COVID-19に対するmRNAワクチンの第2/3相試験を開始 世界120ヵ所で3万人規模の治験 ファイザーとBioNTech

2020.07.31
 米国のファイザーとドイツのバイオテクノロジー企業のBioNTechは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチン候補を決定し、国際共同第2/3相試験を開始すると発表した。

mRNAワクチンの最終候補を決定

 ファイザーとBioNTechが開発したmRNAワクチン候補は、BNT162b1とBNT162b2。4種類のBNT162 RNAワクチン候補を評価した非臨床試験および臨床試験で、安全性および免疫応答の評価にもとづき、この2つが有力な候補であることが示された。

 非臨床試験でBNT162b1とBNT162b2は、良好なウイルス抗原に特異的なCD4+およびCD8+ T細胞反応を誘発し、さまざまな動物種で高い中和抗体活性を示し、サルを用いたSARS-CoV-2チャレンジ試験で有益な予防効果を示した。

 さらに両社は、非臨床試験データおよび第1/2相試験データを詳細に分析し、米国食品医薬品局の生物学的製剤評価研究センター(CBER)および他の規制当局と協議の上、第2/3相試験で評価する候補としてBNT162b2を選択した。

 BNT162b2の第2/3相試験は、30µgを2回接種する用法用量で実施される。BNT162b2は、ウイルス中和抗体の標的となる最適化されたSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク全長をエンコードし、米国食品医薬品局(FDA)のファストトラック指定を受けた。

 mRNAワクチンは新しいタイプのワクチンで、ウイルスは一切含まれておらず、開発期間を従来より大幅に短縮することができる。mRNAワクチンでは、病原体のタンパク質(抗原)を作り出す遺伝物質であるmRNA(メッセンジャーRNA)を投与する。mRNAは病原体の設計図であり、これから病原体の一部が体内で作られ免疫反応が生じる。

世界の120ヵ所で最大3万人規模の治験を開始

 ワクチン候補BNT162b2の第2/3相試験は、最大3万人の18~85歳の参加者を対象とし、まず米国で開始され、最終的に米国の39州、アルゼンチン、ブラジル、ドイツを含む世界中の約120の治験実施施設の参加を見込んでいる。

 両社は、COVID-19の予防効果を評価するため、SARS-CoV-2の感染率が有意に高いと予想される場所を含む地域で治験を実施し、治験が成功した場合、早ければ2020年10月に規制当局に承認申請し、許可または承認が得られた場合には、2020年末までに最大1億回分、2021年末までに約13億回分を供給する計画をたてている。

 ワクチン候補と用法用量は、非臨床試験データおよび米国(C4591001)とドイツ(BNT162-01)でそれぞれ実施中の第1/2相試験データにもとづき選択された。第2/3相試験の治験実施計画書は、米国食品医薬品局(FDA)のCOVID-19に対するワクチンの臨床試験デザインに関するガイダンスに完全に則っている。

 第2/3相試験では、承認申請に必要となる安全性、免疫応答および有効性のデータを得ることを目的に、無作為化観察者盲検試験とし、1:1でワクチン候補とプラセボに割り付ける。

 治験の主要評価項目は、ワクチン接種前にSARS-CoV-2に感染していない参加者に対するCOVID-19の予防と、過去のSARS-CoV-2感染の有無に関わらないCOVID-19の予防。

 副次評価項目には、重度のCOVID-19の予防が含まれている。また、COVID-19を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2の感染予防も探索する。

 有効性に関する主解析は、COVID-19に罹患した症状を有する参加者数をイベントとしてカウントする。また本試験は、独立した外部データモニタリング委員会による中間解析および非盲検下のレビューが可能な治験計画となっている。

ワクチン接種で中和抗体が T細胞反応も誘発

 120人近くを対象とした第1/2相試験の予備的データでは、BNT162b2はBNT162b1に比して良好な忍容性プロファイルを示し、全身反応(発熱、疲労、悪寒など)は軽度または中等度かつ一過性(1~2日間)で、重篤な有害事象は認められなかった。

 BNT162b2を30µg 2回接種時の中和抗体の幾何平均値(GMT)は、両社がプレプリントサーバーに掲載したデータに含まれているBNT162b1が誘発したGMTとおおむね同様だった。

 高齢者(65~85歳)では、30µgを3週間の間隔をあけて2回接種したところ、SARS-CoV-2に感染した患者38人の血清パネルのGMTより高い中和抗体GMTが得られた。

 BNT162b2の接種を受けた参加者は、BNT162b1に比して、SARS-CoV-2抗原に特異的なT細胞反応で認められるエピトープの種類がより多く示された。また、BNT162b2は高いCD4+およびCD8+ T細胞反応を同時に誘発した。

 BNT162b2は、受容体結合ドメイン(RBD)およびBNT162b1には含まれていないスパイク糖タンパクの残りの部分に対してT細胞反応を誘発した。

 両社は、「より多くのスパイクタンパクのエピトープがT細胞に認識されることにより、多様な集団および高齢者でより一貫した反応が産生される可能性があると考えています」と述べている。

2021年末までにワクチン13億回分を世界に供給

 両社は臨床試験のプロセスを通じて、過小評価されている集団の健康格差の減少に取り組んでいる。そのため、COVID-19の影響を不均衡に受けた多様性の高い地域の治験実施施設を多く選定し、もっとも影響を受けた人々に参加する機会を提供する。また、治験実施施設やアドボカシー団体とも協力し、本治験への参加の重要性に関する認識を高める。

 第2/3相試験が成功した場合、両社は早ければ2020年10月に緊急使用許可あるいは何らかの薬事承認を得る申請を行う予定。許可または承認が得られた場合、2020年末までに最大1億回分、2021年末までに約13億回分を世界で供給することを目指している。

 「第2/3相試験の開始は、COVID-19パンデミックとの闘いを支援するためのワクチン候補の提供に向けた大きな一歩です。開発プログラムを進め、追加のデータを得たいと思います」と、ファイザーでは述べている。

 「この重要なマイルストーン達成に向け、これまで多くのステップが実施されており、全ての関係者の並外れたコミットメントに感謝します」と、BioNTechでは述べている。

 同治験の詳細は、「ClinicalTrials.gov」で公開されている。

ファイザー
BioNTech

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