糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第15回 SGLT2阻害薬 (3)

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 41(2014年7月1日号)

 SGLT2阻害薬が現時点で4種類発売されました。すでに処方・調剤経験があるかもしれませんが、臨床的効果はいかがでしょうか?各製剤の違いは大差無いだろうという意見が主流ですが、実際はどうなのかを今回考えてみたいと思います。

SGLT2阻害薬(以下SGLT2i)に違いはあるのか?

 各社発表データをグラフ化すると実は下がり幅が明らかに異なります。しかし開始時のHbA1cが高ければ低下幅は大きくなるので、製薬会社発表データ(文献1)で効果を比較判定しようとしても本質は明らかになりません!そこで、行き詰まったら薬理学的な基本性質に戻って考えてみましょう。各SGLT2i製剤の体内動態を調べてみると、以下の点で違いが明らかになってきます。
 すなわち①SGLT1と比較した際のSGLT2に対する選択性 ②薬物と血中アルブミンとの蛋白結合率 ③血中半減期 ④代謝:肝臓ではグルクロン酸抱合かCYP代謝か ⑤尿中における未変化体の割合。これらはSGLT2iの安全性および効果に関係することです。

SGLT1は何をしているか

 さてSGLT1は(文献2)腎以外では何をしているのでしょうか?主要な作用点は、①小腸でのグルコース・ガラクトース吸収 ②心筋での糖取り込み ③骨格筋での糖取り込み ④脳内へのブドウ糖輸送です。このように重要な働きをしているところからSGLT2(文献3)だけ阻害しておけば無難です。しかしSGLT1を少し阻害すれば薬効を高める可能性も考えられます。

カナグリフロジン型とトホグリフロジン型に分類してみる

 前述した事項において、現在申請済みの2種を含めた6種のSGLT2iは「ばらばら」でつかみ所がありませんが、私の中では「カナグリフロジン型」、「トホグリフロジン型」と分けたとたんにスッキリ見えた気がします。カナグリフロジンは ①SGLT2選択性が他剤より低い ③蛋白結合率は高い ④血中半減期は長い ⑤代謝は肝や腎でのグルクロン酸抱合による ⑥尿中の未変化体の割合が低い。この全く逆がトホグリフロジン(アプルウェイ®錠/デベルザ®錠)です。イプラグリフロジン(スーグラ®錠)はカナグリフロジン型でありSGLT2選択性はやや低く、ルセオグリフロジン(ルセフィ®錠)やエンパグリフロジンはトホグリフロジン型。また中間に属するダパグリフロジン(フォシーガ®錠)も臨床上トホグリフロジン型にしておいて良い、などと大雑把に捉えておけば良いと思います。
 次にSGLT2iは、糸球体から尿に出て尿細管の管腔側からSGLT2に結合して作用すると推定されており、蛋白結合率が低い方が早く尿に出るという見解があります。そこで、蛋白結合率が低く、尿中未変化体が少し多く、半減期が短いトホグリフロジン等は服用後早めに効き、逆に夜中に効果が弱く、夜間頻尿を増やしにくい特徴があるかもしれません。ただし、薬物とアルブミンとの蛋白結合は、ついたり離れたりの平衡状態ですから、SGLT2iの蛋白結合率と薬物尿中排泄量との関係は少ないと考えます。
 次に代謝ですが、トホグリフロジン(CYP2C18,4A11等)とルセオグリフロジン(CYP3A4/5,4A11等)はCYP代謝ですが、あとは主に肝臓等のグルクロン酸抱合です。CYPで代謝されるトホグリフロジンとルセオグリフロジンでは、遺伝子多型や併用薬の影響で血中濃度上昇や薬効の個人差に影響が出てこないかは注目していきたいと思います。
 以上の基本的情報がポイントですが、これらの薬理的な相違が実際の臨床の場ではどの程度各製剤の性質を特徴づけるのか、コントロールされた臨床研究の成果が待たれます。

前回に続きSGLT2iの注意点

 さて、最近急に蒸し暑くなってきました。SGLT2iは尿糖排泄による浸透圧利尿があり、1日約400ml近くまで尿量が増えますので(文献4)、特に夏場はこまめな水分補給が必要です。しかし杓子定規の指導だと、水分を脅迫観念的に摂り続け尿量が1リットル以上増加してしまう例も出てくるでしょう。排尿回数が少ない、尿の色が濃いめと思ったら水分摂取をとの指導が現実的です。利尿剤との併用者も要注意です!また、猛暑による熱中症は高齢者にとって生命のリスクとなりますが、もしSGLT2i服用中ならば、実際は違ってもそれが原因だとされかねません。少なくとも今年の夏は、高齢者には原則使用すべきでないと考えます。
 次に糖質摂取の問題です。極端な糖質制限をしている方、また高齢者で食事量が減っている方への処方は、糖質摂取量をさらに減らすのと同様の状況となります。標準体重以下の方への処方もリスクがあります。
 最後に、この薬は医師・薬剤師はもちろん、患者さんも作用と注意点を十分理解できる方に使用すべきと思います。「フルマラソンの朝もきちんと飲みました」では困るのです!次回もSGLT2iについて考えます。

参考文献

  • 1)糖尿病の最新治療19(5):126-133,2014
  • 2)Curr Med Res Opin. 25(3): 671-681, 2009
  • 3)SGLT2阻害薬のすべてP12-18,先端医学社2014
  • 4)Expert Opin Pharmacother.14(12):1695-1703,2013

関連情報

筆者より -SGLT2阻害薬の適正使用について-

 これまでSGLT2阻害薬のシリーズで、「難しい薬なので、適応を考えて充分慎重に」と書いて来ました。SGLT2阻害薬はとても良く効く症例を経験する反面、発売後は脳梗塞など死亡例を含め重大な副作用が報告されています。これまでの情報では直接の因果関係ははっきりしないものが多いとされています。胃薬を服用して脳梗塞で死亡しても薬のせいとは言われませんが、この薬は利尿作用による脱水注意等々があるため、直接関係がなくても薬の副作用で死亡とされがちです。糖尿病患者でなくても、年齢とともに脳梗塞・心筋梗塞など死亡率が高くなるのが人間の宿命です。脳梗塞などが増加する高齢者や、動脈硬化が既に進行している方にも原則として投与を避けるのが無難です。また、副作用かと思ったら、すぐに服薬を中止する指導が必要と思います。(2014年11月)

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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