【新型コロナ】今冬にはインフルエンザと新型コロナが同時に流⾏ 外来診療では「両方の検査を」と日本感染症学会が提言
2020.08.05
今冬にはインフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が同時に流⾏する可能性がある。
同時流行に備え、日本感染症学会は、診療所や病院の外来診療向けに診断・治療についての提言を発表した。
同時流行に備え、日本感染症学会は、診療所や病院の外来診療向けに診断・治療についての提言を発表した。
臨床症状だけで両疾患を鑑別診断するのは困難
コロナウイルスの伝播モデルから推測したこれまでの研究で、次の冬季にCOVID-19の⼤きな流⾏が起こることが予測されている。 インフルエンザとCOVID-19が同時に流⾏することが懸念されており、実際にはインフルエンザはCOVID-19よりも多くの患者数が予想されている。 また、現在のところ、COVID-19を⼀般外来で抗ウイルス薬などで治療することは想定されていないので、今冬の発熱患者診療の治療の主体はインフルエンザとなる。 そこで、⽇本感染症学会は、新たにインフルエンザ−COVID-19アドホック委員会を組織し、今冬に向けて提⾔を発表した。 同学会は「臨床症状だけで両疾患を鑑別診断するのは困難」と指摘。外来診療の場で、確定患者と明らかな接触があった場合や、特徴的な症状(インフルエンザにおける突然の⾼熱発症、COVID-19における味覚障害や嗅覚障害など)がない場合、臨床症状のみで両者を鑑別することは難しいとしている。 「COVID-19流行地域では、冬季に発熱患者や呼吸器症状を呈する患者を診る場合は、インフルエンザとCOVID-19の両⽅の可能性を考える必要がある」と指摘している。COVID-19とインフルエンザの両⽅の検査を
「臨床診断のみでインフルエンザとして治療を⾏う場合、COVID-19を⾒逃してしまうおそれがある」として、「原則として、COVID-19の流⾏がみられる場合には、インフルエンザが強く疑われる場合を除いて、可及的に両⽅の検査を⾏う」ことを推奨している。 新型コロナとインフルエンザを合併する患者も報告されており、さらに鑑別診断を難しくしている状況もある。 同学会は、検体をなるべく同時に採取することを推奨し、各流⾏レベルでのインフルエンザ様症状を呈する患者に対するSARS-CoV-2検査の適応指針を⽰している。 一方で、SARS-CoV-2の検査の供給は限られているので、「流⾏状況により、先にインフルエンザの検査を⾏い、陽性であればインフルエンザの治療を⾏って経過を⾒ることも考えられる」としている。流行レベルを4つのカテゴリーに分け検査の適応指針を示す
同学会は、流行レベルを4つのカテゴリーを示し、それぞれのSARS-CoV-2検査の適応指針の⽬安も提示した。 たとえば、医療機関がカバーする医療圏で「14⽇以内のCOVID-19発⽣例なし」、隣接する医療圏で「14 ⽇以内のCOVID-19発⽣例なし」などといった場合には、原則としてSARS-CoV-2検査は不要としている。 しかし、医療圏で、「14日以内に感染経路が不明の新型コロナ発生例がある(クラスター事例を含む)」「14⽇以内に感染経路が不明のクラスタ−が複数発⽣している」などの場合は、「発熱がある場合には全例⾏うことが望ましい」としている。出典:「今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて」(⽇本感染症学会、2020年)
出典:「今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて」(⽇本感染症学会、2020年)
インフルエンザワクチン接種を強く推奨
治療については、インフルエンザの早期診断・治療を推奨。医療関係者、⾼齢者、ハイリスク群の患者も含め、インフルエンザワクチン接種を強く推奨するとともに、各流⾏レベルにおけるSARS-CoV-2検査についても、「医療関係者、⾼齢者、ハイリスク者では、検査を積極的に検討」するべきだとしている。 小児についてもワクチン接種を強く推奨している。「⼩児では発熱性疾患が多く、その他の重症疾患を⾒逃す可能性がある」と注意喚起している。PCR検査、LAMP検査、抗原定量検査では唾液検体も使用できる
医療関係者、⾼齢者、ハイリスク群の患者も含め、インフルエンザワクチン接種を強く推奨するとともに、各流⾏レベルにおけるSARS-CoV-2検査についても、「医療関係者、⾼齢者、ハイリスク者では、検査を積極的に検討」するべきだとしている。 インフルエンザについては、以前より抗原迅速診断キットが普及しているが、SARS-CoV-2についても抗原検出用キットが開発されている。この抗原迅速診断キットは、PCR法に比して感度が低いとされているが、発症第1週に検査を行えば、感度・特異度とも高かったという報告もある。 ただ、SARS-CoV-2抗原迅速診断キットは、PCR法に比べて検出に一定以上のウイルス量が必要であり、無症状者では検査前確率が低いと想定されることより、無症状者に対してやスクリーニング目的での使用は推奨されていない。 陽性の場合は、確定診断とすることができる。陰性の場合、発症後2~9日目以内であれば、追加のPCR検査を必須とはせず、発症日または10日目以降であれば、確定診断のために医師の判断でPCR検査などを行う必要があるとなっているが、陰性であってもSARS-CoV-2感染を否定するものではなく、臨床症状も含め総合的に判断する必要があるとしている。 COVID-19発症から9日目程度は、唾液中のウイルス検出率も比較的高いことが報告されており、唾液を用いた診断の有用性が示唆されている。6月19日に、SARS-CoV-2の抗原を測定する全自動検査機器用試薬が承認され、従来の鼻咽頭ぬぐい液に加え、唾液も検体として利用することが可能になった。唾液を検体とする抗原検査の対象者は、当初、発熱などの症状発症から9日以内の患者とされていたが、無症状者にも適応が拡がった。 唾液検体が使用できるのは、PCR検査、LAMP検査、抗原定量検査であり、抗原迅速診断キットには使用できない。唾液検体の採取時は、滅菌容器に1〜2mL程度の唾液を5〜10分かけて患者に自己採取させることになっている。クリニックで唾液を採取される場合には、測定機器のある施設や検査センターへ搬送することが必要になる。 採取・搬送の方法や注意点については、国立感染症研究所の「検体採取・輸送マニュアル」に掲載されている。出典:「今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて」(⽇本感染症学会、2020年)
⿐前庭ぬぐい液が検査に有⽤という報告も
⿐咽頭ぬぐい液を採取する場合は、⾶沫発⽣の可能性があるとして、代替法として⿐かみ液の使⽤を示唆している。「⿐かみ液は、すでにインフルエンザ診断に使⽤されており、対応できる抗原迅速診断キットも複数ある」としている。 なお、「SARS-CoV-2検出キットについて、⿐かみ液のエビデンスはまだなく、現時点では推奨しない」として、「⿐前庭ぬぐい液が、インフルエンザやSARS-CoV-2の検査に有⽤であることが報告されており、今後使⽤できる可能性がある。医療従事者への曝露を軽減することができると考えられる」と付け加えている。 ⼀般社団法⼈ ⽇本感染症学会関連情報
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[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]