夜間に血圧が上昇する糖尿病患者は全死亡リスクが2倍以上高い
血圧は通常、昼間に比べて夜間に低下するが、Chiriacò氏によると、「これまでの研究から、糖尿病患者は夜間に血圧が低下しないことが多く、それが腎疾患や心血管疾患のリスクに関与している可能性が示唆されている」とのことだ。ただし、糖尿病患者の夜間血圧変動パターンと生命予後との関連は、いまだ不明点が多く残されているという。そこでChiriacò氏らは、イタリアのピサで1999年にスタートした糖尿病コホート研究のデータを用いて、2020年までの21年間にわたる追跡を行い、夜間血圧変動パターンと全死亡リスクとの関連を解析した。
このコホートの登録者は、成人糖尿病患者349人。284人が2型糖尿病で、65人が1型糖尿病であり、男性と女性はほぼ同数。全体の82%は降圧薬が処方されているにもかかわらず、73%は血圧管理不良だった。
24時間自由行動下血圧測定(ABPM)を用いて、夜間血圧が昼間血圧より10%以上低下する「dipper」群、低下幅が10%未満の「non-dipper」群、0.1%以上上昇する「reverse dipper」群の3群に分類。すると、166人がdipper、144人がnon-dipper、39人がreverse dipperに該当した。Dipper群の45%、non-dipper群の53%、reverse dipper群の62%に心拍変動の低下が認められ、同順に11%、16%、31%は心臓自律神経障害と診断されていた。
6,251人年の追跡で136人の死亡が記録されていた。Dipper群に比較し、non-dipper群は1.1年、reverse dipper群は2.5年、生存期間が短かった。また、交絡因子を調整後、dipper群に比較しreverse dipper群は全死亡のハザード比が2.3であり、有意にリスクが高かった。またreverse dipper群はnon-dipper群との比較でもリスクが1.9倍高かった。なお、dipper群とnon-dipper群の全死亡リスクの差は有意でなかった。
Chiriacò氏はこの結果を基に、「医療従事者は、1型および2型糖尿病患者の夜間血圧変動が異常なパターンを示していないか確認すべきだ」と総括し、また「24時間ABPMは、血圧や心拍変動の異常を簡便かつ低コストで検出可能なツールであり、糖尿病患者の治療最適化のためのスクリーニングに適している」と述べている。
なお、学会発表された研究結果は、一般に査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。
[HealthDay News 2021年9月30日]
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