<0.0234、FMD;p<0.0451)。これにより、TG高値とFMD低値が、冠動脈疾患の独立した予測因子であることが示された。

 以上の結果から、同氏は「糖尿病患者においてFMD測定は冠動脈疾患のスクリーニングに有用である可能性がある」とまとめた。

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