糖尿病の悪化と体重減少が膵がん早期発見の手がかりとなる可能性 全国2,000例以上を解析 東北大学・JIHS

膵がんは早期には症状が現れにくく、診断された時点ですでに進行していることが多いため、予後の悪いがんの一つとして知られている。日本における2024年の膵がんによる死亡者数は41,235人に上り、年間死亡者数が3番目に多いがんである。
糖尿病と膵がんには密接な関係があり、糖尿病は膵がんのリスク因子である一方、膵がんそのものが血糖値の上昇を引き起こし、新たな糖尿病の発症や、それまで安定していた糖尿病の悪化をもたらすことがある。これまで、膵がんを早期に発見する手がかりとして「新たに発症した糖尿病」が注目されてきたが、実際の糖尿病診療の現場において、膵がん患者の糖尿病がどのような経過をたどり、どのような変化をきっかけに膵がんが発見されているかは、十分に明らかになっていなかった。
こうした背景のもと、東北大学と国立健康危機管理研究機構の研究グループは、日本糖尿病学会の協力を得て、日本糖尿病学会認定教育施設を対象に全国調査を実施。糖尿病診療中に診断された膵がん2,291例の臨床情報を解析した。
解析の結果、膵がん診断前3年以内に新たに糖尿病を発症した「新規発症糖尿病」は549例(24.0%)であった。一方、1,742例(76.0%)は膵がん診断の3年以上前から糖尿病を有しており、糖尿病を合併する膵がん患者の約4人に3人は、以前から糖尿病を有する患者であった。
膵がんがどのようなきっかけで発見されたかを調べたところ、34.3%が腹痛などの症状をきっかけに、27.1%が糖尿病の新規発症や既存の糖尿病の悪化といった「糖尿病関連の変化」をきっかけに診断されていた。診断時のステージ分布を比較すると、症状をきっかけに診断された患者では早期のステージ0およびIAは3.9%にとどまり、ステージIVが49.5%を占めていた。それに対し、糖尿病関連の変化をきっかけに発見された患者では、ステージ0およびIAが11.0%、ステージIVが26.1%であり、より早い段階で発見されていた。年齢、性別、BMI、膵疾患の既往、膵がんの家族歴、喫煙歴、飲酒歴などの影響を統計学的に調整した解析においても、糖尿病関連の変化をきっかけとした診断は、ステージ0およびIAでの診断と関連していた(調整オッズ比 2.87)。
さらに、膵がん診断時とその1年前のデータを比較した患者では、66.9%に2.5%以上の体重減少が、46.4%にHbA1c値が1%ポイント以上の上昇がみられた。また、既存の糖尿病の悪化が認められた患者のうち、57.2%が悪化から3か月以内、79.4%が6か月以内に膵がんと診断されていた。これらの結果から、糖尿病の患者における血糖コントロールの悪化や体重減少などの変化に注意することが、膵がんをより早い段階で発見する手がかりとなる可能性が示された。
研究グループは研究結果について、「膵がん発見の手がかりとして、これまで注目されてきた『新たな糖尿病の発症』だけでなく、『以前からある糖尿病の予期しない悪化』にも注意することの重要性が示された。特に、これまで比較的安定していた血糖コントロールが急に悪化した場合や、原因のはっきりしない体重減少を伴う場合には、その背景に膵がんが存在する可能性も念頭に置くことが、より早期の診断につながる可能性がある。今後、糖尿病の悪化の程度や速度、体重減少、年齢、糖尿病罹病期間などを組み合わせることによって、膵がんのリスクが特に高く、膵臓の精密検査を受けるべき患者を効率よく絞り込む方法を確立し、膵がんの早期診断につなげることが期待される」と述べている。




