糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第5回 チアゾリジン薬

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 31(2012年1月1日号)

ピオグリタゾンについて

 インスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾン(アクトス®錠/以下本剤)は2型糖尿病を適応疾患として1999年に上市されました。核内受容体のPPARγに作用し、脂肪細胞の分化を促進、肥大化した脂肪細胞を正常の小型脂肪細胞に置き換えます。これにより筋肉・肝臓・脂肪での糖取り込みを促進、肝臓で糖新生を抑制し血糖値を低下させます。またTNF-α、IL-6等の悪玉アディポサイトカインが低下し、抗動脈硬化作用を持つアディポネクチンの血中濃度が3倍等に上昇。またマクロファージに対する抗炎症作用や血管内皮機能改善など多くの研究結果が報告されています。15~30mgを1日1回朝食前後に服用し、最大用量は45mg。唯一のチアゾリジン系薬剤ですが、ジェネリック薬品は18社から発売されています。

大規模臨床試験から

 長期的な血糖低下作用は種々の試験で知られていますが、2万例の調査、PRACTICAL試験で日本人での有効性安全性が確かめられました。糖尿病治療の重要な目標である大血管障害抑制についてはPROactive試験で、大血管症の既往のある2型糖尿病患者に対する有効性が二重盲検法で初めて検証されました。この試験では、心筋梗塞再発抑制28%、脳卒中再発抑制47%、そしてインスリン導入が53%低下したことも重要な知見です(文献1)。

服薬指導のポイント

 本剤は、尿細管でNaと水の再吸収を促進し、体液貯留傾向を示すため、心不全・浮腫の出現に注意が必要です。服薬指導は

  1. 心不全治療症例に禁忌、
  2. 心疾患を合併しやすい高齢者と浮腫の起きやすい女性に注意、
  3. 15mg/日より開始し、増量時は特に気をつける。女性の浮腫は7.5mg/日に減量も可、
  4. 浮腫症例は減塩を強化し、かつ少量の利尿薬も考慮します。

以上を踏まえて投薬は少量から開始するのがポイントです。なお本剤の血糖降下作用は、中止後もしばらく持続するので、薬剤変更や切り替え後の思わぬ低血糖にも注意が必要です。

 平成23年に本剤の合剤が相次いで発売されました。メタクト®配合錠は本剤とメトホルミン、ソニアス®配合錠はグリメピリドと、またリオベル®配合錠はDPP-4阻害薬のアログリプチンとの合剤です。各薬剤の特性に注意を払いますが、これらの合剤は第一選択薬としては使用できません。

膀胱癌との関係

 糖尿病患者では癌発症率が高いことが知られています。本剤の発癌リスクを検討するために、CNAMTS研究がフランスで実施されました(文献2)。仏国行政当局による保健データベース約150万人の糖尿病患者での後ろ向きコホート研究で、膀胱癌の発症率がわずかながら有意に高く、本剤は回収措置となりました。

 一方、米国の前向きコホートのKPNC試験は、投与期間中央値2年では膀胱癌リスクの有意な上昇はないが、総投与量と期間が増加するとわずかにリスクが高まる可能性という結果でした(文献3)。非服用者は6.9人/1万人/年、服用者は8.2人/1万人/年の膀胱癌発症率とされています。

 欧州医薬品局(EMA)もこの点を検討し、欧州の統一方針として回収は不要で、注意喚起でよいとし、米国食品医薬品局(FDA)と概ね一致したものの、 12月時点で仏・独での処方制限は続いています。日本では「膀胱癌治療中の投与は避ける」と記載されました。なお、当院では服薬者全員に説明し、腹部エコー検査を受けていない方には検査を勧めるなどして安全を確認しました。そして、本剤の有益性は高いと判断した場合は服薬を継続しています。

参考文献

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※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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