唾液による迅速な新型コロナウイルスのPCR検査を実現 1時間で結果が分かり、偽陰性の発生も低減
2020.08.07
富士フイルム和光純薬はを7月31日に、唾液を検体とし、新型コロナウイルスの迅速検査を実現するPCR検査用前処理試薬「SARS-CoV-2溶解バッファー」と、新型コロナウイルス遺伝子検出キット「SARS-CoV-2 RT-qPCR Detection Kit Ver2」を日本で発売した。
唾液検体で検査できる 前処理工程を10分に大幅短縮
これまで、新型コロナウイルスのPCR検査の検体には主に鼻咽頭ぬぐい液が使用されていた。しかし、鼻咽頭ぬぐい液の採取は被検者に身体的負担がかかるうえ、採取時のくしゃみや咳によりウイルスが飛散するおそれがあり、被験者の身体的負担と、採取者の感染リスクを低減する方法として、唾液を検体とする検査方法が求められている。そこで、国立感染研究所より6月2日に、PCR検査での唾液検体の使用が認められた。 しかし、唾液や鼻咽頭ぬぐい液などの検体には夾雑物が含まれており、その中からウイルスを検出するためには、検体を希釈して夾雑物の濃度を下げる必要がある。しかし、検体を希釈すると、検出対象のウイルス由来のRNAの濃度も低下するため、PCR検査での検出感度を保つためには、RNAの抽出・精製という煩雑な工程が必要だった。 そこで同社は、ごく少量の試薬を唾液や鼻咽頭ぬぐい液などの検体に添加するだけで、PCR検査の検体として使用できるようにする、新型コロナウイルス用前処理試薬「SARS-CoV-2溶解バッファー」を新たに開発。 この前処理試薬を用いることで、従来必要だった煩雑なRNA抽出・精製工程のうち、抽出工程を簡略化し、かつ精製工程を省略することができ、約1時間を要していた前処理工程を約10分に大幅に短縮した。ウイルスとヒト遺伝子を同時に検出することで「偽陰性」の発生を低減
同時に発売した新型コロナウイルス遺伝子検出キット「SARS-CoV-2 RT-qPCR Detection Kit Ver2」は、PCR反応時にターゲットとなる短鎖DNAであるプライマーと、ターゲットDNAにおける特有の塩基配列に特異的に結合するDNAであるプローブをセットにした遺伝子検出キット。 「SARS-CoV-2溶解バッファー」と「SARS-CoV-2 RT-qPCR Detection Kit ver2」を組み合わせて使用すると、検体採取後約1時間で検査結果を得られる。 同キットは、ウイルスの遺伝子と同時に、検体に必ず含まれるはずのヒト遺伝子を検出することで、遺伝子の分解が起こっていないかどうかを確認することができる。 PCR検査には、検体の保管状況の不備などでウイルスの遺伝子が分解され、感染しているのに陰性と判定してしまう「偽陰性」が発生する可能性があるという課題があった。 同キットは、ヒト遺伝子の検出が可能であるため、感染有無に関わらず検出されるはずのヒト遺伝子が検出されない場合には、検査が成立していないことを確認できる。これにより、保管状況の不備などによって検体中の遺伝子が分解されていた場合での「偽陰性」を防止できる。 富士フイルム和光純薬関連情報
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[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]