COVID-19ワクチンの第1/2相試験の中間結果 被験者全員で強固な免疫反応 オックスフォード大とアストラゼネカ
2020.07.22
英オックスフォード大学が主導する第1/2相試験「COV001」の中間結果で、アストラゼネカが開発中の新型コロナウイス感染症(COVID-19)ワクチン「AZD1222」について、すべての被験者で忍容性が確認され、SARS-CoV-2ウイルスに対する強力な免疫反応を生成したことが示された。詳細は医学誌「ランセット」に掲載された。
SARS-CoV-2に対する迅速な抗体およびT細胞応答を生成
「AZD1222」は、オックスフォード大学とそのスピンアウト企業Vaccitechによって共同で発明されたワクチンで、複製できないように処理をした弱毒化されたチンパンジー由来の風邪のアデノウイルスに、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質の遺伝物質を含んだもの。ワクチン接種後、表面スパイクタンパク質が産生され、免疫系を刺激して、後で体が感染した場合にSARS-CoV-2ウイルスを攻撃する。 「COV001」は、18~55歳の健康な成人1,077人が参加する、多施設共同第1/2相単盲検無作為化比較試験。同試験では、髄膜炎菌結合型ワクチン(MenACWY)に対して「AZD1222」の単回投与が評価された。参加者のうち10人は、1ヵ月間隔で「AZD1222」を2回接種された。 同試験では被験者に対し、血液サンプルを採取し、安全性と免疫原性の臨床評価を0日目と28日目に行い、184日目と364日目にも追跡する。また、治験の第1相参加群と「AZD1222」を2回接種した群は、接種の3、7、14、28日後にも受診した。 その結果、「AZD1222」の単回接種を受けた95%の被験者は、接種1ヵ月後にSARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体が4倍に増加したことが確認された。すべての被験者で、T細胞反応が誘発され、14日目までにピークに達し、接種の2ヵ月後まで維持された。 SARS-CoV-2に対する中和活性(MNA80法で評価)は、ワクチンの単回接種から1ヵ月後には91%の被験者に、2回目の接種を受けた被験者の100%にみられた。1回または2回の接種を受けた被験者にみられる中和抗体のレベルは、回復期のCOVID-19患者にみられるものと同様の範囲だった。中和抗体法全体で強い相関が観察された。 初期の安全性に関する結果としては、「AZD1222」を接種されたグループで一時的な注射部位の痛みと圧痛、軽度から中程度の頭痛、疲労、悪寒、発熱、倦怠感、筋肉痛を含む、一時的な局所反応と全身性反応がみられ、以前の治験や他のアデノウイルスベクターワクチンと同様であることが確認された。 「AZD1222」で重篤な有害事象は報告されておらず、鎮痛剤であるパラセタモールの予防投与によりこれらの反応は軽減され、2回目接種後に反応が起きる頻度は低くなった。 後期の第2/3相試験は現在、英国、ブラジル、南アフリカで進行中であり、米国で開始される予定。第2/3相試験では、ワクチンがCOVID-19からどの程度、防御するかを判断し、さまざまな年齢範囲およびさまざまな用量における安全性と免疫応答を評価する。 「私たちのコロナウイルスワクチンの第1/2相中間データは、ワクチンが予期しない反応を引き起こさず、このタイプの以前のワクチンと同様の安全性プロファイルを有していたことを示しました。ワクチン接種後に観察された免疫反応は、SARS-CoV-2ウイルスに対する防御に関連すると予想されるものと一致していますが、これを確認するには、厳密な臨床試験プログラムを継続する必要があります。2回のワクチン接種を受けた被験者で最も強い免疫反応がみられたことは、このワクチンを接種するにあたり2回接種が優れた戦略である可能性があることを示しています」と、オックスフォード大学のオックスフォードワクチン試験の主任研究者であり、試験の共同執筆者であるアンドリュー・ポラード教授は述べている。 「今回のデータはワクチンが機能するという確信を高めてくれるものであり、世界中で広く公平にアクセスできるようにワクチンの大規模な製造計画を継続することを可能にするものです」と、アストラゼネカでは述べている。 同社は並行して、後期臨床試験が成功した場合に備えて、ワクチンへの広く公正なアクセスというコミットメントに向けた取り組みを継続する。現在までに20億回以上のワクチンを供給するという約束を、英国、米国、欧州のInclusive Vaccines Alliance(包括的ワクチン同盟)、the Coalition for Epidemic Preparedness(CEPI:感染症流行対策イノベーション連合)、Gavi the Vaccine Alliance、Serum Institute of Indiaと合意している。 New study reveals Oxford coronavirus vaccine produces strong immune response(オックスフォード大学 2020年7月20日)Encouraging results from phase 1/2 COVID-19 vaccine trials(ランセット 2020年7月20日)
Safety and immunogenicity of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine against SARS-CoV-2: a preliminary report of a phase 1/2, single-blind, randomised controlled trial(ランセット 2020年7月20日)
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[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]