糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第41回 近年発売された新しいインスリン製剤(1)

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 67(2021年1月1日号)

■はじめに

 近年、3種類のインスリン製剤と1種類のバイオシミラー超速効型インスリンが発売されました。現在多くのインスリン製剤があり、さらに種類が増えた状況です。まだ糖尿病治療薬の連載で取り上げていないインスリン製剤の特徴を見ていきましょう。

■ライゾデグⓇ配合注

 「ライゾデグⓇ配合注」は持効型と超速効型のインスリンを配合し、一度の注射で投与できる溶解インスリンです。この製品はインスリンアスパルト(ノボラピッドⓇ注)が30%、インスリンデグルデク(トレシーバⓇ注)が70%配合されており、互いのインスリンの作用には影響しないとされています。一般には1日1回投与の場合にはメインミール、特に炭水化物を多く摂取する前に注射することになっています。
 経口血糖降下薬で上手くコントロールできない症例にインスリンを導入する場合、例えば夕食前1回注射で、夕食後の高血糖を抑制し基礎インスリンを補充することになります。私は、本剤が1食だけBolus補充する中途半端な製剤と考え、当初使用しませんでした。しかしノボラピッド30mix注や50mix注、またはヒューマログmix50注等から変更してみると案外血糖が安定して、HbA1cの改善を認め、捨てた物では無いと考えるようになりました。具体的に夕食は食品交換表の表1の炭水化物をほとんど摂らない方には朝、昼は麺類が多いが注射できる方は昼食時など、注射時間を個々に変えています。
 しかし朝のライゾデグで上手く行かない場合、一度夕食時にBolusインスリンを併用したくなることがあります。この場合にはライゾデグ朝夕2回にするのが一般的でしょう。すると30mix注等と似てきますが、本剤は混和が不要なため、不均一による有効性のバラツキが起きず、さらに持効型インスリンにより血糖値が安定します。
 ライゾデグの治験としては、2型糖尿病患者での「Treat to Target試験」で、1日2回朝食直前および夕食直前投与において、ノボラピッド30mix注に対してライゾデグはHbA1c改善効果の非劣性および、空腹時血糖値の有意な低下(文献1)、夜間を含む低血糖の発現頻度を悪化させないことが日本および海外における検討で確かめられています(文献2)。

■新規超速効型インスリン製剤「フィアスプⓇ注」

 これまで超速効型インスリンとしてノボラピッド、インスリンリスプロ(ヒューマログⓇ注)、インスリングルリジン(アピドラⓇ注)がありますが、臨床上、食後高血糖を抑制できない症例が多く、実測でもCGM, FGMでのモニターが容易になり、血糖値スパイクが抑えられていないことが露わになっています。これを患者さんの食べ過ぎと決めつけるのは良くないと実感します。
 2020年2月に発売された「フィアスプⓇ注」はこれまであったノボラピッドにニコチン酸アミドを添加したことで、インスリン吸収を速くした製剤です。第3相臨床試験は、トレシーバ併用下での1~18歳未満の1型糖尿病の小児777例(日本人66例)を対象とした26週の試験 「Onset7」 です。フィアスプを1日3回食直前(0分~2分前)または食後(食事開始後20分)に皮下注射し、食前または就寝前のSMBGデータまたはカーボカウントにて調節しています(文献3)。
 また「Onset8」は成人1型糖尿病患者1,025例(日本人245例)を対象とした試験です。フィアスプまたはノボラピッドを用いてOnset7と同様に比較検討されました。いずれもノボラピッドに対して非劣性が証明されていますが、注射部位の皮膚反応、リポジストロフィーが両群で報告されています。低血糖に関しては有意な増加は無かったと言えるデータでした(文献4)。
 また「Onset5」は外国人成人1型糖尿病患者を対象としたCSII使用下における試験です。安全性有効性が証明されましたが、注射局所の皮膚反応がノボラピッドよりやや多い結果です(文献5)。

■注意点とまとめ

 今回は2製剤を記載しましたが、まずライゾデグは①1回の注射でBasalとBolusインスリンを補充 ②攪拌不要 ③低血糖が従来の製品より少なく、使い易い製剤と言えます。しかし、現場の食事指導では糖質を3回均等にと指導する例が多く、症例により投与回数を変更、経口血糖降下薬との併用などプラスαの治療が必要な症例も散見される製剤です。  フィアスプですが、従来の超速効型の遅い立ち上がりをカバーすることは重要ですが、その注意点、および他の2製剤は次回に述べさせていただきます。

参考文献

  • 1) Kaneko S et al. Diabetes Res Clin Pract 107(1):139-147,2015.
  • 2) Fulcher GR et al. Diabetes Care37(8) :2084-2090,2014.
  • 3) Bode BW et al. Diabetes Care 42(7):1255-1262,2019.
  • 4) Buse JB et al. Diabetes Obes Metab 20(12):2885-2893,2018.
  • 5) Klonoff DC et al. Diabetes Obes Metab 21:961-967,2019.

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント 目次

2021年02月25日
糖尿病専門医レベルの方針決定ができる人工知能(AI)システムを開発 糖尿病データマネジメント研究会のビッグデータを活用 AIと非専門医を比較検証
2021年02月25日
膵臓部分切除術後の糖尿病発症に関与する因子を解明 腸内環境と膵臓内分泌細胞の可塑性が重要 九州大学、国立国際医療研究センターなど
2021年02月25日
眼内注射剤「ファリシマブ」が視力障害の原因となる糖尿病黄斑浮腫(DME)と加齢黄斑変性(nAMD)で治療間隔を最大4ヵ月まで延長
2021年02月25日
ブドウ糖代謝を調節する酵素「グルコキナーゼ」の抑制が、β細胞の量の低下を防ぐ 糖尿病の新規治療法開発へ 北海道大学
2021年02月25日
【新型コロナ】SARS-CoV-2に対する中和抗体の取得に成功 国産抗体製剤の早期実用化を目指す 慶應義塾大学など
2021年02月25日
【新型コロナ】コロナ禍で子供の15~30%に中等度以上のうつ症状が 保護者のうつも深刻 成育医療研究センターが調査
2021年02月25日
【新型コロナ】COVID-19増加にともなう脳卒中の診療現場への影響 迅速な診療プロセスよりも医療従事者への感染防御を優先
2021年02月25日
Finerenoneが2型糖尿病患者の腎・心血管イベントを抑制
2021年02月24日
【新型コロナ】コロナ禍で急性心筋梗塞の治療開始が遅れる 重症合併症の増加につながった可能性
2021年02月18日
褐色脂肪細胞の燃焼を促す新たなメカニズムを解明 体の熱産生にマイクロRNA-33が関与 糖尿病やメタボのターゲットに
糖尿病プラクティス